スタートアップの広報とは、製品・サービスの「物語」をつくること

広報とは、ストレートな広告ではなく、メディアの記事やSNS上の口コミなど、第三者が「これはイイ!」と評価・拡散してくれることを促す行為です。

知名度がなく、広告予算がないスタートアップ企業にとって、こんなありがたいことはありません。

広報が上手くいけば、「資金を集める」「人を採用する」「製品を販売する」という目標がお金をかけずに達成できます。

しかし、広報室などもちろんないスタートアップ企業は、誰が広報をしたら良いのでしょうか?

そもそも具体的に何をするのが広報なのでしょうか?

この記事では、スタートアップ企業にとっての「第一歩からの広報」を分かりやすく解説します。

スタートアップ企業にとって広報とは

広報といえば、プレスリリースを作ってメディアに配布することが先ず思い浮かびます。

もちろんそれだけが広報ではありませんが、プレスリリースも作っていない広報というのはありません。

それでは、取材の申し込みを受けたときに「わが社には取材していただくような面白い話はありせません」と言うのと同じです。

「広報とは」という話が抽象的にならないように、広報に不可欠なプレスリリースから広報の定義を考えてみましょう。

  • 記事にしたくなるようなプレスリリースは少ない
  • 広報のネタ作りとは
  • 広報は物語作りから始めよう

記事にしたくなるようなプレスリリースは少ない

筆者は以前タブロイド版の夕刊紙の記者をしていたことがあり、編集部にはいろいろな企業から毎日4~5通のプレスリリースが郵送されてきました。

記者にとってプレスリリースの封筒を開くのは楽しいものです。面白いネタがあれば「新商品コーナー」の記事になるし、さらに興味を魅かれたら取材してもっと大きい記事にすることもできるからです。

しかし、実際にはA4用紙2~3枚のプレスリリースには、めったに面白いものはありません。というか、どこが面白いのか(便利なのか、楽しいのか、新しいのか)よく分らないものが多いのです。

記者にとってありがたいプレスリリースとは、「記事の見出しをつけるのに苦労しない資料」「資料の文章をそのまま記事にしたくなるような、商品のポイントがよく分かる資料」です。

広報のネタ作りとは

プレスリリースを作るときは「話のネタ」を提供するつもりでないといけません。

スペックはこれこれなので、どこが面白いかはそちらで判断してください、というのではなかなか取り上げてもらえません。

スタートアップした企業には「これはイケる」という製品やサービスのビジョンとプランがあります。その試作品やモデルもあるでしょう。

しかし、その価値(便利さ、楽しさ)は、世間の誰にも知られていない新しいものです。そんな見知らぬ価値に気づいてもらうには、理屈で説明しようとしても聞いてくれません。

見知らぬ製品やサービに人が(先ずは記者が)振り向いてくれるのは、そこに興味を引かれるストーリー(物語)があるときです。

広報は物語作りから始めよう

一時期出版界で「マンガ日本経済入門」とか「マンガ日本の歴史」などの「マンガ〇〇」が流行ったことがありました。

ふだん固い経済書や歴史書を手に取らない人の興味を喚起して、ベストセラーになったものも少なくありません。

抽象的な言葉でごまかせないのがマンガです。経済をマンガにするのは簡単ではありません。

スタートアップ企業のプレスリリース作りは、自社のビジョンをストーリーマンガにするくらいの気構えで取り組まないと、多くの人に振り向いてもらうことはできません。

そして、そのような視覚化、物語作りこそが広報そのものなのです。

スタートアップ企業の広報戦略

スタートアップの広報戦略に必要なのは、具体的に言えば次のようなことになります。

  • 会社と事業をいっぺん外から見てみよう
  • 物語を語りかける相手のペルソナを絞り込もう
  • コミュケ―ションするチャネルを選定しよう
  • チャネルに合わせた物語を展開しよう

会社と事業をいっぺん外から見てみよう

会社の外側の人に「面白い話」を提供しようと思ったら、半分外側の人間になって自社のビジョンを見直してみる必要があります。

中途半端な専門家の話が分かりにくいのは、素人が知らない専門用語を得意そうに使うからです。

イノベーションを起こすような仕事をする専門家は、専門用語やその言い回しの核にある「素人の生の感情や体験」を大切にし、見失わないように気をつけます。

スタートアップで当面の課題に没頭していると、自社のビジョンと第三者がそれをどう見るかの距離感を見誤ることがあります。

広報をしようと思ったら、半分「何も知らない外側の人間」になってみることが必要です。

物語を語りかける相手のペルソナを絞り込もう

広報を物語にしようと思ったら、ターゲット像を「40代の中堅企業の管理職サラリーマン」とか「20代後半の婚活中のビジネスウーマン」と設定するくらいでは、まだ「絵にする」ことができません。

その40代の顔にヒゲを描くかどうかで、彼が勤めている企業のカラーがまったく違ってきます。

どんな家に住んで、どんな車に乗っているのか、週末には何をしているのか、などのいわゆるペルソナの設定も、絵にしようと思うと言葉ではごまかせた「具体性のなさ」が露呈します。

