ある日突然可愛がっていた後輩や大事な部下に
『会社辞めたいんです』
と言われたらきっと大きな驚きとショックを受けますよね。
『ここまで思い詰めるほど、自分のマネジメント能力が足りていなかったのだろうか…』
『辞めたいと言い出す前兆をどうして見逃してしまったんだろう…』
と自分を責めてしまう方もいるでしょう。
でも大丈夫です。あなたの責任ではありません。
結論から申し上げると 『辞めたい社員は引き止めなくてよい』 のです。
離職率が高くなることへの恐れもあるかもしれません。退職連鎖も気になるかもしれませんね。
有能な人材を失ったら仕事がうまくまわらなくなるという懸念もあるでしょう。
『それなのにどうして”引き止めなくてよい”なんていうんだ!』
ここではその理由をお話させていただきます。
あわせて…
- 退職希望者との接し方&言ってはいけないNGワードとその理由
- もしも自分が退職希望理由だったらどうしたらよいのか
- どうしても引き止めたい社員の時どうしたらよいのか
- 引き止めたことでできる人材へ成長させた事例
- 引き止めないことのメリット
- 引き止めて組織に悪影響になる社員タイプ
企業が成長するために社員は欠かせません。
ですが社員とのエンゲージメントが成立していないのなら、遅かれ早かれ、お互いに不幸な結末になってしまうでしょう。
お互いに不幸になるのではなく、お互いが幸せになるために。
ここで問題を解決して、スッキリと次のステップへ歩みを進めていきましょう。
辞めたい社員は引き止めなくてよい理由はメリットがないから
まずは「辞めたい社員は引き留めなくてよい」としたその理由からお伝えさせていただきます。
どうしてなのか、その理由も詳細に簡潔にまとめてみます。
辞めたい社員がいなくても間違いなく仕事は回るから
辞めたい社員が辞めてしまったら。
仕事ができる人材ほど、高みを目指してステップアップのために転職することが増えてきています。
対して企業というのは成長していかなくてはなりませんが、組織ですから必ずしも社員個人の希望を常に叶えていけるという訳ではありません。
『仕事ができる社員だからやめてほしくない!』と考えても、まずは落ち着いてください。理由はこれです。
・「辞めたい」という声を聴いている他の社員の士気が下がる
できる先輩がいると後続の社員が頭角を現せない、そんな現場はたくさんあります。
先輩がいなくなったところで自然と、別の社員が頭角を現します。
最初こそ戸惑いがあったり、不慣れなことからうまくいかないこともあるでしょうが、ある程度時間がたてば解決されます。
また「辞めたい」と言っている人がいると、周囲の人間も「この企業はそんなに魅力がないということか」と認識してしまうことも。
結果周囲のやる気をそぎ、和が乱れてしまうということにつながっていくのです。
だから「上司は辞めたいという部下を引き止める必要はない」のです。
部下の引き止めに時間をかけるても無駄でリスクが増大するから
『時は金なり』ということだけではありません。
引き留めに時間をかけてしまう事がいかに無駄なのか、理由を解説します。
・引き留めに力を入れるのを見ている他の社員の士気が下がるから
・パワハラで訴える・SNSで『辞めさせてくれないブラック企業』など拡散されるリスクがあるから
特に怖いのは2つ目と3つ目ではないでしょうか?
引き止める上司を見続けていると他の社員から、
『この人だけが大事なんだな。俺たちは数合わせ程度にしか見られていないってことか』
という誤解を生んでしまうリスクがあります。
また今はSNSが大きな影響力を持っていて、若い世代は特に日常的にSNSを使って自己発信する時代です。
パワハラで労働基準局に駆け込まれても、SNSで拡散されても『企業イメージを失墜するリスク』があるということも忘れてはいけません。
また『辞めたい』というのは社員にしてみれば最後通牒を言い渡した状況であることも忘れてはいけません。
引き留められていても、業務に本気で取り組めるほどの情熱がない状態だから長引かせても良いことはない。
だから「離職希望の部下を引き留めるのはリスクがあるからしなくてよい」のです。
引き止めているうちに現場の空気が悪くなるから
現場の空気が悪くなるということは組織を運営する上で一番避けたいものですよね。
退職理由を聞いて、『引き止めるためなら特別に希望を少しでも叶えてやりたい』という気持ちにさせられてしまうこともあるかもしれません。
でも、それは本当に良いことなのか?
