エンジニアの求人倍率の高さに負けない戦略的採用とは

IT企業にエンジニアがいないのは、運送会社にドライバーがいないようなもので、文字通り仕事になりません。それが現実になりつつあるのが2020年代です。

エンジニアを採れる会社と採れない会社に二極化するだろうという予測もあります。

いま重要なのは、「採れない、採れない」と嘆くことではなく、エンジニアを採用できる会社と採用できない会社はどこが違うのか、採用できる会社になるには何が必要なのかを真剣に考えることです。

この記事では、突出した高倍率が続くエンジニア採用市場の勝ち組になるための「戦略的採用」について解説します。ぜひ参考にしてください。

ITエンジニアの求人倍率の現状

転職サイトdoda(デューダ)の集計によると、過去6年間の「IТエンジニア/通信」の有効求人倍率(各月平均)は、下記のようになっています。

2014年度 5.29倍
2015年度 6.35倍
2016年度 6.82倍
2017年度 6.73倍
2018年度 7.30倍
2019年度 7.53倍

全業種の平均は各年度とも2.5倍前後で推移しているので、IТエンジニアの採用は他業種の2倍以上の売り手市場で、その傾向は年々強まっています。
(データ引用元:https://doda.jp/guide/kyujin_bairitsu/data/)

2020年度5月は新型コロナウィルスの影響で5.84倍と倍率が低下しましたが、影響は一時的なものだと考えるべきでしょう。

むしろ、コロナ禍でリモートワークやeラーニングの需要が増えるなど、IТ化の波はますます高まっているので、今後はさらに倍率が上がる可能性が大です。

このように、1人のエンジニアに6~7社から声がかかる状況で、成果を出せる採用活動とはどのようなものでしょうか?

「人事部の採用活動」から「企業の採用戦略」へ

「給料を上げればエンジニアは来てくれるだろうが、そうもいかない」と会社の懐ぐあいを嘆いている採用担当者がいるとすれば、工夫が足りないと言わなけれてもしかたありません。

エンジニアは魚市場に横たわるマグロではないので、セリ値を上げれば落札できるというものではありません。

知名度やお金で大企業に負ける会社は、マグロのセリでは勝ち目がないかもしれませんが、エンジニアという人間相手ならラブコールが通じる可能性があります。

しかし、その可能性を探るには、「人事部の採用活動」では限界があります。

今どき、自社製品を売るときに、朝礼で営業マンに「売ってこい!」とハッパをかけるのだけの会社はありません。どんな会社でもそれなりにマーケティングをして「戦略的な活動」をしています。

多くの競争他社から自社製品を選んでもらうには全社をあげてのマーケティング戦略が必須だとしたら、引く手あまたのエンジニアの採用でも全社的な戦略が必要です。

事実、最近は採用について語るときに、「ペルソナの設定」「ブランディング」など、マーケティングの用語がひんぱんに使われるようになりました。採用にマーケティングの発想が有効なことが認知されてきたのです。

マーケティング発想の採用戦略とは

エンジニアの求人倍率がさらに高くなることが予想される2020年代は、人事部だからマーケティングのことは分らないでは済まなくなります。

 

全体戦略(企業戦略)に裏打ちされた採用戦略を策定する

マーケティング戦略が単に営業部門の戦略ではないように、採用戦略も企業の全体戦略に裏打ちされたものでなくてはなりません。

優秀なエンジニアの獲得が企業の死活を左右するなら、製品の販売だけでなく人材の獲得においても、競争企業に勝つための「戦略的行動」が必須です。

経営者が「採用は人事部の仕事」と思っているようでは、他社に人材をさらわれてしまいます。人事部も「自分たちで何とか頑張ろう」とするだけでは、戦略的行動はとれません。

全体戦略という屋台骨のない採用戦術は、強風の吹き荒れるエンジニア市場では、100均のビニール傘のようなもので頼りになりません。

 

企業イメージを創る―自社の強みと弱みを洗い出す

マーケティング戦略の第一歩は、競争他社と比較した自社の強みと弱みを洗い出すことです。採用戦略においても、人材市場での自社の強みと弱みを明確に把握しておくことが重要です。

