プロジェクト管理は結局コミュニケーション管理に集約される
プロジェクト管理に最も適したツールは何かを考える前に、1つ大切なことがあります。
それは、チームメンバーが積極的にコミュニケーションを取りたくなるプロジェクト管理とはどんなものかを考えることです。
なぜなら、スコープ管理、スケジュール管理などプロジェクト管理のさまざま項目は、その内容を見ると、結局PMとメンバーの、あるいはメンバー相互のコミュニケーションに他ならないからです。
この記事では、多岐にわたる複雑なプロジェクト管理も、コミュニケーションという観点でとらえることで多くのことがスッキリすることを解説しています。
プロジェクトの管理ツールを選ぶときにはぜひ、チームのコミュニケーションをいかに活性化させるかという観点で選んでいただきたいと思います。
プロジェクト管理の「項目」ではなく「内容」をよく見よう
見ているとめまいがしてきそうなPMBOKガイドの盛りだくさんなプロジェクト管理項目も、その内容は見かけほど複雑ではありません。
- なんだかとっても大変なプロジェクト管理
- どの管理項目も具体的にやることはコミュニケーションである
なんだかとっても大変なプロジェクト管理
PMBOKを勉強しているとプロジェクト管理には多くの項目があり、コミュニケーション管理はその1つと位置付けられています。
プロジェクトを成功させるために欠かせない管理項目としてPMBOKがあげているが、次の項目です。
品質管理
コスト管理
納期管理
スコープ管理
要員管理
コミュニケーション管理
リスク管理
調達管理
ステークホルダー管理
統合管理
これら10の項目のそれぞれに計画(書)を作ってから実行に移すように、とPMBOKは教えています。
コミュニケーション管理にも、
・計画
・実行
・監視・コントロール
のプロセスがある、という具合で「なんだかとっても大変」です。
どの管理項目も具体的にやることはコミュニケーションである
多くの管理項目を見るとたしかに「とても大変」という気がします。
しかし、プロジェクト管理の各項目は結局、コミュニケーションの取り方をプロジェクトの各局面に当てたものではないでしょうか?
例えばスコープ管理は、WBSで具体化されていくタスクを指示し、報告させ、問題があれば相談する、という管理です。これはコミュニケーション以外の何物でもありません。
ツールを使ってスコープを可視化するのも、要件漏れがないようにクライアントとコミュニケーションを取るためです。
つまりプロジェクト管理とは、つきつめるとPMとチームメンバー・関係者のコミュニケーションを良好に保ち、認識のズレ・行動のズレを予防する行為だということができます。
プロジェクト管理を楽にするには、メンバーにとって「報告が楽しくなる」工夫をすること
コミュニケーションをうっとおしがっているメンバーを管理するのは大変ですが、コミュケ―ションが楽しくなれば管理も楽になります。
- 仕事は楽しくやらないと良いアイディアは浮かばない
- やらされ感のない管理ツールへの積極参加がチームを活性化する
- wikiをみんなで使おう
仕事は楽しくやらないと良いアイディアは浮かばない
メンバーにとってイライラしながら「報告を上げろ」と言ってくるPMも、心配そうな顔つきで進捗を聞きに来るPLもうっとおしい存在です。
PMはPMで「ツールになかなか入力してくれない」「データ更新が遅くて困る」と不満を持ちます。
こんな関係が続くとプロジェクトが胸突き八丁にさしかかる頃には、メンバーには疲労が溜まり、PMはイライラを募らせてチームの雰囲気はピリピリしたものになります。
仕事はシンドイだけで、ちっとも楽しくなくなるのです。しかし、これは良いアイディアが浮かぶ環境ではありません。
こんなことになるのは、もしかすると仕事の「見える化」「共有化」をするはずの管理ツールが、仕事の邪魔をしているのかもしれません。
ツールを使うつもりが、いつの間にかツールに使われている可能性があります。
やらされ感のない管理ツールへの積極参加がチームを活性化する
PMが仕事の「一元化」をしようと思って便利な機能がたくさんついた管理ツールを導入しても、メンバーにとって入力がめんどうな「使いづらい」ツールでは、ガソリンの入っていない高級車のようなものでエンジンがかかりません。
管理ツールとはいっても、メンバーにとって使いやすく便利なものでなくては、情報は還流せず、結局「自分のやっていることしか見えない」ことになります。
こういう「タコツボ型」の進行でプロジェクトのあちこちにブラックボックスを作らないためのツールなのですから、管理ツールはまずメンバーにとっての使いやすさが何より重要です。
wikiをみんなで使おう
みんなで作るweb上の百科事典ウィキペディアで有名なwikiは、メンバーのだれもが参加、編集できる情報共有ツールです。管理ツールのBacklogではwiki機能を内蔵しています。
wikiに納められる文書はプロジェクト計画書などお堅いものが多いイメージですが、PMはみずから少し柔らかい文章を登録して、閲覧率を上げるとともに、メンバーの「編集への参加」を促がしましょう。
日本経済新聞的なwikiから週刊文春的なwikiにするのです。公式声明的な報告だけでなく本音の独り言も登録OKにすれば、シンドイ仕事を抱える中でもチームの雰囲気が柔らかくなります。
PMはメンバーの本音からリスク管理に必要な情報を得ることもあるはずです。リンク機能を使えば面白い「プロジェクト本音百科事典」になるかもしれません。
チャットでは時系列の中に埋もれてしまうメンバーの声を、wikiの中で共有財産として生かせないかをぜひ考えてみてください。
プロジェクト会議の後のあの徒労感はなんだろう
会議の後に「時間の無駄だった」「早く仕事に戻らなくちゃ」と思わない会議はまれではないでしょうか。
それは、会議のほとんどの時間が自分に関係のない話に終始しているからです。「全員集めるなよ」という気がするのももっともです。
プロジェクトマネジメントについて示唆に富む発言をする「プロジェクト工学」の後藤洋平氏は、プロジェクト会議を有意義なものにする方法について次のように述べています。
「定例会のその場でなく、会議を開催する前に、課題を洗い出し、解決策を講じ、解決のシナリオを立てる」
(引用元:炎上しないプロジェクトでは「定例会議」をこうやって回している)
これは?!と思って続きを読もうとしたら「この続きは会員限定です」となっていたので筆者は未読なのですが、ナルホドと思わせるものがあります。
日頃のコミュニケーションが活発で有意義なものなら、会議の開催の前に課題は見えているはずだし、PMたるものその解決の方向やシナリオがある程度見えていなければなりません。
会議の席で「さて、これまでの進捗で何か問題はありませんか?」と聞くようではそれまでのプロジェクト管理(コミュニケーション管理)はどうなっているのだと言われてもしかたありませんね。
プロジェクト管理 まとめ
プロジェクト管理とは、つまるところコミュニケーション管理です。
PMBOKの緻密に構造化された管理項目をながめて茫然自失してまったPMは、そう思い直すことで元気が出るはずです。
コミュケ―ション管理でもっとも重要なのは、メンバーが喜んで参加するようなコミュニケーションのあり方を何とか工夫し、ひねりだすことです。それがPMの役目であり、腕の見せ所と言えます。