プロパー社員とは?人事を悩ませる、派遣・中途社員との差別問題

プロパー社員とは

派遣社員や中途社員など、さまざまなポジションが入り乱れる社内では、どうしてもプロパー社員を中心とした問題が起こりがちです。

人事を悩ませる「プロパー社員」の差別問題。

プロパー社員は大きく3つの解釈を持ちます。それは「生え抜き社員」「正社員」「自社の社員」です。

本記事では、プロパー社員について、それぞれの特徴を正しく理解し、人事担当者としてどのように対応していくべきかを解説します。

プロパー社員の3つの意味とは?

プロパー社員には大きく3つの意味があります。

それは、契約社員など非正規社員と対比させたプロパー社員であったり、出向社員などの他社人材と対比させたプロパー社員、あるいは自社の社員や中途採用社員と対比したプロパー社員です。

つまり、プロパー社員は社内で契約形態の異なる人材との対比により、異なる意味で使われているということです。

ここでは、プロパー社員の3つの意味を解説します。

①生え抜き社員

プロパー社員と呼ばれる一つ目が「生え抜き社員」です。

生え抜き社員とは、生え抜き、つまりその会社に新卒で入社して在籍し続けている社員のことです。

生え抜き社員は、学校を卒業してから新卒として入社し、一つの会社の文化だけで社会人として成長してきた人材です。

良く言えば、社内の仕事内容や文化を知り尽くしている社員です。悪く言えば、その他の会社を知らないため、社会的な経験値が足りないとも言えますね。

終身雇用が崩壊した現代では、希少な存在とも言えます。しかし、その他の会社の文化を知らないため、中途採用社員や出向社員、あるいは下請け社員などへの接し方を知らない場合があります。

生え抜き社員の立場からすれば、社会人として育った社内の文化以外を受け入れられず、自身の知っている文化を押し付けてしまう傾向があるようです。

②正社員

企業の正規社員である正社員も、プロパー社員と呼ばれます。これは契約社員やパート社員、あるいは非正規社員との区別です。

中途採用であっても、正社員雇用であれば正社員となり、外部社員に対してプロパー社員という認識となります。

社内で就業する人材は、社内文化で不明点があればプロパー社員、つまり正社員に問い合わせを行います。

その時、正社員は企業の代表的な立場で教えることになりますので、会社やプロジェクトの方針をしっかりと理解しておく必要も出てくるでしょう。

③自社の社員

協力会社の社員や下請け社員が常駐している社内では、自社の社員をプロパーと呼び、区別する場合があります。

正社員と同じ観点とも言えますが、ここでは協力会社などの他社の社員と自社社員が一つのチームとなって、同じ職場で働いている状況をイメージしてください。

特に、下請け社員とはポジションが違うという意識もありますので、プロパー社員という言葉が壁を作ってしまう場合もあります。

プロパー社員の特徴とは?

プロパー社員の特徴として、良い面はやはり自社の文化を知っている社員だということです。

それは、新卒採用の社員であっても、中途採用の社員であっても、社内での振る舞いを知っていますので、業務における細かな指示などが必要ありません。

また、プロパー社員ならば指揮命令権は完全に自社にありますので、企業側としても待遇などを考慮することで、比較的自由にバランスをとることが可能です。

しかし、プロパー以外の社員、協力会社の社員や下請け会社の社員の指揮命令権は、必ずしも自社にあるとは限りません。

あくまでも他社の人材ですので、業務外の指示ができなかったり、社内のことを任せっきりにすることはできないのです。

一方、プロパー社員ゆえの悪い面もあります。

例えば、プロパー社員でも生え抜きの社員については、自社以外の組織文化を知らず、どうしても経験が浅くなってしまうのです。

他社で業務経験がある中途採用社員などは、多種多様の企業文化を経験していますので、対応力を持っています。

これまで経験した会社ではこういう解決策があったという経験が、自社に新しい風を吹かせ、突破口を作ることができるのです。

自社しか知らないプロパー社員では、自社で経験した解決策しか持ち合わせていませんので、問題を見る視野が狭くなってしまいます。

また、中途採用社員のプロパー社員にも悪い面が見られます。

協力会社や下請け会社の社員に対して、自社の正社員という立場から変なプライドやポジション意識を持ってしまうこともあります。

プロパー社員によって生まれる確執(差別問題)とは?

ここからは、プロパー社員を中心に生まれる確執(差別問題)について見ていきましょう。

人事が最も頭を悩ませる問題の一つでもあり、プロパー社員と中途社員、派遣社員や契約社員、あるいは外部の人材との間に壁ができてしまう問題です。

確執(差別問題)は、次の組み合わせで起こり得ます。
・生え抜き社員と中途社員
・正社員と派遣・契約・パート社員
・自社の社員と下請け社員

①生え抜き社員vs中途社員

生え抜き社員と中途社員の間に起きる確執は、次の要素を含みます。
・生え抜きであるというプライドと年功序列
・長期在籍のため出世に近い
・上司との関係性も構築されている
生え抜き社員は、新卒から採用されたため、社会人の全てを同じ会社で学んでいます。同時に、年数が経てば経つほど、一つの会社で頑張ってきたというプライドも持ち始めるのです。もちろん、悪いことではありません。