答えと理由を見てみましょう。
特例は基本的に『1人だけだから』可能な場合がほとんどでしょう。
特例扱いされている、なんて他の社員に言いふらすようなことはしないだろうとタカをくくるのはとても危険です!
特別信頼している仲間だとぽろっと漏らしてしまったり、日常的にみていてばれてしまうようなこともないとは言い切れないからです。
『退職したいといえば特例扱いしてもらえるんだ』という認識を与えてしまうのもよろしくないですが、何より『特例なんて不平等だ!』という反感をかって信頼を失ってしまうこともあります。
「辞めたいと言う部下を引き止めなくてよい?」⇒「はい、その通りです。」
辞めたい社員を引き止めないでよいのは企業としてプラスの転換期だから
ここまで、辞めたい社員を引き留めなくてよい理由をお伝えしました。
もう一つお伝えしたいのが『辞めたい社員を引き留めないことのメリット』についてです。
大きなメリットもあるので、退職希望者が現れたら後ろ向きになるのではなく、前向きにことを進めていくことも大切ということをご理解ください。
・円満退職で退職希望者にとって前向きな転職ができ、取引先になる可能性がある
優秀な人材がいなくなった穴をどう埋めるか、そこにばかり集中してしまう方もいるでしょう。
ですがそうではないのです。
穴が空くのはあっても一瞬。
新しく優秀な人材を雇えば自然と他の社員に競争意識が湧きます。
仮に採用に失敗してしまったとしても、その人材を教育したりしていくうちに別の社員の才能が開花するということも珍しくありません。
そのことから他の社員たちの絆が深まるという事例も、過去に実際に見聞きしています。
『部下が辞めたいなんて自分の責任だ…』と考えてしまうかもしれませんがそれも間違い。
上司は部下の仕事をマネジメントする立場であり、業務上の悩みなどをサポートする立場ではありますが、将来のビジョン・キャリアについてサポートする立場にはないのですから。
引き止めがない方が良い社員タイプ3パターンを知っておこう
引き留めないことで退職が組織にとってメリットとなる社員タイプについて解説します。
・退職を以前からちらつかせていた
・ルールを守らない・協調性がない
カルチャーフィットしていない、エンゲージメントも低い、そんな状況では組織の一員としてうまく機能するはずがありません。
3つ目に関しては言うべきこともありませんが、1つ目に関しては疑問を感じる方もいるかもしれませんね。
ですが仕事をしていて伸びる人材というのはコミュニケーション能力も持ち合わせています。
辞めたい、といって初めて本音や不満を漏らせたというのは『それまできちんとコミュニケーションを測れていなかった・積極性にもかける人物である』ということに他なりません。
残念ですが引き止めたとしても長い目でみて、スムーズに業務をこなし成長するということは見込めないと考えましょう。
2つ目に関しては、他のところでも解説しましたが『辞めたい辞めたい…』とぼやく人は『周囲の士気を下げるだけ』です。
本人が影響力が大きい人物であればあるほど(仕事ができる人材ということも多いですが)、影響度合いも大きくなるので組織としてはありがたくない存在ですね。
【執拗な引き止めのリスク】訴訟・ブラック企業と拡散される・退職代行介入
「辞めたいと言っているのにやめさせてくれない!」
この状況を部下の立場で考えてみましょう。
もう辞める決心がついているからこそ、退職希望を申し出ているのにしつこく引き止められるのは迷惑でしかないのです。
となれば、今の時代は「ブラック企業だ!」などSNSに拡散されたり、労働基準局への申告で企業イメージがダウンしかねません。
場合によっては退職代行が介入してくる時代です。
執拗な引き止めをしてしまう前に、最初からもう一度「辞めたいという社員を引き留めなくてよい理由」を見返してみてください。
部下・社員が辞めたいと言う⇒上司の管理能力ではなく会社とのエンゲージメント不足
