エンジニアがマネジメント業務をする際に欠かせない最強のスキル5選

エンジニア職がキャリアの大部分を占めた場合、多くの方がコミュニケーションやマネジメントに課題を抱えます。

実際の業務でコミュニケーションが多くはないため、そこに課題を抱えるのは仕方無いのかもしれませんが、当然仕事上では、「エンジニアなのでマネジメントが苦手」という言い訳は通用しません。

顧客の信頼を得て、感謝される仕事をするには、エンジニアと言えども適切なマネジメントが必要です。

では、エンジニアに対するマネジメントを効果的に行うには、どうすれば良いのでしょうか。

今回は、ステップアップしたい方のために、エンジニアがマネジメントする際に欠かせないスキルについて解説します。

エンジニアにおけるマネジメントの役割

一般的なマネジメントの役割とは、目標を設定し、設定した目標に沿う組織を構築し、成果を評価しながら目標達成に向けて組織を運営することです。

そしてこの考え方は、エンジニアにおけるマネジメントにも適用できます。次から、エンジニアにおけるマネジメントの役割を、目標の設定、組織の構築、成果の評価に分けて解説します。

  • 目標の設定
  • 組織の構築
  • 成果の評価

 

目標の設定

英語のmanagementの意味は、日本語では管理です。では、管理とは何でしょうか。国語辞典には、何らかの基準に対して、そこから外れないようにものごとを統制すること、あるいは、ある目的に対して何かを維持・発展させること、と書かれています。

つまり、管理するには目標と基準が必要であり、エンジニアをマネジメントする場合も同じです。マネジメントのために、まずは、エンジニアとして達成すべき目標を明確にしてください。続いて、その目標を達成するために守らなければならない基準を作っていき、それを使って管理します。なお、この基準は、管理できるものでなければなりません。

 

組織の構築

目標を設定しても、それを達成する人がいなければ、その目標は達成できません。目標達成に必要な組織を作ることもマネジメントの重要な役割です。

ただし、プロジェクトに応じて最適な人材を集められる組織は稀です。ほとんどの管理者は、既にいる人員を活用して目標を達成しなければなりません。そこで重要になるのが人材育成です。自分の管理する組織に所属する人員のスキルを評価し、スキルが足りない部下を適切に指導しなければなりません。

また、チームが使っている機器やツールが適切かどうかも、たえず気配りしてエンジニアのパフォーマンスが落ちないようにきを配りましょう。

 

成果の評価

マネジメントで最も難しいのが、成果の評価です。例えば営業職なら、売上金額や契約件数などの数字でチームメンバーのパフォーマンスを比較できますが、エンジニアのパフォーマンスの比較は簡単ではありません。

作業時間で比較すれば、能力が高く、作業効率の良い人の成果が正しく評価されません。また、ソースコードの量で比較した場合、難しい箇所を担当した高レベルなエンジニアの成果が正しく評価されず、不満を感じることもあるでしょう。

そのため、管理者は、チームメンバーとのコミュニケーションを密接に行い、各メンバーが取り組んでいる作業をエンジニアとして正しく評価できなければなりません。マネジメントのスキルアップも重要ですが、エンジニアとしてのスキルを評価する能力も重要です。

エンジニアリングマネージャーという役職も

日本の人事制度は、年功序列が基本のため、担当で経験を積んだ方がある年齢に達すると、上司の推薦などにより管理職に昇格します。そして、今の職場にポジションがなければ他の部署に異動することもあり、中には、エンジニアから全く違う部署に管理職として移動するケースもあります。

また、管理職になると経営に関わるポジションとなり、社内の他部門の管理者や外部の方との調整の仕事が増えたり、総務や経理に関わる管理事務の仕事が増えるなど、それまでやっていたエンジニアとしての仕事がやりにくくなるのが一般的です。そのため、管理職になったとたん、エンジニアとしての仕事から遠ざかる方もたくさんいます。

しかしながら、先ほど解説したように、エンジニアのマネジメントには、一般的な管理職スキルに加えて、技術スキルを正しく評価するためにエンジニアとしてのスキルも必要です。

そのため、これまで培ったエンジニアとしてのスキルが発揮でき、他の一般的な管理職とは違った役割を持つエンジニアリングマネージャーという役職が注目されています。

例えば、最近、DXを意識して、CIO(Chief Information Officer)という役職を設置している企業が増えています。

しかしながら、エンジニアスキルを持たない役員や管理者職では、CIOの職務が務まりません。その点、エンジニアリングマネージャーなら、マネジメントスキルとエンジニアスキルの両方を兼ね備えていることから、CIOへキャリアアップする職種と言えるでしょう。

