スタートアップの採用で、欲しい人材に「御社に賭ける」と言わせる口説き方

スタートアップ企業が採用を考えるのは、事業が軌道に乗りかかったときですね。

立ち上げメンバーだけで暗中模索のアウトライン造りをしていた「新ビジネス」に方向性が見えたときに、どんな人手が必要かも見えてきます。

それは、資金調達の目途がついたタイミングと重なっていることも多いはずです。

人を雇うにはお金もかかるし、手間もかかります。お金にも時間にも余裕がないスタートアップ企業は、最初の採用で失敗しているゆとりはありません。

この記事では、大切な「スタートダッシュ人材」を採用するときにどんな点に注意すべきかを考えます。

スタートアップの採用は「投資の勧誘」と同じ

スタートアップ企業が資金調達に苦労するのは、目論んでいる新しいビジネスの意味や成長したときの姿を投資家にイメージしてもらうのが難しいからです。

人材の採用でも、まったく同じことが言えます。海のものとも山のものとも分からない会社に「賭けてみませんか」と口説くのは簡単ではありません。

  • 何を創ろうとしているかを的確に語る
  • 何ができる人が欲しいかをクリアにする
  • 本当にできる人かどうかを見極める

何を創ろうとしているかを的確に語る

スタートアップ企業の採用を支援する株式会社プロコミット代表の清水隆史氏は、スタートアップ企業によくある面接風景を「マンションの一室に訪問して靴からスリッパに履き替えて」と表現しています。(引用元:https://hrnote.jp/contents/b-contents-5848/)

あなたの会社もまだマンションの一室がオフィスなのかもしれません。そんな所に面接に来る人が知りたいと思っているのは、会社の「今」ではなく「これから」何をしようとしているかです。

面接をする側は、的確なプレゼンテーションで会社の未来をイメージしてもらうことが何よりも重要です。それはある意味で「夢を語る」ことに過ぎないのですが、応募者としてもいっしょにマンションの一室からスタートするには、夢がなくてはやってられません。

清水市は「採用で人材を厳選するには、自社がモテてるようになってから」とも言っています。(引用元:同上)スタートアップ企業は、まだ見てくれは良くない分、口説き上手でなくてはいけません。

何ができる人が欲しいかをクリアにする

スタートアップの採用にミスマッチをしている余裕はありません。

採用側が「何ができる人が必要なのか」を意識していることはもちろん、採用される側にそれを明確に伝えることが必要です。

応募者が「それなら自分にぴったりの仕事だ」と思えば目の輝きが違ってくるはずです。それを見逃さないことが大切です。

本当にできる人かどうかを見極める

さらに、「入社したら,まずこれをやってほしい」という具体的な話に入って行けば、応募者の仕事に対するイメージがより明確になります。

やってほしいことをできる人なら、それまで聞き役に回って少なかった口数が多くなるはずです。そこで膝を乗り出して仕事について具体的に語れる人が「求める人材」です。

このように水を向けても話に乗ってこないようなら、その能力に「?」がつくと言ってよいでしょう。

候補者をどこで探せばいいのか

採用方針は決まったとしても、面接に来てくれる候補者がいなければ口説きようがありません。

ネームバリューがなく、採用資金も潤沢ではないスタートアップは、候補者をどこで見つけたらよいのでしょうか?

  • 立ち上げメンバーの人脈からハントする
  • ダイレクトリクルーティング用のデータベースを使う
  • スターアップの採用に強いエージェントを利用する

立ち上げメンバーの人脈からハントする

採用を検討するようになったスタートアップ企業には、少なくとも2~3人の創業メンバーがいるはずです。

そのメンバーたちの前職や関係会社の知人に「これという人材」を紹介してもらうのが、一番の近道です。

紹介で浮上した候補者なら、能力や性格、働きぶりなどについてもある程度の情報が得られるので、大きく外れる確率は低くなります。

ダイレクトリクルーティング用のデータベースを使う

2010年頃から採用母集団にメールなどで直接アプローチできるデータベースを提供する会社が増えてきました。

採用エージェントに紹介を頼む従来の採用手法では、優秀な人材は大企業に優先的に紹介され、ネームバリューのないスタートアップ企業は後回しになるのが通常です。

しかし、ダイレクトリクルーティングなら、自社の魅力や夢を直接データ登録者に語りかけることができます。自社の仕事をしっかりブランディングできている口説き上手なスタートアップ企業なら、優秀な人材に興味を持ってもらうことも可能です。

費用面でも、年収の三分の一をエージェントに支払うような従来の手法よりも安く済ますことができます。

データベースは提供する会社によって得意分野が違うので、求める人材が登録しているものを厳選しましょう。

スターアップの採用に強いエージェントを利用する

最近は、スタートアップの人材紹介に特化した採用エージェントも増えてきました。

採用費用をまかなう余裕がある場合は、そういうエージェントを利用すれば高確率でヒットする人材を紹介してもらえます。

その採用エージェントそのものがスタートアップ企業の仲間であることも多いので、従来からのエージェントの担当者よりは、話も合うはずです。

採用活動の注意点

まだ採用に慣れていないスタートアップ企業は、次のような点も注意しましょう。

  • 相性の良い、好きになれそうな人を選ぶ
  • 試用期間を設ける
  • 機密保持契約を交わす

相性の良い、好きになれそうな人を選ぶ

スタートアップの忙しいときに、なんとなくウマが合わない、好きになれないタイプの人間といっしょに仕事をするのは疲れます。

同じ失敗でも、許せる人と許せない人がいます。ハプニングやトラブルも多いのがスタートアップなので、いっしょに仕事をしていてストレスが溜まらない相性の良さも大切です。

