OJTとは?問題点と正しいやり方、OFF-JTとの違いも解説
本記事では、OJTについて分かりやすく解説しています。
OJTとは
OJTとは、「On The Job Training(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」の略称です。
新入社員や中途社員に対して、実務を行いながら業務を覚えてもらうための教育手法で、短期間で即戦力へと成長させます。
OJTの担当者は、実務経験はもちろん教育方法についてもあらかじめ理解しておく必要があります。
多くの場合は、OJT前に担当者への研修が必要です。
OJTの発祥
OJTの発祥は、第一次世界大戦中のアメリカです。
アメリカ軍の隊員を育てるための育成手法として誕生しました。
その後、1950年代に日本へ輸入され、企業の管理職を教育するために導入されました。
現在では、新入社員を主な対象とし先輩社員がOJTを行う形式が多く見られます。
OJTの反対は「OFF-JT」
OJTの反対としては「OFF-JT」が挙げられます。
両者の違いは次のとおりです。
・OJT:実務を通した教育手法。経験や勘が必要な業務で用いられる
・OFF-JT:主に座学で学べる業務が対象。社外でのセミナーなども活用される
OFF-JTは「Off The Job Training(オフ・ザ・ジョブ・トレーニング)」の略称です。
主に、実務から離れた場所で行う研修のことを指し、期間を設けて特定の場所で行います。
マニュアル化できる業務が対象ですので、複数人が同時に受けられる教育です。
OJTとOFF-JTの向き不向き
OJTとOFF-JTは、業務によって向き不向きがあるため、使い分ける必要があります。
どちらも取り入れている企業では、OFF-JTで全体的な業務研修を行った後、OJTで実務を教育するという手順です。
OJTは経験と勘が必要な業務向き
OJTに向いているのは、実務現場での経験や勘が必要な業務です。
感覚が必要なので、完全なマニュアル化が難しく、言葉だけでは教育ができません。
例えば営業職では、お客様との接し方や言葉の柔らかさ、推しの強さのさじ加減などが対象です。
先輩社員に新入社員を同行させ、お客様と接する態度や、お客様によって言葉遣い(専門用語など)変えるなどという技術は、経験が必要なスキルです。
現場で実務を行ってもらい、適切なフィードバックを行うことで短期間に成長してもらいます。
OFF-JTはマニュアル化できる業務向き
OFF-JTに向いているのは、完全にマニュアル化できる業務です。
一度に複数人への教育が可能で、座学でも行えますので、OJT前の研修にも向いています。
例えば営業職であれば、挨拶の仕方や名刺の渡し方、電話の応対などもOFF-JTで可能です。
実務から離れた場所でも学べるものは、OFF-JTによって教育できます。
OJTのメリット
OJTのメリットには、以下のものが挙げられます。
- 即戦力を育てる
- 研修のためのコストを削減できる
- 個々の能力に合わせた教育
即戦力を育てる
実務を通して教育するので、OJT終了後は即戦力になることが期待できます。
実際の現場でお手本となる実務を見聞きしてもらい、さらに実践からのフィードバックを与えることで、必要なスキルをピンポイントで教育します。
OJTが終われば、そのまま業務を続けていくため、実務での成果が表れやすいのも特徴です。
研修のためのコストを削減できる
OFF-JTと比べると、OJTの方が研修コストを抑えることができます。
実務を行いながらの教育なので、社内外の特定の場所や、研修用に決まった時間を確保する必要はありません。
社外セミナーなどには費用がかかりますが、OJTでの教育担当は先輩社員であるため、外部への委託コストなども抑えられます。
個々の能力に合わせた教育
OJTでは、受ける側の個々の能力に合わせた教育が可能です。
OFF-JTの座学では、複数人に一定のペースで教育する必要がありますが、OJTではほとどの場合1対1で教育をします。
つまり、苦手な部分や反復すべきところを、教育担当が判断してOJTを進められるということです。
逆に、問題なく成果を出せる業務に対して、時間を割く必要もありません。
OJTの問題点
ここでは、OJTの問題点を見ていきましょう。
OJTは効率のよい教育方法というイメージがありますが、以下のような問題点も見えてきます。
- 教育ではなく放置
- 教育する側のスキルに左右される
教育ではなく放置
OJTの成果は、教育する側に委ねられます。
つまり、教育側のやり方や意識が、OJTが成功するか否かを左右するのです。
例えば、営業同行でのOJTを行っていても、教育担当者が日常の業務をこなし、新入社員はそれを見ているだけという場合があります。
