ダイレクトリクルーティングの「攻めの採用」が中小企業の人材確保に有効な理由とは

若者の人口が減り、人材の売り手市場傾向が強くなった2010年頃から「ダイレクトリクルーティング」という新しい採用手法が注目されるようになりました。

とくに、従来の採用手法では必要な人材の確保が難しいと感じる中小企業で、この手法を取り入れる会社が年々増えています。

「攻めの採用」といわれるダイレクトリクルーティングとはどのような採用手法で、なぜ中小企業の人材確保に有効なのでしょうか?

この記事では、ダイレクトリクルーティングが従来の採用とどこが違うのか、ダイレクトリクルーティングを実施するにはどうしたら良いかを、分かりやすく解説しています。

ダイレクトリクルーティングとは

ダイレクトリクルーティングは、なにが「ダイレクト」で、なぜ「攻めの採用」といわれるのでしょうか。

  • 待ちの採用から攻めの採用へ
  • 従来の採用手法との違い
  • ダイレクトリクルーティングが必要とされる背景

待ちの採用から攻めの採用へ

求人サイトに募集広告を出す、転職エージェントに登録者を紹介してもらう、という従来の「待ちの採用」から、欲しい人材に直接アプローチする「攻めの採用」がダイレクトリクルーティングです。

従来のやり方では「応募者がない」場合は、もう一度お金をかけて求人サイトに広告を出すしかありませんでした。エージェントに年俸の30%という高い報酬を払って採用した人材が、ミスマッチで短期間に退職するケースもありました。

こんな苦い経験をしても、自社に採用窓口(サイトやツール)がなく、人材の分母(母集団)を仲介者に握られている「待ちの採用」では打つ手がありませんでした。

ダイレクトリクルーティングは、このような仲介者なしで学生や転職希望者に直接自社の魅力をアピールする採用手法です。

従来の採用手法との違い

ダイレクトリクルーティングでは、採用母集団のデータからの候補者のピックアップを、エージェントに任せるのではなく自社で行ないます。この場合、母集団のデータは提供会社からレンタルする必要があります。これが狭義のダイレクトリクルーティングです。

さらに、自社のホームページやSNS等を利用して、母集団そのものを自社で形成することも可能で、これが広義の、あるいはもっともラジカル(根本的)なダイレクトリクルーティングです。

採用エージェントを仲介すると、候補者のピックアップだけでなく、面接の段取りや内定の応募者への通知など、入社までのもろもろのプロセスを代行してくれます。ダイレクトリクルーティングではこれらの作業をすべて自社で行なうことになります。

一方で、応募者も従来はエージェントに企業の選定から内定後の給与交渉まで、手厚くサボートされました。ダイレクトリクルーティングでは、このようなサボートを受けられない応募者への対応、フォローも必要になります。

ダイレクトリクルーティングが必要とされる背景

若年層の人口減少で働き手の絶対数が不足していることに加え、終身雇用制が揺らいで人材が流動化している現在は、中小企業にとって人材の確保がますます難しくなっています。

「待ちの採用」から「攻めの採用」への転換の動きは、起こるべくして起きたと言って良いでしょう。

また、この動きを促がした背景に、求職者へのダイレクトなアプローチを可能にするIT(デジタル情報技術)の進歩とコミュニケーション手段の多様化があります。

ITの進歩によって、採用母集団のデータを一般企業の採用担当者にも扱えるような形で提供するサービス会社が多数現れました。

Faebook、インスタグラム、LINEなどのSNSの発達で、企業から人材へ直接アプローチする手段も多様化しています。

ダイレクトリクルーティングの内容と費用

ダイレクトリクルーティングは、具体的にはどのように攻めの採用を実施し、それにはどれくらい費用がかかるのでしょうか。

  • エージェントのデータベースを自主利用する
  • webサイト、SNSで求職者に情報発信する
  • ダイレクトリクルーティングの費用

エージェントのデータベースを自主利用する

ダイレクトリクルーティングが日本で普及しだしたきっかけは、2010年頃からリクルートやビズリーチなどの転職エージェントが、自社で所有する母集団データを「企業から登録者への直接アプローチ」のために提供するようになったことです。

