MVP(Minimum Viable Product)とは?その役割とメリットについて解説
スタートアップに興味を持っている方なら、MVP(Minimum Viable Product)という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
開発に長期間かけることができないスタートアップ企業が、ミニマムな装備で小回りが利く検証することは、成功の必須条件といってもよいでしょう。
しかし「MVPとは実際どんな概念なのか」についての理解は、スタートアップに携わる人であっても十分ではない面があります。
そこでこの記事では、MVPという概念を分かりやすく解説してます。ぜひ参考にしてください。
MVP(Minimum Viable Product)とはなにか
MVP(Minimum Viable Product)とは「それで機能する(実用に供せる)もっともシンブルな製品」のことです。viableとは「生きていける」「存立可能な」という意味です。
スタートアップ企業にとっていかに早く市場へプロダクトが出せるかどうかは死活問題。
MVPをつくり、自分たちの製品が市場に受け入れられるのかを最小労力で検証することは極めて重要なのです。
Steve BlankとEric Riesにより提唱
MVPの概念は、シリコンバレーの起業家Steve Blank(1953年生まれ)が提唱したもです。
Blankはベンチャーキャピタルから得た3,500万ドルの資金をプロダクトのリリース前に使い果たすなどの経験を通じてMVPという考えに到達しました。最終的に彼自身は数々のベンチャーを成功させて1999年にハッピーリタイアしました。
Eric RiesはBlankの教えを受けて、その理論を顧客開発の手法である「リーンスタートアップ」として一般化しました。彼もやはり最初のスタートアップで失敗した経験を持っています。
リーンスタートアップとは
リーンスタートアップのリーン(lean)とは「脂肪が少ない、細身の」という意味です。
今では「リーンスタートアップ」という著書はスタートアップ企業にとってのバイブル書となっております。
細身のスタートアップとは、作り込んだプロダクト(製品)で満を持して出発するのではなく、とりあえず使えそうなシンプルな機能のプロダクトで出発することです。
今では日本でも有名になったシリコンバレーのユニコーン企業「Airbnb」もMVPを使い大成功を果たしました。
リーンスタートアップでリリースされるプロダクトがすなわちMVP(Minimum Viable Product)です。
それでは、脂肪や贅肉のないこのMVPには、スタートアップ企業にとってどんなメリットがあるのでしょうか。
MVPを実践するメリット
MVPのメリットは、顧客から迅速なフィードバックを得て、高速の開発サイクルを回すことができることです。
- 最小限のコストでPMF検証が可能
- 圧倒的なスピード感でPMF検証が可能
- 早期収益化が見込める
最小限のコストでPMF検証が可能
これまで市場に存在しなかったプロダクトを世に問うのがスタートアップの真骨頂ですが、そういう「新サービス」に市場がどう反応するかはなかなか読み切れるものではありません。
作る側の熱意が高いほど思い込みも強くなり、想定外の事態が発生する可能性があります。そんなときは、時間とお金をかけて作り込んだプロダクトほど「やり直し」の負担が重くなります。
しかし、MVPならスタートアップまでのコストが小さく、余裕のある状態でPMF(Product Market Fit)つまり「市場の適合性」の検証を始めることができます。
※PMFについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。
どんなに作り込んだ(と作る側が思う)プロダクトでもPMF検証は必要です。
使えるだけの時間とお金をつぎ込んだ状態で船出させると、なにかあって港に戻ろうとしても戻るだけの燃料もないということになるかもしれません。
圧倒的なスピード感でPMF検証が可能
プロダクトが完成品に近い複雑な構造をしているほど、PMFの検証も複雑になります。設計を見直して再構築するにも時間がかかります。
家の建築にたとえるなら、棟上げの段階で使い勝手を検証する方が、内装を整え,什器を搬入してから検証するより、はるかにスピーディです。
枝葉末節に惑わされず、重要な骨組みを検証するためにも便利です。
早期収益化が見込める
MVPならリリースまでにかかるコスト(時間とお金)が小さく、無料試用期間などを設けて、改善のための時間をかけたとしても、早期に収益化が見込めます。
作り込んだプロダクトは、一気に市場を席巻して何億という収益を上げる可能性もありますが、思ったほど売れないときに困ります。
コストをかけて作り込み、期待を膨らませてリリースしたプロダクトほど、想定外の事態が生じると収益化までに時間がかかり、それまで持ちこたえられないという事態も生じがちです。
MVPを実践するプロセス・方法
多くの起業家が引用しているエヴァン・ウィリアムズ(twitterなど数多くのスタートアップを成功させた)の有名な比喩に次のようなものがあります。
「カリフォルニアからハワイに向かう航空機は、飛んでいる間の99%誤った航路を進んでいる。それでも目的地に着くのは、常に航路を修正しているからだ。成功したスターアップにも同じことが言える。もし彼らが不断の進路修正を行なわなかったら、たぶんアラスカに着いていただろう」
では、MVPではスタートアップの進路修正をどこから始めるべきなのでしょうか?
