エンジニアの採用に苦戦する企業の採用戦略見直しのポイント

ITエンジニアの採用が急務なのに「求人をしてもコストがかさむばかりで成果はゼロ」と苦戦を強いられている企業が増えています。

そして、こんな状況は今後ますます加速すると考えられます。

しかし、大企業ではなくとも求めるエンジニアの採用に成功している企業はあります。

この記事では、エンジニアを採用できる企業とでき無い企業はどこが違うのか、エンジニアを採用できる企業になるためには何が必要なのかを、分かりやすく解説しています。ぜひ参考にしてください。

IТエンジニアの求人市場の動向

コロナ禍によるリモートワーク、eラーニングの進展、キャッシュレス決済の普及など、企業、教育現場、家庭のIТ化の波は増々大きくなっています。

令和の時代は仕事においてもプライベートでも、コンピュータが関与していない場面はほとんどなくなると言えるのかもしれません。

国は企業に対して「2025年までにDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進しないとデジタル競争の敗者になる」と警鐘を鳴らしています。(経済産業省「DXレポート」)

こんな中で、IТエンジニアの需要は高まる一方で、ただでさえ売り手市場の求人で、企業はIТ人材の獲得に苦戦せざるを得ません。

経済産業省は「IT 人材需給に関する調査」で、2030年までに日本は、最大78.7万人のIT人材が不足すると予測しています。

エンジニアの採用に苦戦する理由

上記のように、エンジニアの絶対数が不足している現状で、多くの企業が採用に苦戦するのは当然ですが、それを大前提としたうえで、「苦戦した結果、獲れなかった」となる理由(原因)はどこにあるのでしょうか?

  • 採用担当者のIТ知識が不足している
  • 採用側にエンジニアのワークスタイルへの理解がない
  • 従来の採用手法に頼り、工夫を加えていない

 

採用担当者のIТ知識が不足している

エンジニアの採用では例えば、近々立ち上げるプロジェクトで特定のプログラミング言語のスキルが高い人材が必要というようなケースがあります。

そんなときの採用面接で人事担当者が、候補者の転職動機や人柄のチェックに重きを置くような質問をしても、マッチした人材を獲得することはできません。

これは極端な例としても、エンジニアの採用では人事担当者にも、現場が要求している人材を見きわめるために一定のIТ知識が求められます。

候補者から見ても、面接でピントのずれたことばかり聞かれると、本当に自分のスキルが求められているのかどうか不安になり、最初からミスマッチを感じることになります。

 

採用側にエンジニアのワークスタイルへの理解がない

タイムレコーダーで勤怠管理をするような旧態然とした人事意識では、エンジニアのハートをつかむのは難しいでしょう。

エンジニアは職人気質の人が多く、仕事さえすれば後は好きにさしてほしい、というのが本音です。ネクタイをして出勤しろと言われて会社を辞めた、などという例もあったそうです。

また、正社員での採用をエンジニアが望んでいるとは限りません。プロジェクト完成までの契約社員として採用し、その後お互いにマッチしていると感じたら正社員に、という形が理想なのかもしれません。

プロジェクトマネジャーからプログラマーまで、エンジニアにも色々な立場がありますが、総じてお仕着せのワークスタイには抵抗があるので、その点の理解がないと採用には苦戦します。

 

従来の採用手法に頼り、工夫を加えていない

求人数に対して求職者数が絶対的に不足しているエンジニア市場では、求人広告や人材紹介で自社を際立たせるのは簡単ではありません。

求人広告や人材紹介がダメだというのではありませんが、その効果的な利用には一工夫も二工夫も必要です。

媒体のエージェントの取材に応えてアピール文面を作成してもらう、というような受け身の利用では、費用をかけても「採用ゼロ」の結果に終わる可能性が大です。

欲しいエンジニアを獲得するためのポイント

これまで苦戦を続けた企業がエンジニアの採用に成功するためのポイントは次の3点です。

  • 人材要件を明確に : 人事担当だけで採用しようと思わない
  • 募集要項の見直し : 柔軟なワークスタイルを用意する
  • 採用手法・ツールの見直し : 待ちの採用から攻めの採用へ

 

人材要件を明確に : 人事担当だけで採用しようと思わない

「野球部員求む」より「サード守備経験者、俊足の野球部員求む」の方が、該当する人に「それは私だ」という気持ちを起こさせると思いませんか?

