プロジェクトマネジメントを学ぶときに、ITツールを勉強する前に知っておきたいこと
プロジェクトマネジメントというとなぜ英語やカタカナの用語ばかり出てくるのか?
プロジェクトマネジメントを学ぶというのは、それ用のITツールの使い方を勉強することなのか?
こんな疑問を持ったことはありませんか。
「ツールも必要だが、それだけでは何か大切なものが抜けている」と感じた人は、実際にプロジェクトを任されても成功させることができるセンス(洞察力)がある人です。
この記事では、IT用語やツールを勉強する前に知っておきたい、プロジェクトマネジメントの肝心要について分りやすく解説しています。
プロジェクトマネージャーの大役を任されたときに、チームメンバーから「あいつはカタカナ用語ばかり使っているが、肝心のところは分かっていない」と言われないように、ぜひじっくりとお読みいただきたいと思います。
そもそもプロジェクトとは
前方へ(pro)投げる(ject)という原義をもつprojectは、「投げ損なう」リスクをかかえた仕事です。
- プロジェクトとは「まだやり方が分っていない仕事」に取り組むこと
- プロジェクトにはかならず課題がある
- プロジェクトの成功には「発見」が必要
プロジェクトとは「まだやり方が分っていない仕事」に取り組むこと
プロジェクトという言葉が初めて使われたのは、第2次世界大戦中の1942年にアメリカが立ち上げたマンハッタンプロジェクトだと言われています。
マンハッタンプロジェクトの目的は「ドイツより先に原子爆弾を開発すること」という物騒なものでしたが、ドイツが開発を進めていることを知ったアメリカは米英の関連科学者・技術者を総動員して開発に取り組みました。
その後、プロジェクトという言葉は「核連鎖反応を兵器に利用するには」のように、まだやり方が分っていない仕事(=課題)に取り組むときに使用されるようになりました。
ルーチンワークでは解決できない課題を解決するために、人員も従来の組織の枠を超えて召集され、予算も特別に組まれます。
「課題」には新製品の開発に限らず、既存製品やサービスのコスト削減、時間短縮、品質向上なども含まれます。
プロジェクトには時間の制約(締切)がある
マンハッタンプロジェクトに「ドイツより先に」という要請があったように、プロジェクトには必ず時間的な制約や条件ががあります。
特別のメンバーと特別の予算をあてるプロジェクトには緊急性を伴うのが普通だからです。
また、課題の達成のために作られた組織は、課題が達成されたとき(課題がルーチンワークになったとき)には、元の組織に戻される必要があります。
プロジェクトの成功には「発見」が必須
プロジェクトは、きちんスケジュール管理や予算管理をして、粛々(しゅくしゅく)と進めれば必ず成功するというものではありません。
もともと、これまでなかったものを作る、やり方が分らない仕事に取り組むのですから、プロセスの途中には必ず「難所」が出現します。
その難所をクリアするには、発明とまではいかなくても、なにかしらの新しい発見、あるいはこれまで見逃していたことへの「気づき」が必要です。
プロジェクトマネジメントとは
どのような仕事にもマネジメント(管理)は必要ですが、ビジネスにおいてとくにプロジェクトマネジメントが論じられ、その手法の研究やツールの開発が進められてきたのはなぜでしょうか?
