プロジェクトの振り返りは終結後にしても無意味。進行中、定期的に短時間でやる!
プロジェクトの振り返りは、プロジェクトが終わってからするものだと思っていませんか?
でも考えてみてください。終わってから振り返って改善点を発見しても「後の祭り」ではないでしょうか。
次のプロジェクトに生かせる?
しかし、次のプロジェクトは今回とは諸前提が違います。メンバーだって変わっているでしょう。
結論、振り返りはプロジェクトの途中で定期的に行なうべきです。
この記事では、なぜ振り返りはプロジェクトの進行中にすべきか、そしてその効果的な方法とは何か、について解説しています。
振り返りは、なぜプロジェクトの進行中やるべきか
次のプロジェクトで、また一からスタートしなくても良いために、良かった点は忘れずに、悪かった点は次はどうすればよいか考えておこうーというのがプロジェクト終了後の振り返りですが、そこには次のような盲点があります。
- プロジェクトは1つ1つが別の生き物
- 終了後の振り返りにはモチベーションがない
プロジェクトは1つ1つが別の生き物
各々のプロジェクトは、まず課題が違うし、メンバーも関係者も予算も期間も違います。
これらの要素が組み合わされたそれぞれのプロジェクトは、いわば「別の生き物」です。
ビタミンCを体内で作れる生き物もいれば、食物から摂らなければいけない生き物もいるように、プロジェクトの「体内メカニズム」や各器官の「相互作用」も違います。
プロジェクトが終わってから振り返って「ビタミンCの摂取が足りなかった」と反省しても、次のプロジェクトにはビタミンCは必要ないかもしれません。
Aプロジェクトの成功要因がBプロジェクトでは失敗の原因になることもあるでしょう。
終了後の振り返りにはモチベーションがない
課題を達成した後の振り返りは、開放感で話は弾むでしょうが、問題があった部分を深く掘り下げるという雰囲気にはなりません。
課題が未達成に終わった(炎上した)後の振り返りは、まさに「後の祭り」で、そこで見つかる失敗の原因は「クライアントの要求があいまいだった」とか「経験不足のメンバーが多かった」など、個々のメンバーにとっては改善の手が届かない事がほとんどです。
このように、終了後の振り返りでは高いモチベーションは期待できません。
メンバーには「この振り返りは誰のためにやっているのだろう」という疑問が生じるでしょうし、プロジェクトマネジャーもテンションの低いメンバーの意見から有益なヒントを得ることはできません。
プロジェクトの振り返りの手法
プロジェクトの振り返りは、振り返ったことが役に立つプロジェクトの進行中にやる必要があります。
- プロジェクトの振り返りは2週間に1回、1時間でやる
- KPT法
- YWT法
プロジェクトの振り返りは2週間に1回、1時間でやる
プロジェクト進行中の振り返りは、1時間を目安に集中して行ないましょう。
間隔はプロジェクトの期間によりますが、1週間に1回あるいは2週間に1回が適当です。
週末は疲れが溜まっているので、リフレッシュした週明けの就業前の1時間が良いかもしれません。
前の週の良かった点も問題点も、少し「塩漬けする」時間を置くことで、冷静に振り返ることができます。
KPT法
プロジェクトの振り返りの手法としてよく知られているKPT法は、短時間の振り返りに適しています。
KPT法は、次の3つをキーワードにして、1週間を振り返ります。
- Keep(続けるべきこと、良かったこと)
- Problems(抱えている問題、改善すべき点)
- Try (今週トライしたいこと)
メンバーは7×7cmくらいの付箋に、思いついたKeep・Problems・Try を1枚に1個ずつ書いて「振り返り会」に参加します。(メンバーごとに付箋を色分けすると分りやすい)
ホワイトボードを下図のように仕切って付箋を貼りつけます。会の途中で思いついたことを追加してもOKです。
ボードに貼り終ったら、各メンバーは付箋に書いた内容について簡潔に説明します。
その後、個々のKeep・Problems・Try に対して意見を交換し、アドバイスを出しあい、必要に応じてポイントをホワイトボードに書き込んでいきましょう。
すぐに解決策が見つからな問題があっても、それをチームで共有することが重要です。
プロジェクトマネジャーやリーダーは、このような振り返りを通じて「今週は誰をどのようにフォローするか」を把握することができます。
YWT法
YWT法は、Y(やったこと)、W(分ったこと)、T(次にやること)を書きだしてミーティングをする手法です。
KPT法との違いは、Problems(問題点)を出して話し合うのではなく、W(分ったこと)というプラス面を共有しようとする点です。
Problemsを出しあうと批判的、他罰的になる恐れがあるが、W(分ったこと)を出しあうのは建設的だという人もいます。
しかし、YWT法でもT(次にやること)を考えるには当然今抱えている問題点をクリアする必要があり、本質的な違いはありません。
プロジェクトの振り返りの注意点
プロジェクトの振り返りを有意義にするには、次のような点に注意することが大切です。
- 気づきや危惧をメモする習慣をつける
- 心配なことを隠さない
- 振り返りの会で相談できそうな人を見つける
- PM、PLは振り返りをリスク管理に生かす
気づきや問題点をメモする習慣をつける
プロジェクト管理に使っているツールにあるメモ機能・付箋機能などを使って、日々のタスクで気づいたこと、不確かなこと、難点、危惧される点などを書き留めておく習慣を付けましょう。
プロジェクトの振り返りの会の前にそれを見直せば、会の準備に時間をかけなくて済みます。
心配なことを隠さない
気になっていることを自分の胸の内にしまい込んでいると、プロジェクトの振り返りを行なう意味がなくなります。
メンバーそれぞれが問題点を一人で抱えたまま工程を進めると、チームのあちこちにブラックボックスが生じて、不具合が生じたときの修正が困難です。
新人メンバーが小さな問題と思ったことも、ベテランやPMが見たら大きな問題に発展するリスクが大きいものかもしれません。
「Help me!」のサインは仕事を投げ出すことではなく、後工程になるほど出しにくくなります。
振り返りの会で相談できそうな人を見つける
プロジェクトの振り返りの会で何回か話し合っていると、PMやPL以外にも相談できそうな人が誰か分ってきます。
そういう人が見つかれば、振り返りの会を待たずに相談すれば仕事の進捗か早くなります。
PM、PLは振り返りをリスク管理に生かす
プロジェクトのマネジャーやリーダーにとって振り返りは、難所に突き当たっているメンバーを見つける絶好の機会です。
また、プロジェクトの目的やレベルに対するメンバーの誤解や認識のズレを発見して、修正をする機会でもあります。
日頃の業務でクライアントから直接にメンバーが成果物の使い勝手などについて要望を受けることもあります。
その意思疎通や認識に誤解や齟齬があると後々大きな問題になるので、PMは振り返りの会で「クライアントか何か言われていることがあるか」を確かめるのも重要です。
プロジェクトの振り返りについて まとめ
プロジェクトの振り返りは、プロジェクト終了後ではなく、進行中に定期的に行なう必要があります。
それによって問題の芽を早く摘むことができるからです。
振り返りでは、メンバーは問題を一人で抱え込まずにオープンにし、PMやPLはフォローが必要なメンバーを見つけることが大切です。