「リテンションて何?」
「マーケティングと人事でリテンションの意味は違うの?」
という基本的な疑問から、
「リテンションマーケティングで重要なポイントは?」
「離職率を下げる為のリテンションマネジメントを知りたい!」
という具体的なお悩みまで一挙解決します。
ここでは、異なる意味で同じ言葉を使うリテンションの意味と、リテンションマネジメントとリテンションマーケティングについて重要なポイントと具体的な施策、中間管理職・管理者の立場にある方や経営者の方なら押さえておくべき情報をまとめました。
従業員エンゲージメントを高く保ち離職率を下げるために重要なリテンションマネジメント。
既存顧客との安定した関係を繋ぎ企業として成長していくためのリテンションマーケティング。
重要なポイントを抑えつつ、どうして重要なのか裏付けのデータも掲載しています。
リテンションとは:英語訳と意味・2種類のリテンションの使い方
リテンションとは英語で『保持・保留・維持・記憶・記憶力』を意味する『retention』からきたもので、人事マネジメント用語としてもマーケティング用語としても2種類の異なる意味合いで使われています。
人事マネジメント用語として用いられる場合は「優秀な社員を企業内に留めるための施策」を、
マーケティング用語としては「既存顧客の維持」を意味する言葉です。
マーケティング用語の「リテンション」について詳しく知りたい方はマーケティング用語のリテンションとはからどうぞ。
人事マネジメント用語の「リテンション」について詳しく知りたい方は人事用語のリテンションとはから目を通してください。
マーケティング用語のリテンションの意味(リテンションマーケティング)
- 新規顧客の開拓にはコストも時間もかかる
- 一度離れた顧客と再び関係を結ぶのは容易ではないが新規顧客獲得より低コストで実現可能
- 既存顧客を維持できるかが企業の存続に欠かせない
リテンションマーケティングを考えるうえで重要な目安となるのがリテンション率です。
続けてリテンション率についても詳しく解説しますのでチェックしてください。
リテンションとは:意味と経営者なら押さえておきたいマーケティングの効果の測り方
あなたの会社で行った新規顧客獲得イベントなどがどのくらいリテンションできているのか、を表すために「リテンション率」というものが目安に使われています。
Mixpanel Benchmark Report(2017)」の業界別リテンション率のグラフ)ですがこれによると、2か月後にリテンション率25%をキープできれば平均を上回っている、という目安が提示されています。
上のグラフからもわかるように、リテンション率はスタート1週間で半分ほどまで落ち込みます。その後も緩やかに下降し続けていますね。
新規顧客を獲得する際には、色々とお得に感じられるような企画を打ち出しますよね。
当然多くの顧客を獲得することができますが、そこから『継続して顧客となってくれるロイヤルユーザー』をどれだけ掴んでおくことができるのか、これが企業戦略にとって最も難しい課題でもあり、重要な課題となっているわけです。
2か月後にリテンション率25%をキープできていれば平均的、30%以上をキープできているなら優秀、と考えられています。
リテンションマーケティングの意味・1:5の法則と効果ある施策・アイディア・具体例
新規顧客の獲得は、既存顧客との安定した関係を継続するのと比較して5倍のコストがかかるといわれています。
これを「1:5の法則」と呼びます。
新規顧客の獲得も重要ではありますが、大きなコストをかけるよりリテンションマーケティングが重要、というのはこうしたコスト面のリスクがあるから。
具体的な施策としてはこのような方法があります。
- キャンペーンを企画し既存顧客を招待する
- 定期的にDMやメルマガを配信する
- 継続利用してもらうことでメリットとなるシステムを構築する
- カスタマーサクセスを重視したサービスを提供する(アフターサポート含む)
継続して関係を続けてもらう事で、コストは抑えてロイヤルカスタマーとなっていただくことができるメリットがあるのがリテンションマーケティングなのです。
リテンションマーケティングは新規顧客獲得にもメリットあり
マーケティングでのリテンションには「パレートの法則」とも呼ばれる「8:2の法則」も重要です。
