スモハラとは?企業には受動喫煙対策が義務付けられています

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2018年7月に健康増進法の一部を改正する法律が成立し、2020年4月1日より全面施行されます。
これまではマナーとして受動喫煙防止に取り組めばよかったのですが、今後はルール化され、悪質なケースでは罰則(過料)となる場合もありますので注意が必要です。

大企業では原則建物内禁煙が進み、当初は喫煙スペースを設けて空間分煙していたケースでも、屋内全面禁煙となった企業も多いですね。

当記事では、元喫煙者である筆者がスモハラに対する具体的な解決策や、企業内での取り組み事例などについて書いていきます。

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スモハラとは?

スモハラとはスモークハラスメントの略で、喫煙者が煙草を吸うことを強制したり、喫煙によって受動喫煙を生じさせたりして迷惑をかける行為のことを指します。

また分煙への配慮を行うべき立場にある人が、非喫煙者や周囲に対して環境整備などを含めた対策を怠るなどの行為のことを指します。

1990年代であれば、職場の自席でタバコを吸うことが普通にできましたし、部屋がヤニ臭いのは普通だったんですよね。
今では考えられないことですが、そんな時代もありました。

時代は移り、最近では煙草を吸うことはよくないことと定義され、「スモハラ」というワードが誕生しました。

スモハラのケーススタディ(事例)

スモハラの事例についていくつか挙げてみましょう。

  • 職場の飲み会でのスモハラ事例
  • 職場内の喫煙所でのスモハラ事例

身近に発生していることが分かるかと思います。
詳しく解説していきましょう。

職場の飲み会でのスモハラ事例

職場の飲み会で、上司が部下に”タバコ吸っていい?”と聞いて、断れないような状況でタバコを吸うケースが挙げられます。
上司も一度断っているため、問題ないように感じられますが、部下がタバコの匂いが嫌いなケースだと、我慢してしまうことになるため、スモハラに該当します。

職場内の喫煙所でのスモハラ事例

自動車教習所に勤務していた男性が、職場の喫煙所から漏れた煙が原因で持病の心臓病が悪化したとして、受動喫煙被害に対しての訴訟を起こした事例です。
当ケースでは、スモハラから健康被害を訴えた男性側と会社側が調停により和解しましたが、調停の内容には会社側へ環境配慮を要請することが盛り込まれました。

なぜ企業はスモハラ対策をする必要があるのか?

企業ではスモハラ対策が必須となっています。
理由は実際に訴訟となっていることもありますが、一番の理由は職場での受動喫煙対策が企業に義務付けられたことにあります。

対策を怠ると企業側は、非常に不利な立場に追いやられます。
実際の具体例についてみていきましょう。

  • 1.企業も無視できないスモハラの訴訟事例があるから
  • 2.重大な健康被害に発展するから
  • 3.企業では職場の受動喫煙対策が義務付けられているから

1.企業も無視できないスモハラの訴訟事例があるから

スモハラ対策を実施する理由の1つ目は、企業も無視できないスモハラの訴訟事例があるからです。
公益社団法人・日本青年会議所(日本JC)の事例を紹介しましょう。

元職員の30代の女性が、解雇無効と未払い賃金の支払いなどを求めて東京地裁に申し立てた労働審判の調停が2018年6月29日に成立しました。
一方的な解雇を合意による退職との扱いにし、日本JC側が女性に未払い賃金など440万円を支払うことで和解に至りました。

申立書や代理人弁護士によると、日本JCの職場では共用部分や職員の執務スペースで、十分な分煙がなされないまま役員らが日常的に喫煙していたとのことです。
女性は2008年から事務職として働き、2010年ごろから改善を求めていたといいます。

ですが、職場の受動喫煙対策は進まず、女性は気管支ぜんそくと診断されるなど体調が悪化しました。
受動喫煙が原因でPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し、2016年9月から休職に追い込まれます。

職場の環境改善を求めましたが、日本JC側は出勤命令を繰り返し、2017年4月に一方的に解雇していました。

2.重大な健康被害に発展するから

スモハラ対策を実施する理由の2つ目は、重大な健康被害に発展するからです。
煙草の煙の種類から、どのような健康被害に発展するのか詳しく解説します。

煙草の煙の種類は2種類存在する

煙草の煙には、2種類あります。
1つは喫煙者が吸う「主流煙」、もう一つは火のついた煙草の先端から立ち上る「副流煙」。
副流煙はフィルターを通らないため、主流煙の約2倍から4倍の有害物質が含まれています。

受動喫煙で問題となるのは、主にこの副流煙による健康被害です。

副流煙のリスク

副流煙を吸い続けるとどうなるでしょうか。
肺がん、脳卒中、心疾患などの重い病になるリスク。
このリスクが上昇することが統計上明らかになっていますね。

平成28年に発表された厚生労働省の推計によると、受動喫煙が原因となった死者の数は、日本全国で年間「約1万5000人」に上るとされています。

特に妊娠中の女性や呼吸器・循環器疾患のある方は注意が必要

妊娠中の女性が副流煙に含まれるニコチンや一酸化炭素を吸うと、お腹の赤ちゃんにさまざまな影響を与えます。
ニコチンには神経毒性もあり、生まれてくる赤ちゃんの知的能力への影響やADHD(注意欠陥多動性障害)などの発達障害との関連も報告されています。