企業は3ヶ月、6ヶ月などの期間を決めて、レンタル料を支払うことで、サービス会社の所有するデータベースとそのシステムを使用することができます。

利用する企業は、自社が必要とする人材の要件を明確にして、データの中から候補者を選び出し、メールなどでアプローチします。

候補者のピックアップを自動的に行なうなどの仕組みを用意しているサービスもありますが、あまりそういう便利なサービスに頼っていると、ダイレクトリクルーティングとは言えなくなります。

しかし、もっとも重要なのはピックアップした候補者にどのようなメールを送るかです。

メールはレスポンスを見ながら2週間ごとなどの一定間隔でブラッシュアップしていくことができます。試行錯誤しながら、欲しい人材像と会社の魅力をいかにインパクトをもって伝えるかが効果の分かれ道になります。

webサイト、SNSで求職者に情報発信

サービス会社のデータを使用するだけでなく、webサイトやSNSで候補者を発掘し、アプローチすることも必要です。

ツールの選定・設計やコンテンツの制作にはノウハウが必要で手数もかかるので、ダイレクトリクルーティングは人事担当者だけで行なうことはできません。

インターネットの利用の他に、求人サイトのアドバイスに頼らない求人広告の工夫、学校の就職担当者との関係づくり、会社説明会などの採用イベントの活用など、ノウハウを磨いていかなければいけないことがいろいろあります。

ダイレクトリクルーティングの費用

ダイレクトリクルーティングでは、定額のデータベースの使用料がかかります。

料金は1ヶ月に5万円、1年間50万円など、サービス会社やプランの内容によって違います。サービス会社によっては無料試用期間を設けているところもあります。

転職エージェントと同じように、採用した場合の成功報酬を設定しているサービス会社もあります。サポートが充実しているのでしょうが、そうなるとダイレクトリクルーティングと言えるかどうか微妙です。

ホームページやSNSを利用する場合は使用料はかかりませんが、設計やデザインをプロに依頼するとその費用が発生します。

ダイレクトリクルーティングのメリット

ダイレクトリクルーティングには、従来の採用手法にはない次のようなメリットがあります。

  • 転職エージェントが紹介しない人材にアプローチできる
  • 採用コストの削減が可能
  • 採用ノウハウが社内に蓄積し、採用力が年々高まる
  • 習熟すると中途採用がスピーディーになる

転職エージェントが紹介しない人材にアプローチできる

転職エージェントは優秀な人材を「給与が高い案件」に優先的に紹介します。年収の何割という形で成功報酬をもらうエージェントとしては、その方が「おいしい」からです。しかし、それではどうしても中小企業には不利になります。

また、求職者も給与だけを基準に転職先を決めるわけではないので、給与基準の紹介では本当に自分を生かすやりがいのある仕事にめぐり会えない可能性があります。

ダイレクトリクルーティングでは欲しい人材に主体的にアプローチできるので、このような不利やミスマッチを防ぐことができます。

採用コストの削減が可能

データベースの使用料は、採用サイトの広告掲載料や転職エージェントへの成功報酬に比べて低価格なので、ダイレクトリクルーティングが成功すれば採用コストを削減することができます。

求人広告は前金制なので、費用はかかったが採用できなかったという結果に終わるリスクがあります。転職エージェントの利用は後払いですが、成功報酬が高額です。その点、データベースの利用は月に数万円から可能です。

SNSを利用してダイレクトリクルーティングできれば、費用はゼロですみます。

採用ノウハウが社内に蓄積し、採用力が年々高まるする

エージェント任せにしないダイレクトリクルーティングを行なうことで、ノウハウが自社に蓄積して、採用スキルが年々アップすることが期待できます。

求職者にアピールできる自社の魅力がどこにあるか、自社に本当に必要な人材はどんな人物なのかなど、ミスマッチのない採用のために明確にしておかなければいけないことが、ダイレクトリクルーティングによって明らかになってくるからです。

ダイレクトリクルーティングを実施する際の試行錯誤や失敗の経験もノウハウとして自社の財産になります。

習熟すると中途採用がスピーディーになる

ダイレクトリクルーティングの手法に習熟すると、エージェントと人材要件について打ち合わせて紹介を待つ時間を省けるので、急な人材募集にスピーディに対応できるようになります。