人材を取りあう他社から自社を際立たせるためには、エンジニアたちにとって魅力となる「企業の強み」が何かを鮮明にしなければならないからです。

最近よく言われる採用ブランディングは、「採用における企業イメージづくり」と言い換えることができます。

エンジニア仲間の中でで「あそこの会社の採用はちょっと面白い」と噂になるようなブランディングができないか、真剣に検討する必要があります。

 

キャリアパスを示して、他社と差別化する

エンジニアは買われてさばかれるマグロでないのはもちろん、据え付けられて耐用年数がくるまで稼働させられるマシーンでもありません。

将来の希望や夢があり、日々成長する人間です。

現在の待遇で大きく差別化できない会社でも、会社に将来性があり、夢を共有できるならエンジニアは魅力を感じてくれるはずです。

会社の夢が結局社長だけの夢(イグジットして〇億円で会社を売る)にすぎないのなら、エンジニアはそれを見破り、近寄ってくれません。

 

会社を見える化する

「あなたが欲しい」と言う前に、「私たちはこんな会社です」ということを腹を割って打ち明けるべきです。

企業理念、企業文化(社風)をシースルーに(見える化)して、エンジニアに「そういう会社なら頑張ってみたい」という気にさせることが、内定辞退を防ぎます。

たとえ求められる人材要件が自分にピッタリであっても、応募者は「会社の雰囲気」に不安を持っています。

中身を見せずに美味しい言葉を並べられるより、ぶっちゃけたところを見せてもらう方が信頼する気になるです。

採用戦略における自社エンジニアの役割

エンジニアのことはエンジニアに聞くのがいちばんです。エンジニアに取材しないで、エンジニアに参加してもらわないで、有効な採用戦略を立てることはできません。

 

自社エンジニアとタッグを組む

最近注目されているリファラル採用は、とくにエンジニアの採用で有効です。

エンジニアにリクルーターになってもらい、その人脈から候補者を発掘するということだけではなく、採用ブランディングの方向性をエンジニアたちのブレストや本音の会話から見出すことが求められています。

ブランディングは現在の会社が達成していることの見える化だけでなく、何を目指しているかの遂行課題の見える化でもあります。

「こんな職場にしてほしい」「していきたい」というエンジニアの声から、採用ブランディングの指針が見えてくるはずです。

 

SNSやサイトの採用コンテンツにエンジニアの本音を載せる

採用戦略の重要な武器になるのが、自社の採用サイトのコンテンツの充実と、TwitterなどのSNSの活用です。

エンジニアたちの間でパズルようなコンテンツがあれば、転職エージェントに払う何百万円分の効果があります。

「実録プロジェクト炎上」「新米プロジェクトマネジャーの苛酷な日常」というのは露悪趣味かもしれませんが、しんどい中に夢や希望や楽しさもあるドキュメントなら、リアルだと話題になるかもしれません。

戦略の遂行はPlan・Do・Check・Actionのくり返しです。アイディアを出して、やってみることが肝心です。そのアイディアの源泉になるのがエンジニアの本音です。

 

面接にエンジニアを必ず入れる

面接で人事部が従来の明朗、活発、清潔感、コミュニケーション能力などの基準で候補者を判定しているのでは、優秀なエンジニアを採りそこなうかもしれません。

会社側で落とさなくても、中身のある話が出ない面接で内定を出されても、候補者はマッチングに不安を感じて辞退する可能性があります。

入社したらどんな仕事ができるかを知りたがっているエンジニアに、具体的な話ができるのはエンジニアだけです。職場の雰囲気を伝えられるものエンジニアだけです。

面接には一次面接から必ずエンジニアに同席してもらいましょう。

まとめ

高倍率のエンジニア求人で勝ち組になるためには、販売におけるマーケティング戦略に引けを取らないくらいの、ち密な「戦略的採用活動」が必要です。

この活動が目指すべきゴールは、エンジニアたちのコミュニティで「この会社は面白い」と噂になるようなブランディングの成就です。

一朝一夕にできることではありませんが、ゴールを目指してPDCAを回し、必要な社内改革にも取り組んでいくことが求められます。

その際に肝心なのは社内のエンジニアの力を借りることです。エンジニア全員が人事部のつもりで知恵と力を出すことで、他社と差別化できる採用ブランディングが可能になります。