これは『売上の80%は20%のロイヤルユーザーによってもたらされている』というもの。
その目安として用いられているのが「顧客生涯価値(LTV)」という数値。
この式からもわかるように『1ユーザーがどれだけ継続して顧客となってくれているのか』はとても重要なのです。
また、リテンションマーケティングがもたらす企業側へのメリットはコストだけではありません。
継続して関係を保っていただくためには、「サービスや商品に満足してもらう」ということが必須。
長い付き合いがあるからこそ、的確なフィードバックや要望を顧客からいただくことができ、結果的に「より良いサービス・商品」の提供へつながるのです。
必然的に新規顧客の獲得にもつながる、ということになりますね。
リテンションマーケティングの目的:課題はカスタマーサクセス
カスタマーサポートと似ていますが、カスタマーサクセスが重要というのが今の時代の見方です。
カスタマーサポートは「何か問題が起こったときに提供する」ものでしたね。
対してカスタマーサクセスとは「顧客の問題を事前に予測して成功に導く為の提案をする」というもの。
カスタマーサクセスで重要な「予測」という部分は簡単にできるものではありません。
ですが顧客のこれから先に起こる困難な事態を、自社の商品・サービスでどうやって解決するかを提案することはリテンションマーケティングの大きなメリットにもなる部分。
CRM(顧客関係管理ツール)を利用する企業が増えているのもカスタマーサクセス、ひいてはリテンションマーケティングに通じているのです。
リテンションマーケティングを的確・迅速に!CRMでPDCAサイクルもスムーズ
CRM(顧客関係管理ツール)を使って効率よく的確・迅速に『顧客データを管理・分析』する企業も増えています。
これには副産物としてPDCAサイクルもスムーズになるという利点もあります。
CRM/SFAを1つのサービスで提供しているセールスフォースなども人気があります。
セールスフォースはCRMに独自AIを搭載して完璧なCRMを実現するだけでなく、見込み顧客への優先順位まで割り振りすることもできるもの。
営業担当者も大幅に労力と時間を削減し、働きやすい環境を整えられる、ということになります。
まさにリテンションマーケティングに大きく貢献してくれるサービスといえるでしょう。
人事用語のリテンションの意味:人事評価・採用活動・離職阻止に大きな効果
人事的な意味で用いられるリテンションとは、離職率を下げる為の様々な施策といった意味合いで使われる言葉です。
リテンション戦略・リテンションマネジメントとも言われていますが、企業の財産でもある優秀な人材を社外に流出させないためのもの。
これまでは「成果主義」で「成果を評価して収入をあげる」といったような施策をとる企業が多くありました。
ですがこれは結局離職率の減少をとどめることはできなかったのです。
この背景とあわせて、「生きている意味」「自分らしくあるために」ということが重視される今のリテンションマネジメントでは、成果報酬ではなく「やりがい」や「安心感」「働きやすい環境」などが重要と考えられるようになっています。
リテンションマネジメントの意味①:ワークライフバランス・生きる目的が課題
上でも軽く触れましたが、今は自分らしく、生きている意味を感じられる生活、楽しみながら生活するということに価値を見出す(ワークライフバランス)動きが活発な時代。
昔のように「とにかくがむしゃらに働くことに意義がある」という見方はされなくなってきました。
このワークライフバランスをとる働き方を実現する、ということがリテンションマネジメントに重要とはいっても難しい部分でもあります。
対象とする社員の年齢層によっても、仕事に求めるものが違うというところも難しさをUPさせる要因です。
特に転職にそれほど壁を感じていない20代・30代・40代に対するリテンションマネジメントは難しいもの。
そこで重要なポイントとして、「従業員エンゲージメント」や「職場の人間関係」・「パラレルキャリアへの関心の高まり」についても抑えておきましょう。
リテンションマネジメントの意味②:人間関係を正常化するアイディア・施策・事例
20代~40代、この先の企業を支えてくれるであろう世代に向けたリテンションマネジメントを考えてみましょう。