管理職以上の立場になると部下に「辞めたい」といわれると上司から
- 「お前のせいだ」と責められる
- 降格処分になる
でもそれは間違いです。
上司は部下の業務や社内でのことをマネジメントする立場ですが、人生や仕事観にまでマネジメント能力を発揮する存在ではないのですから。
会社に満足できない、この会社では今後成長できない、と思うからこその転職。
上司のあなたの責任ではなく責任は会社にあります。
だから「とりあえず引き止めておかなくては」と考える必要はないのです。
部下に辞めたいと言われた時上司がすべき事・円満退職のコツ
辞めたい社員を引き留めなくてよい理由、そして引き留めないメリット・引き留めないほうが良いタイプを知ったところで…
社員に『会社を辞めたい』といわれたらまず何をすべきか押さえておきましょう。
- 退職希望理由を聞く
- 就業期間について労わる
- 退職希望日を確認する
- 人事や上司に伝え退職手続きを進めていく
(もちろん姿勢だけ、では問題ですのできちんと動く必要がありますが)
辞めたいと言う社員と退職までの接し方は「いつも通り」が正解
辞めたいといわれてから実際に退職するまで1か月前後、長ければ2,3カ月期間あることがほとんどです。
引継ぎ作業もありますが、退職が決まっている人とどのように付き合うべきか悩んでしまうこともあるでしょう。
どうするべきなのか見てみてください。
態度がころっと変わってしまうというのは退職希望者だけでなく、周りの社員にも悪影響を及ぼします。
態度が好転していたとしても、です。
あえていつも通りに引継ぎ作業を含めて接するように心がけましょう。
辞めたい社員へのNGワードとそのリスクについて
続いて「辞めたい」といっている社員に間違っても言ってはいけないNGワードをお伝えします。
・『さっさと辞めろ』『辞めてくれて嬉しい』など気持ちを逆なですること
人間としても発言してはいけないものばかりですが、『最後は良いイメージで退職してもらう』ということは上でも少し触れましたが大切です。
SNSでの拡散・労働基準局にパワハラ申告されるなどあなた本人ではなく、『企業にダメージ』を受けるような深刻なケースに発展してしまうこともあります。
辞めたいと言ってきた時点で引き止めず円満退職が一番
ここまでの話をいったんまとめてみます。
結論としてはタイトルの通り「辞めたいという社員は引き止めるべきではない」ということ。
お伝えしたように執拗な引き止めにはリスクがあります。
「どうしようか悩んでいる」のではなくはっきりと「辞めたい」といっているのなら、お互い不幸にならないために円満退職させてあげましょう。
そうすることで、チームが円滑に、より活性化するケースも多いのです。
むしろ避けなければいけないのは『執拗な引き止め』をして残るメンバーに違和感を感じさせ、余計なところでエンゲージメントを低下させてしまうこと。
きれいに円満退職させてあげることができれば、そのリスクは回避できます。
それでも引き止めたい、その場合には「辞めたい」といっているのではなく「どうしようか悩んでいる」かどうかを見極めて、次を読み進めてみてください。
どうしても引き止めたい部下へはリテンションがポイント
退職希望理由を聞いても『絶対に引き止めたい・離職を阻止したい人材』ということもあるでしょう。
その場合にできることから見てみましょう。
「辞めたい理由は?」と何度も聞くのではなく、「何をしたいのか?」「改善して欲しいところは何か?」など迷っている部分を探る会話をしてみましょう。
何度も辞めたい理由を口に出すうち、本当はちょっと悩んでいた部分があっても「辞めたい」と自己暗示をかけてしまうからです。
これでは退職を阻止することはできません。
会話の中で迷いが見えたらまだ引き止められるチャンスがあります。
「この話はまだあなたにしかしていないんですが‥‥」という場合もチャンスがないわけではないでしょう。