とりあえず最初のアイデアにしたがってミニマムなプロダクトを作り、それで顧客のフィードバックをもらって修正する、と考えるのは間違いです。それでは「何がミニマムか」というスタート地点から誤る可能性が高いからです。
MVPのプロセスは、アイディアの検証や市場の選定の段階から始まる
起業家でありスタートアップについて多くの著書があるJim Brikmanは「MVPはプロダクトではなくプロセスだ」と語っています。
「あるチームがアイデアを思いつく。次に、そのコンセプトを吟味するために、最低限の実行可能な製品(MVP)を構築し、MVPにどの機能を含めるか、または除外するかについて多くの時間をかけて議論します。最後に、MVPがうまくいけば、完全に成熟した安定した製品を作ることを計画します。では、この行ないのどこが悪いのでしょうか?」
※引用元https://www.ycombinator.com/library/4Q-a-minimum-viable-product-is-not-a-product-it-s-a-process
Brikmanは、問題はこのチームがMVPのポイントを理解していないことだ、と言います。MVPとは、製品を少しでも早く出荷するための方法でないのはもちろん、MVPが製品である必要もないというのです。
MVPは何度も設計図の段階まで戻ることを想定したスタートアップで、「燃料切れ」のリスクを小さくするために、できるだけ初期のプロセスから想定されるユーザーにインタビューして、制作サイドの「思い込み」を修正することが肝要です。
まずMVPをつくる前に、著書「リーンスタートアップ」でも紹介されている「リーンキャンパス」を用い、プロダクトの前提を擦り合わせましょう。

MVPのプロセスの中でつねに考えるべき2つのこと
Brikmanは、コードを書いているときも、マーケティングプランを練っているときも、つねに次の2つの質問を自分に投げかけることを推奨します。
・私が立てた仮説の中でもっともリスクが高いものは何か
・その仮説を検証できる最小の(安上がりな)実験は何か
スタートアップの多くがハワイに行くつもりでアラスカに行ってしまうか、太平洋に沈んでしまうのは、重要な仮説の多くが思い込みであり、市場にニースがないものだからです。
出発点に戻ることが可能なできるだけ早いプロセスで、仮説を市場(顧客)にぶつけることが必要です。
顧客は、あなたが何をすべきかについて嘘を言う
MVPのプロセスでもっとも難しいのは、プロダクト(それが形になる前でも後でも)に対する顧客の感想を言葉通りには受け取れないことです。
起業家のEric Biellerは「顧客はプロダクトをどう改良すべきかについて、あなたに嘘を言う」と述べています。
「私たちはしばしば、最も要求の多かった機能を優先していましたが、それは通常、もっとも時間のかかる機能でもありました。しかし、いったんリリースされても、マトリクスが上昇することはほとんどありませんでした」
引用元:https://medium.com/@ericbieller/your-customers-are-lying-to-you-and-what-to-do-about-it-c8dc6c312d3c
このリスクを回避するには、顧客の反応のフィードバックにおいても、前章で述べた「その仮説を検証できる最小の(安上がりな)実験は何か」を考えるしかありません。
すべてのプロセスにおいて、トライ&エラーを繰り返すことができるのがリーン(細身の)プロダクトの強みだからです。
MVPの手法とその導入実例
Minimum Viable Productのミニマムを可能にする代表的な手法の代表的として、次のようなものがあります。
・オズの魔法使い
・スモークテスト
・コンシェルジュ
・プロトタイプ
これらがどんな手法で、それを用いて成功したスタートアップにどんなものがあるをご紹介します。
- オズの魔法使い「食べログ」「Zapps」
- コンシェルジュ「Airbnb」「Foodonthetable.com」
- スモークテスト「Dropbox」
- プロトタイプ「Twitter」「Instagram」
オズの魔法使い「食べログ」「Zapps」
ユーザーにはシステム化されていると見えるwebサイトなどが、実はマンパワーで操作されているのが「オズの魔法使い」と呼ばれるMVP手法です。それによって開発初期に大がかりなシステムを作るリスク(費用と時間)を小さくします。
食べログ