これは教育ではなく、だたの放置です。
OJTでは、実務を見せ、実行してもらい、そこからフィードバックをすることで人材の育成を期待します。
営業同行においても、ただ同行させるだけではなく、現場で何をしてもらい、どういったフィードバックをするかを明確にしておく必要があるのです。
教育する側のスキルに左右される
教育する側のスキルによって、OJT後の能力に差が出る可能性があります。
その原因は、教育担当の技術が劣っているという場合もありますが、ほとんどがOJTを実施するための準備ができていないことです。
教育側も、OJTで何をしたらよいのかわからない、というのが本音でしょう。
OJTで成果を上げるために、どこにフォーカスして教育するかを事前に明確にしておかなければなりません。
例えば、営業先ではどのタイミングで初めての営業活動をしてもらうか、実際にお客様と接している新入社員のどこを見てフィードバックするか、といった指標です。
教育担当者に対しては、OJTの事前研修を設けましょう。
OJTのやり方
ここでは、OJTのやり方について、基本的な流れを見ていきましょう。
教育現場での順番としては、次のようになります。
- Show:やってみせる
- Tell:説明する
- Do:やってもらう
- Check:評価と指導
Show:やってみせる
Showでは、教育側が実務をやってみせます。
例えば営業であれば、お客様にアポイントを取り、客先に訪問してプレゼンし、顧客情報をまとめるといった一連の流れを知ってもらいます。
まずは実務を見せることで、業務全体を把握してもらいましょう。
Tell:説明する
Tellでは、実務の流れについて、なぜこれをしたのかを説明します。
ひとつひとつの行動にどのような意味があるのかを知ってもらいましょう。
例えば、お客様との会話の中で、なぜ専門用語を使わないのか、あるいは専門用語を多めに使ったのかを説明します。
通常、専門用語を使うよりも、わかりやすい言葉に置き換えて説明することが好まれます。
しかし、ある程度の専門知識を持つお客様に対して、専門用語を使わないのは逆に失礼に当たるのです。
どのお客様が専門性を持っているのかも含め、なぜそうしたのかを説明しましょう。
Do:やってもらう
Doでは、実際にやってもらいます。
見聞きするだけではスキルは身につきませんので、現場で実務を実行してもらうのです。
その際、教育側はOJTで教育すべきチェックポイントをしっかりと見ておき、後のフィードバックに備えます。
営業では、身だしなみから挨拶の仕方、名刺の渡し方や退室の態度至るまで、すべてが対象となるでしょう。
Check:評価と指導
Checkでは、やってもらった結果に対しての評価と指導を行います。
良いところは良いと評価し、悪い部分や改善点には適切な指導を行いましょう。
例えば新入社員の場合、説明が早口になってしまったり、質問に対して答えが詰まったりします。
指導すべきポイントは、相手に伝わるようゆっくりと説明すること。そして、質問に対する準備の仕方や、その場での適切なしのぎ方です。
OJTで大切なのはフィードバックとオープンクエスチョン
OJTでもっとも大切なのは、フィードバックとオープンクエスチョンです。
適切なフィードバックと共に、自分自身で考えてもらう機会を与えましょう。
フィードバック
フィードバックでは、良いところと悪いところ、改善策を具体的に伝えることが大切です。
間違いや改善点は、可能な限りその場でフィードバックします。
もちろん、お客様の目の前では指導できませんが、訪問先を出たらできるだけ早く改善点を伝える伝えましょう。
時間が経ってからのフィードバックは、あまり効果がありません。
また、多くのフィードバックをいっぺんに伝えることは、愚痴ととらえられるケースもありますので、注意が必要です。
オープンクエスチョン
実務での行動に対して、できるだけ早く評価を行うとともに、どのように改善したらよいかを、自身でも考えてもらいます。
Yes・Noでは答えられないオープンクエスチョンをすることで、自分の言葉で改善策を導き出してもらうのです。
例えば自社サービス説明で、お客様が明かに置いて行かれてる状況があった場合、その時の状況を説明して、改善点(説明の仕方)は本人に考えてもらいましょう。
どうすればよかったかを考え、アウトプットしてもらうことは、実務での経験値には欠かせません。
まとめ:OJTは即戦力を生む教育手法
OJTは、実務を通しての教育で即戦力を生みます。
OJTは、実務を一方的に見せるだけではなく、適切なフィードバックとオープンクエスチョンを行うことが重要です。
教育側にも事前研修をしておくことで、OJTを円滑に効率よく進めましょう。