本気で決めているのなら、複数人に同時に話をしている可能性が高いからです。
思いとどまってくれる可能性がないか、突破口を探ることが唯一の方法です。
リテンションが必要なら具体的な対策を打ち出す覚悟も必要
思いと留めてくれた場合に、リテンションマネジメントをどのように行うかも重要です。
評価に不満があるなら360度評価を取り入る検討をする、など相応の具体的な対策が必要になります。
思い留まったことを後悔させない、企業としての、また上司としての覚悟も大切だということも忘れないようにしましょう。
引き止めに成功 ⇒ できる人材へ成長した事例は上司の人材育成がキー
引き止めはすべきではないということは説明してきましたが、わずかに引き止めて成功した事例もあります。
なんでもOKという訳ではなく
- 上司と部下に信頼関係が構築されていた
- 人材育成に成功したこと
- 部下の辞めたい気持ちに迷いがあったこと
部下が上司に突然、『辞めたい』と言ってきました。
でも上司は「まだ彼はここで成果を出せていないので、今後も繰り返してしまう懸念がある。」として退職を受け入れずにいました。
上司は辞めたいという部下に「転職を繰り返さないためにも、もうひと踏ん張りして成果を出してからにするべきだ」と話をするのです。
結局この言葉がきっかけで、部下は短い期間で「仕事ができる人材」と周りから認識されるまでに成長を遂げることができました。
このように引き止めて退職希望者にとっても、上司にとっても、企業にとっても良い結果になった例もないわけではありません。
社員の退職理由が自分にあったらどうすべきか
次に「退職理由が自分にあったらどうしたらよいのか」も知識として押さえておきましょう。
上司というのは往々にして不満の対象となるような行動をとらなくてはいけない場合もありますから、ケースバイケースの対応も必要です。
組織や企業についての不満は自分だけでどうにかできるものではありませんし、100%満足できることも少ないもの。
ですが例えば「あなたの指示の仕方が横暴で嫌だった」とか「上司のくせに部下を守ろうとしていない」、「隣で貧乏ゆすりを繰り返されるのが苦痛だ」など確実にあなたに原因がある場合どうしたらよいか。
守ってくれない、など漠然としている場合には詳細を聞く必要もありますが、そのうえで自分の性格や言動が原因の場合はしっかりと謝罪して誠意を見せるということも大切です。
円満に退職できるように、また組織のイメージを悪いままにしないためにも謝るべきところは謝りましょう。
辞めたい社員の退職が決まったらすべき事
退職が決まったら、退職前にすべきことがあります。
他の社員への引継ぎ、また必要であれば新規に採用して人員の再配置は最優先事項です。
人が足りない!という状況で無理やり頑張る、というのは他の社員にとっても悪影響しかありません。
人員再配置だけでは不足があるような場合には、スムーズに新規採用の検討をします。
『即戦力が必要!』という場合は『転職エージェントを利用すること』もおすすめです。
一般的な求人媒体に比べ、能力の高い人材が登録されていることが多く、転職エージェント側でもある程度厳選された人材が多い!のがその理由です。
辞めたい社員を引き止めないことはメリットもリスクもある
辞めたい社員は引き留めなくてよいのか?
『辞めたい』といわれると多かれ少なかれ悩んでしまうのが上司ですが、
- 引き留めないことには大きなメリットもあること
- 引き留めなくても業務が円滑に進む理由
引き止めるべきではないタイプの社員もいること、退職したいと言われた後の社員との付き合い方も重要です。
退職が決まったら転職エージェントサービスを利用するなどして、スムーズに人員再配置をすることも忘れてはなりません。
後ろ向きになりがちな案件ですが、理由とメリットを知れば前向きに行動することもできるはず!
まだ不安が残る、という方はもう一度読み返してみていただければ幸いです。