ペルソナは絞り込むほど映像はシャープになります。絞り込んで対象範囲が狭くなることを心配する必要はありません。広報が心に届くのはピントが絞られたペルソナに対してだけです。

コミュニケ―ションするチャネルを選定しよう

ターゲットを絵にすることができたら、そのターゲットが利用しているコミュニケーションツールも想定することが可能です。

どんな新聞や雑誌を読み、どの程度のパソコンスキルがあり、どんなSNSを利用しているかを想定して、広報チャネルを選定しましょう。

ニュースリリースを送るのは日本経済新聞か読売新聞か(これは両方送れば良いのですが)、それとも特定の地方の地方紙なのかを考えます。特定のジャンルの雑誌に送るのが効果的な場合もあるでしょう。

現在は、Facebook、Twitter、LINE、インスタグラム、YouTubeなどのSNSも活用が欠かせない広報チャネルです。ペルソナの崇拝するインフルエンサーが注目するように広報ができれば大成功です。

チャネルに合わせた物語を展開しよう

チャネルを選定したら、それぞれのチャネルに合わせたネタ作り、物語作りをして、それを展開していきます。

前述したようにプレスリリースひとつを作るのでも、効果的なものにするのは簡単ではありません。自社のホームページ作りやSNSでの仕掛けも、良く練り込まれたものでないと目に見える効果、突出した効果は期待できません。

スタートアップの広報は誰がやるの?

忙しく、人手に余裕のないスタートアップ企業で広報は誰がやったらよいのでしょうか?

  • まず社長がストーリーテラーになるしかない
  • 専門家には「依頼する」のではなく「応援」を求める

まず社長がストーリーテラーになるしかない

スタートアップ企業の広報で実績をあげた広報マンをスカウトする、ということが現実的ではない場合は、スタートアップのビジョンにもっとも情熱を傾けている社長がストーリーテラーになるしかありません。

忙しくて手が回らないときは、広報はしばらくあきらめましょう。中途半端におざなりなプレスリリースを作っても、効果は望めません。Twitterも本音や本気がないつぶやきをだらだら流しても、パズルことはありません。

しかし、なるべく早く本気で広報に取り組む必要があります。社長一人では孤独な奮闘になるので、立ち上げメンバーが全員参加したプロジェクトを組んで社長のストーリーテリングを手助けする必要があります。

専門家には「依頼する」のではなく「応援」を求める

社長も立ち上げメンバーも、広報には素人な場合がほとんどでしょうから、本気でやろうと思ったらある程度専門家の手助けが必要です。

広報の専属要員を雇うことは難しいし、雇ってみたけど優秀な人材ではなかったというリスクもあるので、外部スタッフとして契約するのが現実的です。

しかし、外部の専門家に依頼して任せるという態度では、力のある専門家だったとしても、その力を十分発揮することはできません。

ターゲットの心に響く物語は、外部スタッフだけでは作りれないからです。社長をはじめとする立ち上げメンバーの熱い想いを形する応援をしてもらうという心構えが大切です。

その心構えがあれば、専門家との契約が終了したときに、企業内に広報のノウハウが残るというメリットもあります。

広報のノウハウとは何か

専門家の手を借りてでもスタートアップ企業が手に入れたい、広報のノウハウ広報とはどんなものでしょうか?

  • プレスリリースの表現力
  • メディアの人脈
  • 取材要請と取材対応
  • SNSの可能性を探り続ける

プレスリリースの表現力

事業のビジョンがあることと、それを分かりやすく表現するのは別物です。

顧客が自社の製品やサービスを使うシーンをイメージして、それを言葉にするノウハウ、:言語能力をつけていくことが、広報には必要です。

メディアの人脈

プレスリリースを送るにはメディアのリストが要ります。ターゲットに届くメディアを探ってそのリストを充実させていきましょう。

一度コンタクトができたメディアの記者とは、それをwin-winの関係で維持して人脈にすることが重要です。

記者には記事のネタを提供するだけでなく、記者からイベントなどの広報機会の情報を得ることもあります。

取材要請と取材対応

スタートアップのプロセスの中で、これはというときにメディアに取材要請をして、適切な取材対応をすることは非常に重要です。

知っている記者がいなくてもどう取材要請をしたら良いかを、経験しながら学んでいきましょう。

SNSの可能性を探り続ける

現代の広報にはSNSの利用が不可欠で、大きな可能性を秘めていることは間違いありません。

しかし、それを具体的にどう使うかをいちがいに言うことはできません。

ターゲットのペルソナが設定できたら、#(ハッシュタグ)からターゲットの嗜好をリサーチするのも広報の仕事に役立ちます。

インフルエンサーに注目される情報発信というテーマを設定するのも有意義かもしれません。

SNSをどう使うかは、広報の非常に重要なノウハウです。

スタートアップ広報 まとめ

スタートアップのビジョンを狙うターゲットに周知してもらう上で、広報の重要性はいくら強調してもしすぎにはなりません。

広報の本質は「物語作り」にあります。また、本気で取り組まないとターゲットの心に届く物語にはならないしんどい仕事です。

専門家の手を借りることが必要な場面もありますが、丸投げで依頼できることではありません。