誰もが知っているグルメサイト「食べログ」は、最初はグルメ本の情報を手打ちでデータ化して、数十人程度のユーザー数でスタートアップしました。サイトに寄せらるユーザーからの改善要求に応えていく形で、現在の姿に成長させたのです。
Zappos
2009年に9億ドルでアマゾンが買収した靴の通販サイトZapposは「履き心地を重視する靴もウェブ通販で売れる」という挑戦的で根拠のない仮説からスタートアップしました。
そのため、創業者はサイトに注文が入ってから、実店舗にその靴を買いに行って発送するという「魔法」を使っていました。
コンシェルジュ「Airbnb」「Foodonthetable.com」
思いついたサービスを、システム化する前に生身の人間が提供するのがコンシェルジュです。
オズの魔法使いでは、システム化されたフリを装いますが、コンシェルジュはそれすらしません。
ホテルのコンシェルジュのように顧客にきめ細やかな対応をすることで、顧客も多くのフィードバックをしてくれます。顧客の意見をじかに聞くことができるのがこの手法の利点です。
Airbnb
空き部屋レンタルサイト「Airbnb」は、初期ユーザーになった家主さんに、物件の写真撮影を手伝うなどの手厚いコンシェルジュ・サービスを行ないました。
それによって、従来は週200ドルでレンタルしていた物件を週400ドルでも借り手がつくようなり、ユーザーの絶大な支持を獲得しました。
Foodonthetable.com
顧客の近所のスーパーのセール情報と顧客の食の好みから、その日の献立を考えてくれるサービスFoodonthetable.comです。
創業者はWebサイトを立ち上げる前に、スーパーに行って直接主婦に声をかけ、サービス内容を説明して、興味を示した見込み客を探しました。
さらに、見込み客に将来ウェブで行なうサービスを毎週訪問して人手で行ない、直接フィードバックしてもらいました。その際も無料ではなく10ドルの報酬を得ていたといいます。
スモークテスト「Dropbox」
スモークテストとは、電気製品の試作品に電源を入れても煙が出たりしないか確かめる、ということから来たネーミングです。
ソフトウェアの開発ではシステムが稼働するかどうかのテストのことですが、とくにMVPでは、そのサービスに需要があるかを確かめる手法として使われます。
代表的なスモークテストには「サービス紹介ビデオ」と「プレオーダー」があります。
Dropbox
クラウドストレージの代表格であるDropboxは、ローンチ前にサービス紹介ビデオを制作してディスカッションサイトや掲示板にアップしました。
技術分野のインフルエンサーがそれに敏感に反応してくれたことによって、10日ほどでユーザー数が10~20万人規模に膨れ上がったといいます。
プレオーダーは、ローンチ前に登録や購入を募る手法で、Dropboxもプレオーダーによって紹介ビデオのアップ後数日で7万5000人のプレオーダーを獲得しました。
クラウドファンディングも紹介ビデオとプレオーダーを活用するMVPのひとつのスタイルです。
プロトタイプ「Twitter」「Instagram」
MVPについて初めて聞いた人がイメージするのがこの手法です。
プロトタイプとはデモ用に制作されたシンプルな実験機です。MVP手法の中でも初期費用が比較的大きくなります。
この手法で成功したスタートアップは、最初はまったく想定しなかったようなニーズを発見し、それを捕まえたのが成長の要因です。
Twitterのプロトタイプは、グループチャットや社内でメッセージの交換を行うために開発されました。
「短文のつぶやき」に大きなニーズがあることを発見した創業者が、ユーザーのフィードバックをふまえて改善したのが、SNSでトップのユーザーを獲得するに至った現在のTwitteです。
Instagramも、最初は写真投稿サイトではなく、位置情報アプリとしてスタートしました。
思ったほどにユーザーが伸びない中で発見したのが、写真の共有にもっと人気があるということでした。
そこで、写真投稿を中心にしたSNSに進路を切り替えることで大きな成功を得ました。日本でも「インスタ映え」が流行語になるほどの認知度を獲得しています。
まとめ
ここまで述べたことでお気づきいただいたと思いますが、MVPやリーンスタートアップは「出発点に戻る」ことを何度も繰り返すこと躊躇しないスタートアップです。
また、プロセスの中で得た顧客のフィードバックを、最少のコストでいかに本質的な改善に結びつけるかが、成功と失敗を分ける分岐点になります。
まずは、「リーンキャンバス」を用い、プロダクトの前提を合わせる事。
次に、どの手法が自分たちのプロダクトに合っているのかを擦り合わせることから始めてみましょう。