呼吸器・循環器疾患のある方は気管支や肺の炎症、喘息などを起こしやすくなります。
特に子供や高齢者は影響を受けやすいので、受動喫煙を避けるようにしましょう。

3.企業では職場の受動喫煙対策が義務付けられているから

スモハラ対策を実施する理由の3つ目は、企業において職場の受動喫煙対策が義務付けられているからです。

健康増進法における受動喫煙防止対策は義務になります。
また労働安全衛生法において「事業者は、労働者の受動喫煙を防止するため、当該事業者及び事業場の実情に応じ適切な措置を講ずるよう努めるものとする。」としています。

そのため、政府でも受動喫煙防止対策を推進するため各種支援を行っています。

受動喫煙防止対策助成金

100万円を上限に、工事費の半額(飲食店は⅔)が補助されます。
工事費の全額を補助するものではありません。

また申請にあたっての注意事項や対象者など、細かく規定されています。
詳しくは下記厚生労働省のサイトをご確認ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000049868.html

受動喫煙防止対策に係る相談支援

受動喫煙防止対策を行う上で事業者が抱える悩みについて、専門家が相談に乗ってくれます。
また全国で受動喫煙防止対策の進め方説明会(無料)を開催していますので、これから対策を行う事業者は足を運んでみてはどうでしょうか。

支援制度の内容や、事例の紹介を聞くことができます。

受動喫煙防止対策に関する測定機器貸出

職場環境の実態を把握するために、デジタル粉じん計と風速計を借りることができます。
申請することで無料で借りることが可能です。
また、希望すれば、事業場にきていただいて機器の使用方法の説明を実施してもらえます。

企業はスモハラ対策(受動喫煙対策)として具体的に何をすれば良いのか?

企業側で行う具体的な受動喫煙対策については主に3つあります。

  • 全面禁煙とする(施設の敷地内および屋内)
  • 特定屋外喫煙場所を設置する(施設の敷地内又は屋内は原則禁煙
  • 喫煙専用室を設ける(施設の敷地内又は屋内は原則禁煙)

詳しく解説していきましょう。

全面禁煙とする(施設の敷地内および屋内)

施設の敷地内および屋内全てで禁煙とする、白黒はっきりさせる方法です。

筆者が実際に経験した体験談として、ある生命保険会社の建物内で全面禁煙となったケースを紹介します。
こちらの企業では当初、建物内に喫煙専用室を設けていました。
ですが、全社での取り組みとして禁煙推進が始まったことを受けて、約1年後に喫煙専用室を廃止し、建物内全面禁煙に踏み切りました。

残念ながら全面禁煙になった後も、休憩時間に近隣の喫煙スペースへ出向く人もいましたが、全社で一斉に禁煙推進をアナウンスして期限を切って進めていきました。

禁煙推進にあたり、禁煙外来や禁煙補助食品の支援も企業側で実施したことで、結果的に禁煙者が急増していました。

特定屋外喫煙場所を設置する(施設の敷地内又は屋内は原則禁煙)

施設内の特定エリアのみ喫煙可能とする方法です。

屋外喫煙所については、「開放系」と「閉鎖系」の2種類に大別されます。

開放系は屋根のみの構造や、屋根と一部の囲いのみの構造です。
そのため外部からも視認性があり、火災予防対策や労務管理が容易となる効果があります。

閉鎖系は屋根と壁で完全に囲われ、屋外排気装置等で喫煙所内の環境が管理されています。
たばこの煙を速やかに屋外喫煙所の外に排出するためには、たばこの煙が内部に滞留しないよう屋外排気装置でコントロールします。
また、天井に沿って水平方向に拡散しないようにすることが、速やかに煙を排出する上で効果的でしょう。

筆者が実際に経験した体験談として、ある精密機器製造会社の敷地内で新しく建てられた工場に、開放系の特定屋外喫煙場所が設置されました。
こちらは敷地が広大で、周囲からは視認できない環境だったことも、開放系の喫煙所が設置された理由だったようです。

喫煙専用室を設ける(施設の敷地内又は屋内は原則禁煙)

施設内の特定エリアに喫煙専用室を設ける方法です。

専用室内に排気装置や脱煙機能を設けて、喫煙専用室としています。
脱煙機能(たばこの煙の流出を防止するための技術)の技術的な要件として、総揮発性有機化合物の除去率が95%以上であること等の厳しい基準が設けられています。

筆者が実際に経験した体験談として、大手ショッピングモールや、大型スーパーなどで導入されている喫煙専用室の設置ですね。
脱煙機能で煙草の煙が室外に漏れないよう、徹底されていました。

まとめ:スモハラは企業内対策が必須

スモハラに対する具体的な解決策や、企業内での取り組み事例などについて書いてきました。

ひと昔前はタバコを吸う事が悪い事ではなかったのですが、時代の流れで最近は喫煙者には厳しくなっています。

企業としてもスモハラに対する対策を怠ると、従業員や周辺施設から訴えられるケースもあります。

ですので、当記事で述べた事例や解決策を参考に企業担当者はスモハラ対策を行うようにしましょう。

 

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