エンジニアがマネジメントをこなすために欠かせない5つのスキル

冒頭にもお伝えしましたが、「エンジニアなのでマネジメントが苦手」という言い訳は通用しません。

もちろん苦手であること自体は仕方のないことです。だからこそマネジメントスキルは意識して身に付けなければならないスキルもあります。

このトピックではエンジニアがマネジメントをこなすために欠かせない5つのスキルを紹介します。

  • 問題解決スキル
  • スケジュール管理スキル
  • コミュニケーションスキル
  • リーダーシップと意思決定力
  • コーチングスキル

 

問題解決スキル

普段、指示された作業をやるだけが仕事だと思ってはいないでしょうか。そのような方は管理者に向いていません。

一般的に、マネジメント能力が高い人とは、現状を分析する能力が高く、それにより的確に課題を解決できる人です。

割り振られた仕事から課題を見つけ出し、それを解決したうえで自分の成果に結びつけられるスキルを身に付けましょう。

なお、問題解決スキルを身に付けるには、まず、現状を分析する能力が必要です。そのために「なぜなぜ分析」など、良く知られた手法を活用する、という方法もあります。

また、課題の解決には、客観的な視点で論理的に思考するロジカルシンキングの手法が活用できます。ぜひ、このような手法を学び、問題解決スキルを高めてください。

 

スケジュール管理スキル

「納期の無い仕事は仕事ではない」と言われたことはないでしょうか。納期は、プロとして仕事をするうえで、当然守らなければならない目標です。そして、納期に合わせて必要なことを段取りするのが、プロの仕事のやり方と言えます。

もし、指示された事だけを時間内にやっているだけなら、それは仕事をしているとは言えません。納期を約束し、それに合わせて仕事を終わらせるスキルを身に付けましょう。

なお、納期に合わせて段取りし、その段取りに基づいてスケジュールを組み、そのスケジュールに合わせて仕事をする、という行為はマネジメントそのものです。

さらに、先ほどの問題解決スキルを活用し、スケジュールに対してずれが生じた場合の原因とその対策なども検討できるようになりましょう。

 

コミュニケーションスキル

最近、ITエンジニアに必須のスキルとして挙げられることの多いコミュニケーションスキルは、マネジメントでも重要なスキルの1つです。

プログラムに限らず、ITを活用する仕事では、直接目で見たり触ったりできないコンピュータ内のデータを扱っています。

そのため、いっしょに働くメンバーが正しく理解できるように伝えたり、相手が伝えたいと思っていることを、自分がわかる言葉で引き出すといったコミュニケーションスキルが重要です。

さらに、マネジメントでは、目標を達成するために、今、部下が困っていることを解決することが重要です。それを放置してしまうと、大きな問題に発展し、目標達成ができなくなるかもしれません。

そうなる前に部下とコミュニケーションを取り、その困っていることを解決しなければなりません。

このように、コミュニケーションスキルは、管理職がチームを管理するうえで、必須のスキルと言えるでしょう。

 

リーダーシップと意思決定力

判断が求められた際、リーダーが迷っていると部下が不安になります。そして、たとえ最適な指示を出したとしても、迷って出した指示は、部下のパフォーマンスに悪い影響を与えてしまいます。

しかしながら、上司が、明確な理由とともに自信を持って指示を出せば、部下のパフォーマンスに良い影響を与えます。

難しい問題に直面した際、すぐに正しい回答が得られるとは限りません。判断を下す際に迷うのが当然です。

しかしながら、それを表情やしぐさに出してしまってはリーダーとして失格です。そのため、管理者としてリーダーシップを発揮する方法を学びましょう。

また、問題が大きくなる前に、部下や関係者から情報を得るためのコミュニケーションスキルを合わせて活用してください。

 

コーチングスキル

人に教える、という行為は、簡単ではありません。それは、自分の知っていることを相手に伝えたからと言って、すぐにそれをできるようになるとは限らないからです。教える前に、なぜそれができないか、なぜ理解できないかをチェックし、相手に合わせて説明することで、相手に理解を促さなければなりません。

先ほど解説したように、マネジメントでは、目標を達成するための組織作りの重要なポイントです。

もしスキル不足のメンバーがいるのなら、そのメンバーを教育し、戦力として活用できるようにしなければなりません。

そのためにも、コーチングスキルを身に付け、スキル不足のメンバーを教育し、仕事のできるチームを作り上げましょう。

エンジニアがマネジメントをこなす際の注意点

公務員などの一般的な管理職は、幾つかの部署で仕事を経験する中で、それぞれの職場における仕事のやり方と、どの職場でも使えるマネジメントスキルを学びます。

基本的にはエンジニアも同じですが、エンジニアとしての専門スキルに集中するあまり、マネジメントの仕事が疎かになっている方が多いのではないでしょうか。

このトピックではそんな悩みを抱えるエンジニアの方が、マネジメントをやる際の注意点について紹介します。

  • 自分のミッションを明確に
  • メンバーとのコミュニケーションを優先する
  • 自分の担当業務に課題意識に持つ

 