- プロジェクトマネジメントには「未知」や「困難」がつきものである
- プロジェクトマネージャーは課題になっている仕事の専門家でなくてはいけない
- プロジェクトマネジメントは「想定外」に対応する技術
- 外部と戦って内部を活性化する
- 見かけの成功に惑わされず、真の成功へ導く
プロジェクトマネジメントには「未知」や「困難」がつきもの
プロジェクトマネジメントの手法について研究が進んだのは、1961年にスタートしたアポロ計画(Apollo project)においてでした。
宇宙開発競争でソ連に後れを取った(有人宇宙飛行で先を越された)アメリカは「1960年代中に人間を月に到達させる」という壮大なプロジェクトを組んだのです。
アポロ計画は1969年に月面着陸を果して見事成功裏に終結しましたが、多大な人員と予算を要したこのプロジェクトのマネジメントに多くの困難があったことは想像に難くありません。
俗な表現をすると「てんやわんや」はもちろん、下手をすると「しっちゃかめっちゃか」になりかねないのが大きなプロジェクトのマネジメントです。その手法について研究が進められたのはもっともです。
プロジェクトマネジャーは課題になっている仕事の専門家でなくてはいけない
少し話が大きくなり過ぎましたが、私たちが取り組むプロジェクトにも「未知」の部分があり、マネジメントに困難が伴う点は同じです。
困難な局面に遭遇したときは、外からマネジメントするだけでは「難所」はクリアできず、課題の中に入り込んで、メンバーと一緒に「発見」や「気づき」を追及することが求められます。
とくに10人程度までのプロジェクトでは、マネジャーは課題となってる仕事のスペシャリストでなければ、チームの士気を高めるマネジメントはできません。
プロジェクトマネジメントでは「想定外」への対応が求められる
すべてが計画通りに進んで、何事もなく所期の目的を達して解散する、というプロジェクトはほとんどありません。
クリアできない難所が出現して、プロセスをさかのぼって検証する必要が生じることも珍しくありません。
工程が進んでからの後戻りは困難が伴い、メンバーの精神的負担も大きくなります。そんなときにプロジェクトが空中分解しないように舵取りをするのがプロジェクトマネジメントです。
外部と戦って内部を活性化する
プロジェクトが予定通り進まず、納期や予算に問題が生じると、プロジェクトの外部からの圧力や口出しが多くなります。
経営上層部やクライアントからの干渉がダイレクトにチーム内部に伝わると、仕事のベクトルが定まらず増々予定が遅れることになります。
外部と折衝してその圧力から内部を守り、メンバーの士気を保つのもプロジェクトマネジメントの重要な役割です。
見かけの成功に惑わされず、真の成功へ導く
プロジェクトの進捗過程では、後工程ほど変更・修正の困難度が増します。「これでいい」「こんなものだろう」という見かけの成功で次の工程に進むと重大な結果になります。
しかし、途中段階でのつまずきが多くデッドラインが迫ってくると、工程を早く進めようとして各プロセスの評価が知らずしらずに甘くなりがちです。
ぐらついた土台に後工程を積み重ねて、最終段階で成果物が倒壊するということにならないように「前のめり」になりがちな進行をしっかり管理する必要があります。
プロジェクトマネジメントの内容
プロジェクトマネジメントの内容は大きく分けると次の3つになります。
- プロジェクトの立ち上げ
- プロジェクトの進行管理
- プロジェクトの評価
プロジェクトの立ち上げ
プロジェクトの立ち上げには、次の4つの要件があります。
目的(達成すべき課題)の設定
期間の設定
予算の設定
メンバーの選定
これらの要件は、経営層やクライアントの要請によって、既に大枠が決まっている場合がほとんどです。
大枠が決まった中で、プロジェクトマネジャーが選定されて、経営層やクライアントと予算や期間、必要なメンバーなどについて調整する場合もあるし、業務命令としてそのまま与えられることもあります。
プロジェクトの進行管理
プロジェクトが立ち上げられたら、マネジャーは経験に基づいて課題達成に必要なプロセスを工程分けし、各工程に必要なメンバーを配置分けします。
必要なプロセスは、それに要する時間を加味するとスケジュールになります。
プロジェクトの進捗過程では、連絡ミスや情報不足でトラブルか生じないように、情報管理、コミュニケーション管理が必要です。
プロジェクトの規模が大きくなり、メンバーの数が増えるほど、スケジュール管理やコミュニケーション管理のためのITツールの活用が便利になります。
プロジェクトが難所に突き当たったりトラブルが生じたときは、プロジェクトマネジャーの判断で方向修正や前プロセスの見直し、やり直しなどが生じる場合があります。
プロジェクトの評価
課題を達成したらプロジェクトは解散されますが、プロジェクトマネジャーはその後に経営層やクライアントからの評価を受けることになります。
プロジェクトの評価には、プロジェクト解散前のメンバーによる振り返りや、マネジャー自身による検証もあります。
プロジェクトマネジメント まとめ
プロジェクトマネジメントは、既存のルーチンワークではできない新しい価値(製品・サービス)を創造する特別な組織を管理する仕事です。
やりがいのある仕事ですが、困難も少なくありません。自分の専門分野のスキルや経験が必要なだけでなく、多くの関係者との交渉力やコミュニケーション能力も要求されます。