試用期間を設ける

いくらジャストマッチの人材だと思っても、実際にいっしょに仕事をして見ないと分らない面があります。

一般的な「3ケ月の試用期間」を設けることは、スタートアップ企業でも必要です。

入社する側にとっても試用期間は、緊張感を持って仕事をするうえで役に立ちます。

機密保持契約を交わす

アイディアが勝負のスタートアップ企業では、機密情報の保持は生命線に関わることがあります。

機密保持契約があれば、他社から変な誘いがかかったときについ乗ってしまうのを抑止することができます。

スタートアップの採用で取り組むべき課題

スタートアップの最初の採用では、取り組むべき課題がいろいろあります。

  • 立ち上げメンバーで採用プロジェクトを組む
  • ホームページを開設して採用コーナーを設ける
  • SNSを活用してHPのアクセスを増やす
  • 内定者を逃がさないクロージング

立ち上げメンバーで採用プロジェクトを組む

多忙なスタートアップ時期でも「採用は社長のA君に任す」あるいは「専務のB君に任す」というのは良くありません。

立ち上げメンバーが3人なら3人全員でプロジェクトを組み、採用戦略を立てて、それに基づいて採用活動を進めましょう。

戦略に含まれる項目は次のようなものです。

欲しい人材像、ペルソナの設定
候補者に訴求できる自社の魅力の洗い出し
提供可能な待遇(役職・給与)の確認
手持ち人脈の洗い出し
採用予算の確認
採用チャネルの決定
候補者へのアプローチ作戦
おおまかな採用日程

これらの項目を話し合って、共通理解のもとに採用活動を進めます。

キーパーソンの全員が採用に関する経験・苦労を共にすることは、今後の採用活動のためだけでなく、企業運営の貴重なノウハウになります。

ホームページを開設して採用コーナーを設ける

低予算で欲しい人材を採用したいスタートアップ企業にとっては、自社HPから候補者が流入してくれれば有難いことです。

HPを作ること、そこに採用コーナーを作ることで、自社のアピールポイントや求める人材のペルソナがより明確になるメリットもあります。

HPへのアクセスから候補者のメールアドレスをゲットできたら、メールでの「ラブレター作戦」を開始します。

SNSを活用してHPのアクセスを増やす

HPへのアクセスを増やすには、SNSとくにTwitterの活用が不可欠です。

20代の約60%が利用しているTwitterで「拡散ネタ」をものにすることができれば、一気に採用母集団が増えるのも夢ではありません。

自社の業務にユニークな動画ネタになるものがあれば、YouTubeでのアピールも拡散の可能性があります。

沖縄のローカル芸人が「沖縄の海をバックに赤ふんどしで時事ネタを叫ぶ」という動画でバズって、一気に全国ネットのTVでレギュラーコーナーを持つようになったという例もあります。(サンプル:ブラック過ぎる教員の労働環境について【せやろがいおじさん 】)

単に面白いだけでなく、スタートアップ企業としてのメッセージ性がある動画なら、パズル可能性がないとは言えません。

内定者を逃がさないクロージング

知名度のないスタートアップ企業では、内定を出したからかといって必ず入社してくれるとは限りません。

クロージングは、いわばお見合い(面接)の後の結婚を前提としたお付き合いです。

デートでご馳走するだけが良いわけではないので、自社としてどんなお付き合いが可能かをよく考える必要があります。

スタートアップ採用の失敗パターン

採用の失敗では、採用できなかったことより、ミスマッチな人材を採用してしまうことの方が、ダメージは大きいものです。よくあるミスマッチ採用のパターンには次のようなものがあります。

  • スキルに惚れて人を見ない
  • 大手企業での経歴を過大評価する
  • 自社を飾りすぎて入社後に幻滅を与える

スキルに惚れて人を見ない

フリーランスのシステムエンジニアを採用したときなどに、「スキルは申し分ないが、どうもいっしょに仕事をしていて楽しくない」ということがあります。

なにかと苦労の多いスタートアップでは、長時間いっしょにいるとイライラしてくるようなメンバーとは長続きしないものです。

面接のときに候補者のスキルだけに着目しているとおかしやすい失敗です。

大手企業での経歴を過大評価する

反対に、大手企業でのキャリアに目を奪われると、個人のスキルを過大評価してしまうことがあります。

大手企業でどういうプロジェクトに携わったかということだけでなく、そこでどんな役割を担ったかを具体的に聞いてみることが大切です。

なぜなら、大手企業では仕事の邪魔になる人が多少いても仕事は進むものなので、候補者がその邪魔者の一人だったかもしれないからです。

自社を飾りすぎて入社後に幻滅を与える

「口説き上手になろう」と言いましたが、自社をあまり飾って語りすぎると、入社後に「なんだ」と思われます。

ホラ話が現実になるのがスタートアップの醍醐味とはいえ、「騙された感」を抱かせるような飾り方をしてはいけません。

まとめ

スタートアップが軌道に乗りかけたときに良い人材を採用できれば、事業が急成長するのも夢ではありません。

まだ無名のスタートアップ企業は、候補者にいかに「会社の明日」を魅力的に語れるかが採用の鍵になります。

また、やってほしい仕事を具体的に伝えて、候補者に「この会社は自分を必要としている」と思わせることも重要です。