自分のミッションを明確に

最近、エンジニア不足もあり、担当から管理職になったからと言っても、マネジメントに専念できる訳ではありません

プレイングマネージャーとなり、コードの作成をしつつ、マネジメントも同時に担当する方が増えています。そして、このような働き方をしていると、自分の役割を見失いがちです。

マネジメントを担当することになったら、チームとして目的を達成することが最優先のミッションです。まずはそのために必要な役割を優先してください。

 

メンバーとのコミュニケーションを優先する

優秀な管理職の特徴の1つは、常に部下が話しかけやすい雰囲気を作れることです。どんなに忙しい状況でも、チーム内のメンバーから声をかけられたら、笑顔で話しを聞けるくらいでなければなりません。

そうやってチームメンバーと密接にコミュニケーションを取り、アラートを見逃さないことが大事です。

なお、チームの雰囲気によっても作業効率が大きく変化します。目的達成を目指し、メンバーに高いパフォーマンスを発揮してもらうためには、良い雰囲気を保つことも重要です。

そのためには、管理者によるマネジメントが欠かせません。管理者になったらメンバーとのコミュニケーションを優先し、チームが良い雰囲気で働けるように心がけましょう。

 

自分の担当業務に課題意識に持つ

チームメンバーがいつもやっている作業に対して、もっと良いやり方がないかと考えたことはないでしょうか。また、チームメンバーから、なぜ、この作業が必要なのか、と聞かれて答えに困ったことはないでしょうか。

管理者だったら、チームメンバーが、高いパフォーマンスを発揮できする環境整備もマネジメントの基本です。

まずは、自分が日ごろやっている業務のやり方に、課題意識に持ちましょう。

なお、管理職になると、チーム外のエンジニアや、非エンジニアの方との打ち合わせも増えます。

そのような外部の方の目線で、自分達の仕事のやり方を評価する、というのも良いやり方です。

エンジニアがマネジメントをこなすために読むべき本

エンジニアでもマネジメントが重要だと解っていても、独学で学ぶのは難しいことです。

身近に尊敬できる管理者がいれば、その方の発言や仕事のやり方を真似することで、マネジメントのやり方を学べます。

とはいえ、そのような管理者の下で働けるとは限りません。そこで参考にしてほしいのがマネジメントのやり方を解説した本です。

次から、エンジニアがマネジメントをこなすために読んでほしい、おすすめの本を紹介します。

  • マネジメント[エッセンシャル版]
  • HIGH OUTPUT MANAGEMENT
  • もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

 

マネジメント[エッセンシャル版]

ビジネスにおけるマネジメントの考え方をまとめた、マネジメントの教科書と言える本が、ピーター・ドラッカーの書いた『マネジメント』です。

しかしながら、この『マネジメント』は、上下2巻、1200ページの大著で、かなり難しい内容です。そこで、誰でも読めるように要点をまとめたのが、本書のマネジメント[エッセンシャル版]です。

なお、一般的な管理職向けの本ではありますが、エンジニアのマネジメントでも学べる点が多いことから、これからマネジメントを学ぶ方にとって最適な本と言えます。

 

HIGH OUTPUT MANAGEMENT

本書は、インテルの元CEOアンディ・グローブ氏の著書で、強いエンジニアチームを構築するためのマネジメントのやり方が解説されています。

なお、アンディ・グローブ氏は、インテル社に最初の社員として入社し、世界的な大企業に成長させた偉大な経営者です。そして、インテル社で実線してきたマネジメント手法を、本書で紹介しています。

アメリカで初版が出版されてから35年が経過していますが、今のIT業界でも行われている1on1ミーティングや、OKR(Objectives and Key Results)によるマネジメントのやり方が解説されています。

そのため、エンジニア向けのマネジメントスキルを学びたいという方におすすめの本です。

 

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

2011年のベストセラーの本なので、読んだことはなくても表紙のイラストを覚えている方もいるでしょう。

いきなり管理に関する難しい本を読んでも頭に入らない、という方におすすめなのがこの本です。

なお、内容は、高校野球の女子マネージャーがピーター・ドラッカーの『マネジメント』を読み、甲子園を目指すというストーリーですが、マネジメントの基本を楽しく学べる構成になっています。

この本では、ストーリーの途中で『マネジメント』の出典が多く出ており、それを高校野球の女子マネージャーがチームのマネジメントに活用していく様子が描かれているので、自分の仕事にどう活かすかを考えるうえで参考になるのが特徴です。そのため、マネジメント学習の導入としておすすめの1冊です。

まとめ

今のビジネス環境では、ある年齢になったら自動で管理職に昇格できる訳ではありません。特にエンジニアを含むチームでは、マネジメントのやり方でその成果が大きく変わることから、管理職は重要なや役職です。

そのため、エンジニアから管理職になった場合、エンジニアとしてのスキルの他に、チームをマネジメントするためのスキルを学ぶ必要があります。

もしあなたが管理職になったのなら、今回紹介したマネジメントのスキルを学びましょう。

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