しかし、この意識が、中途社員との確執つながることがあります。

生え抜き社員は、いわゆる古株となり、上司との関係性をしっかりと構築していますし、それは出世などの評価にも大きく関係するでしょう。

新卒の頃から可愛がっている社員を出世させたいという心情は、上司や企業としては当たり前に持つものです。

一方、中途社員はさまざまな組織を見て、経験値も豊富です。即戦力として大いに力を発揮するでしょう。

もし、生え抜き社員の実力のなさや対応力の低さ、チャレンジ精神のなさを目の当たりにすると、給与面や待遇面に不満を持つ中途社員も出てきます。

中途社員は実力がありますので、生え抜き社員ばかりが優遇されるケースが見られれば、やはり壁を作る原因となるでしょう。

生え抜き社員と中途社員は、立場は違えど同じ会社の社員です。しかし、上司や企業の接し方や会社の待遇には、やはり差が出てしまうことがあるのです。

大きな確執(差別問題)が生まれるのは、実力に伴わない評価が浮き彫りになるケースでしょう。

②正社員vs派遣・契約・パート社員

正社員は、派遣社員や契約社員、パート社員から見れば指示を仰ぐ存在です。

もちろん、派遣社員や契約社員の方が長く在籍している場合がありますが、それでも正社員の方が立場が上になります。

これは、契約形態上、どうしても避けては通れない状況です。

物事の決定に参加できない派遣社員や契約社員、パート社員の不満から、確執(差別問題)が生まれるケースがあります。

組織としては当然、正社員の中で方針を確認し、それを正社員以外に伝えるというトップダウンが一般的です。

そこは理解している派遣社員や契約社員でも、会社の方針変更のために作業負担が増えたり、突然これまでのやり方を簡単に変えられてしまうと、そこに不満が生まれます。

しかし、企業側としては、正社員が行う決定を優先しますので、これが確執(差別問題)に発展するケースもあるのです。

給与面や待遇面はもちろん差がありますし、正社員よりも働いていると自負する派遣社員や契約社員もいるでしょう。

正社員の決定が理不尽だと感じるケースもあり、そこに壁や溝を作ってしまうのです。

③自社の社員vs下請け社員

自社の社員と下請け社員の区別は、企業側として行わなければならないものです。

自社の社員をプロパー社員と呼び、その他と区別することは決して間違いではありません。

しかし、下請け社員も同じプロジェクトのチームとして、同じ作業量をこなしているという自負があれば、プロパー社員という特別視した区別には不満を持つでしょう。

これは、疎外感といった方が近いかもしれませんね。

下請け社員が社内で、肩身の狭さを感じるようなあからさまな区別は、適当ではありません。

同じチームで仕事をしていても、食事や終業後にプロパー社員だけで固まってしまうのも、壁を作ってしまう原因となります。

また、下請け社員が納得できない指示を、自社の社員が下した場合にも、その対応によっては確執(差別問題)を引き起こすきっかけになってしまうのです。

プロパー社員の差別問題に人事担当者はどう向き合うべきか

プロパー社員の確執(差別問題)に向き合うには、同じチームとして働く人材を、出来る限り平等に評価することが大切です。

非正規雇用社員や元請け社員、下請け社員や出向社員が、プロパー社員と平等に接する時間を設ける手段もあります。

仕事上ではどうしてもプロパー社員がその他の社員に指示を出す、あるいは、ポジション的に優遇されることは仕方ありません。

しかし、その他の時間を使ってレクリエーションを開催するなど、プロパー社員と非プロパー社員が垣根なく過ごせる時間は、確執(差別問題)の解決に有効に働きます。

生え抜き社員と正社員、中途採用社員の確執(差別問題)を解消するには、年功序列を完全に取り払う措置も有効でしょう。

企業に長く在籍する生え抜き社員の実力が、給与に伴わないという事態は好ましくありません。

即戦力として迎え入れられる中途採用社員にとっては、モチベーションを下げる結果になるだけではなく、退職を促す形になってしまいます。

年功序列の考え方を排除することで、社内におけるプロパー社員との確執(差別問題)も解消されていくでしょう。

同時に、停滞していたプロパー社員の実力を引き出すきっかけになる可能性もあります。

人事担当者は、社内の働く環境だけではなく、制度の面も含めて向き合う必要があるのです。

プロパー社員は社内の制度次第で存在意義が変わる:

プロパー社員は、生え抜き社員とそれ以外の社員、あるいは他社の人材との間に確執(差別問題)を作るきっかけになることは確かです。

社内問題であれば、年功序列を撤廃し、実力主義へ移行することで根本が解消されるでしょう。

他社人材との確執(差別問題)では、プロパー社員との交流の仕方を変えるだけで、確執は少しずつ解け、働きやすい環境を構築することも可能です。

仕事環境において、実力差や指揮命令権の区別は必要なことですが、確執にまで発展することを防ぐには、可能な限りの平等を保つ対応が必要だと言えます。

可能な限りの平等さは、プロパー社員の存在意義を良い方向へ変化させるでしょう。

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