特別のイケメン(大企業)ならともかく、中小企業からのラブコールは「付き合ってください」や「君をきっと幸せにします」だけでは「ごめんなさい」と言われる確率が大です。

数ある求人広告の中で自社を際立たせるには、まず人材要件が明確かつ具体的でなければなりません。

人材要件を明確に具体的にするには、人事系の採用スタッフだけでは無理があります。面接、面談での会話も深まりません。

欲しい人材の要件をよく把握している開発現場のスタッフが、面接はもちろん、採用活動の最初の段階から加わることが重要です。

 

募集要項の見直し : 柔軟なワークスタイルを用意する

リリースの締め切りには徹夜しでも間に合わすのが職人(エンジニア)なのですから、ふだんのワークスタイルにまで束縛が多いと、優秀なエンジニアにそっぽを向かれる可能性があります。

リモートワークはもちろん、副業もOKというくらいの「働きやすさ」が功を奏することもあります。

正社員にこだわらない募集も、今後ますます必要になっていきそうです。

「働き方改革」は採用担当者の一存で決めるわけにはいかないので、経営者も参加して従来の働き方を見直し、新しい仕組みづくりを進める必要があります。

 

採用手法・ツールの見直し : 待ちの採用から攻めの採用へ

転職サイト、人材紹介の利用の工夫の必要性については上述しましたが、もう一歩進めて最近話題になっている「ダイレクトリクルーティング」や「リファラル採用」も研究・検討することが必要です。

「攻めの採用」といわれるダイレクトリクルーティングは、募集広告への候補者反応やエージェントの紹介を待つのではなく、人材母集団に企業からアプローチする採用手法です。

レンタルした母集団データにメールをするという方法もあるし、自社サイトやSNSを利用した独自のコンテンツ作りで「攻める」方法もあります。

リファラル採用とは、自社の社員に人材を紹介してもらう採用方法のことです。エンジニア採用なら、自社のエンジニアに協力を求めて、その友人や友人の友人などのつてによって人材を探します。

リファラル採用のメリットは、何が何でも獲るという求人側の顔を隠して、世間話からフランクな姿勢で人材探しができることです。

企業の外向きの顔だけでなく、素顔や弱点も理解している社員が「平場」で接することで、採用後のミスマッチが少なくなる効果もあります。

エンジニアとのマッチングの確率を高めるコツ

やっとエンジニアの採用に成功しても、会社とマッチしない人材ではお互いとって不幸です。エンジニアとのマッチングの確率を高めるには次のようなコツがあります。

  • 従来の面接の評価基準を見直す
  • 自社の姿を飾らずに見せる
  • 経営者も参加して全社体制で採用に臨む

 

従来の面接の評価基準を見直す

これまでの採用面接で常識とされていた下記のような評価ポイントは、エンジニアの採用ではほとんど無意味か、むしろ優秀な人材を見逃す原因になりかねません。

  • 志望動機
  • 転職理由
  • 明るさ・前向きの姿勢
  • 服装・頭髪は清潔感
  • 面接時のマナー
  • 自己PRの巧拙・コミュニケーション能力

長髪で、暗い顔をして、ハキハキしない受け答えをする面接者が、優れたアイディアを生みだすエンジニアかもしれません。

伝統的な採用基準やこれまでの望ましい社員像にこだわっていると、採用で苦戦する状況を打開することはできません。

エンジニアだけを特別扱いにするわけに行かないというなら、むしろ全社員の採用基準を見直すべきタイミングなのかもしれません。

 

自社の姿を飾らずに見せる

採用パンフレットの「社長の挨拶」が、他の会社と似たりよったりの、高邁な理念や理想を語るだけでは、ターゲットに会社の特徴や実像を理解してもらことはできません。

「先輩社員の声」も優等生のやる気とやりがいの合唱では、読み飛ばされるだけです。

会社の将来像や夢は必要ですが、これまで歩んできた歴史や現状の課題を含め多ストーリーでないと、夢にもリアリティが感じられません。

入社後のミスマッチを防ぐには、厚化粧をした会社ではなく、素顔の会社を見せることが肝心です。

 

経営者も参加して全社体制で採用に臨む

人事系の採用担当者だけでなく、人材要件のスペックを心得た開発現場のスタッフが加わったとしても、経営者が採用にノータッチでは、大胆な採用戦略の策定や思い切った採用ブランディングはできません。

世の中全体がIT化を加速する中で、システム開発のアイディアやスピードが企業の死活を制する場面はどんどん多くなります。そのカギを握るエンジニアの採用には、経営者も本腰を入れるべきで、現場で汗をかくべきでしょう。

まとめ

採用基準においても、採用手段においても、従来の形にこだわっていたのでは、苦戦の状況を打破することはできません。

採用戦略の見直しでとくに重要なのは、エンジニアを採用するにはエンジニアの力を借りる必要があること、経営者も採用に積極的に関わることの2点です。

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