この世代ではやりがい、安心感はもとより「職場の人間関係」も重視されているので、このような施策が有効です。
- 飲み会やセミナー参加などコミュニケーションが活性化するような働きかけ
- 残業を減らす、休日出勤の廃止、手当や給与のUPなどの待遇改善
- 職場環境改善(例:居心地、フリードリンク設置、オフィスエリアを使いやすく清潔感ある空間になど)
コミュニケーションが活発になる ⇒ 生産性もUP ⇒ サービス・商品のクオリティもUPという図式が成立します。
また、このような例もあります。 「平成25年厚生労働白書 第4節 仕事に関する意識」より
『新入社員の働く目的の推移をみると、2000(平成 12)年以降、「楽しい生活をしたい」とする者の割合が大きく上昇して 2012(平成 24)年度には最も高い割合となり、逆に「経済的に豊かな生活を送りたい」とする者の割合は低下傾向にあり、働くことに関する最近の若者の意識は、経済的な側面よりも、自分自身が「楽しく」生活できるかどうかという点を重視していることが分かる。
また、「自分の能力をためす生き方をしたい」とする者の割合は、調査を開始した1970年代には最も高い割合を占めていたが、長期的に低下傾向を示す一方、「社会のために役立ちたい」とする若者の割合は、2000年以降上昇傾向にあり、仕事を通じ社会に貢献していきたいと考える若者の増加として注目される。』
これを見ると高い報酬だけが重要なのではなく、このようなことが重要視されていることがわかります。
- 自分の生活が充実していると感じられるかどうか
- 楽しめているか
リテンション戦略で離職リスクを回避!従業員エンゲージメントUPを目的としよう
CEB社 Corporate Executive Board)「Driving Performance and Retention Through Employee Engagement」から数値を引用して作成した離職率のグラフです。
このグラフでは従業員エンゲージメントが高い場合、低い場合の離職率を比較しています。
従業員エンゲージメントとは、自社の理念・ビジョンに共感したり、企業としての成長に前向きにかかわっていこうという姿勢のこと。
従業員エンゲージメントが低い場合の離職率は約4倍となっていて、優秀な社員がいても離職してしまう要因としてエンゲージメントが重要であることを表しています。
リテンションマネジメントを行う上で、企業側が従業員エンゲージメントを高める企業努力をするべき、という裏付けになるデータですね。
リテンションマネジメントはパラレルキャリアへの理解ある契約も意味あり
2017年にリビングくらしHOW研究所がおこなった「企業で働いている40代までの女性297人」を対象とした調査では実に70%が「パラレルキャリアに興味あり」という回答でした。
自分らしく生きるために副業を望む声も大きくなっていたことを受けて、2018年には厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成したことも記憶に新しいでしょう。
これによると、「本業とは別の社会活動を並行して行い、それぞれで得た経験や学びを、相互に活かして自己成長する」=パラレルキャリアを推奨しています。
リテンションマネジメントを推し進めるうえでは世間のこうした動きを取り入れ、時代に即したものであることも重要です。
2種類のリテンションの深い意味は「相手の事を敬い大切に思う心」が重要ということ
ここまで人事的なリテンション、そしてマーケティング的リテンションについて解説してきました。
どちらも違うようでいて、同じ要素を含んでいたのに気づかれた方はいらっしゃるでしょうか。
どちらも「相手のことを尊重し大切にすること」が重要ということですよね。
その結果、相手に喜んでもらい自分が成長する、人間として生きていくうえでも重要といわれる基本的な要素が含まれているようにも感じられませんか?
リテンションマーケティング ⇒ 「カスタマーサクセス」
問題が起きる前に求められるものを予測することの大切さこそ、リテンションにおける重要なポイントと覚えておくとよいでしょう。
紹介した具体的な施策も検討しながら、企業としての魅力をさらに磨き上げましょう!