ダイレクトリクルーティングはとくに中途採用に力を発揮するので、中小企業にはメリットの大きい採用手法と言えます。

ダイレクトリクルーティングのデメリット

ダイレクトリクルーティングには、採用に関する仕事が増える、すぐには成果が出にくいなどのデメリットもあります。

  • エージェント任せにできないので仕事が増える
  • 長期的な取り組みが必要
  • 始めた当初はむしろ費用が増える

エージェント任せにできないので仕事が増える

ダイレクトリクルーティングは、企業と求職者のマッチングを取りもつ仲介者を取り払う採用手法なので、当然ですが採用に関する企業の仕事量が増えます。

データベースを利用する場合でも、候補者の選定はもちろん、応募への勧誘、面接の段取り、面接後の求職者の意向確認など、従来はエージェントに任せてことのすべてを自社でやらなくてはいけません。

SNSなど独自の採用ツールを制作・管理するにも、もちろん手間と時間がかかります。

長期的な取り組みが必要

ここまで述べたことからご理解いただけるように、ダイレクトリクルーティングにはノウハウが必要で、一朝一夕には効果が出ません。

性急な成果を求めず、少なくとも2~3年のスパンの取り組みが必要です。

したがって、ダイレクトリクルーティングを実施には、長期作戦に対する経営者の理解と支援が欠かせず、成功の鍵を握っていると言いってもよいでしょう。

始めた当初はむしろ費用が増える場合がある

従来の採用手法からダイレクトリクルーティングに切り替えるときに、直ちに完全に移行するのがリスキーだと考えたら、当初1~2年は従来の手法と併用することになります。

併用する場合は、当然ながら採用にかかる軽費がむしろ増えることになります。

ダイレクトリクルーティングを成功させるポイント

ダイレクトリクルーティングを成功させるポイントは、経営者を巻き込んだ全社的な取り身と、長期作戦で採用ノウハウを蓄積していくことです。

  • トップも参加して全社的に取り組む
  • 長期作戦でノウハウを蓄積する
  • 欲しい人材がいるデータベースを使用する

トップも参加して全社的に取り組む

ダイレクトリクルーティングは、データベースにある求職者にスカウトメールを送ることが中心になります。メールを受ける取る求職者は企業についてまだ何も知らないので、ありきたりの内容ではスルーされる確率が高いと考えなければなりません。

メールをインパクトのあるものにするには、採用担当者だけの工夫では限界があります。自社がどのような人材を求めているのかを明確にするとともに、アピールできる会社の魅力が何かを発信企業が自覚しておかなければなりません。

社長がメールを書くというスタイルが有効な場合もあります。そのためには、単に社長の署名があるだけでは底が浅いので「わが社にとっての採用とは何か」を全社的に意思統一していく「採用ブランディング」が必要になります。

採用ブランディングについては、こちらの記事をどうぞ

長期作戦でノウハウを蓄積する

スカウトメールのインパクトを高める、SNSのコンテンツを充実して活用するなど、ダイレクトリクルーティングには長期的に取り組まなければならないことがいろいろあります。

ダイレクトリクルーティングの成功鍵はこのような長期作戦で「採用力」を高めていくことにあります。

欲しい人材がいるデータベースを使用する

ダイレクトリクルーティングで使用するデータベースは、提供するサービス会社によって、新卒用、中途採用用、技術者用などの特徴、得意分野があります。

また、データの使用料は高いがその使い方に便利なシステムがある、システムはシンプルだが使用料が安いなどの特徴もあります。

サービス会社を選ぶときは、このような特徴をよく比較して、自社に合ったデータ、サービスを利用することが肝心です。

まとめ:ダイレクトリクルーティングで採用力つけよう

ダイレクトリクルーティングは、求人サイトの広告や転職エージェントの紹介に頼らないで、欲しい人材に直接アプローチする攻めの採用手法です。

攻めの採用のノウハウを蓄積することで、従来のやり方では獲得できなかった自社にマッチ人材を獲得することが可能になります。

売り手市場の採用環境の中で人材確保に苦労をしている中小企業の経営者や採用担当者は、ぜひ一度検討してみることをおすすめします。