リーンキャンバスとは?その目的から作り方の事例を紹介

スタートアップや新規プロジェクトの立ち上げの際には、顧客のニーズに合わせたビジネスモデルを考えていく必要があります。

しかし、常に顧客のニーズを意識して事業を動かすことは難しく、気づかないうちに当初の理想から離れてしまう可能性もあるでしょう。

目に見えないビジネスモデルは検証や改善がやりづらいこともあり、場合によっては次の一手に何をすればいいのかわからなくなる可能性もあります。

そういった状況を打開する手段として、「リーンキャンバス」の活用がおすすめです。

リーンキャンバスの活用方法がわかれば、ビジネスモデルを俯瞰しながら観察し、具体的な検証や改善に乗り出せるようになります。

こちらでリーンキャンバスの目的や作り方を確認し、実際の事業に導入する準備をしてみましょう。

リーンキャンバスとは

リーンキャンバスとは、ビジネスモデルをまとめるフレームワークです。

起業家の「エリック・リース」が提唱した手法で、ビジネスモデル全体を1枚の紙のなかで表記するのが特徴となっています。

ビジネスモデルの考案やその後の検証などに用いられ、計画している事業が成立するのかを会社全体で考える際に活用されます。

A4用紙程度でも事業内容を簡潔にまとめられるため、わかりやすさや共有のしやすさがメリットです。

他にもビジネスモデルの検証、改善、ブラッシュアップという一連の作業を素早く行えることから、スピードが求められるスタートアップ事業でも役立ちます。

リーンキャンバスによってビジネスモデルをまとめることが、多くの企業のスタートアップを支えることにつながるでしょう。

リーンキャンバスの目的

リーンキャンバスの目的には、下記のようなものが考えられます。

  • 作成コストが掛からない
  • チーム内でコンセプトや課題をスピーディーに共有できる
  • 仮説を検証し素早くアップデートできる

 

作成コストが掛からない

リーンキャンバスは1枚の紙にビジネスモデルをまとめるだけのフレームワークなので、作成コストを掛けずに事業の検証や確認を行えます。

そのため時間や資金に余裕がないときに採用して、会社への負担を減らすことを目的にできるのです。

リーンキャンバスの作成に必要な情報はそれほど多くなく、30分〜1時間程度で下地を作り上げることもできます。

その他の業務に労力を使いたい場合には、リーンキャンバスの活用が役立つでしょう。

特にスタートアップ企業は、ビジネスモデルの検証や確認をスムーズに行えなければ、初動に勢いをつけることが難しくなります。

作成コストを掛かけたくないというときには、リーンキャンバスのフレームワークが使いやすくなるでしょう。

 

チーム内でコンセプトや課題をスピーディーに共有できる

チーム内で事業のコンセプトや課題をスピーディに共有することを目的にするときにも、リーンキャンバスが使われます。

先にも少し触れたように、リーンキャンバスは1枚の紙にまとめるという性質から、わかりやすくて共有しやすいという特徴を持っています。

そのためパッと見ただけでその事業のコンセプトがどういった方向を向いているのか、そこにある課題が何なのかといったことが判断しやすくなるのです。

リーンキャンバスを使えば、いちいちコンセプトを会議で説明したり、課題を話し合って見つけたりといった時間を省けます。

スピード感を持って情報共有が行えるので、チーム全体で素早く課題の解決などに動くことが可能となるのです。

それは事業を滞らせることなく、計画的に進行するきっかけになります。

このようなメリットがあることから、リーンキャンバスはチーム内のコンセプトや課題をスピーディに共有することを目的に使われるのです。

 

仮説を検証し素早くアップデートできる

仮説の検証から素早いアップデートにつなげることを目的とするときにも、リーンキャンバスが利用されます。

リーンキャンバスではそのフレームワーク内に、仮説やアイデアといった事業を構成する情報をまとめられるので、すぐに検証を開始できるのです。

検証後もそのままリーンキャンバスにまとめた情報を使って修正を考えられるので、素早いアップデートが行えます。

仮説の検証→アップデートというプロセスがリーンキャンバス内で完結することから、スピーディな対応が可能となっているのです。

仮説の検証から素早くアップデートを進めることを目的とするなら、リーンキャンバスを作ることがおすすめされます。

リーンキャンバスの作り方

リーンキャンバスは、9つの項目に分割したフレームワークを使って作成します。

各要素の詳細を確認し、リーンキャンバスの作り方をチェックしてみましょう。

  • 顧客セグメント
  • 課題
  • 独自の価値提案
  • ソリューション
  • チャネル
  • 収益の流れ
  • 主要指標
  • コスト構造
  • 圧倒的優位性

 

顧客セグメント

顧客セグメントとは、自社のビジネスモデルが想定している顧客のイメージです。

顧客セグメントを理解することで、ビジネスの方向性を明確にすることができます。

性別や年齢層といった簡単な情報だけでなく、「〇〇に住んでいて、〇〇に困っている人」といった形で、できるだけリアルに想定するのがポイント。

まずは顧客セグメントを考案して、ビジネスのターゲットとなる相手を明確にしましょう。

 

課題

顧客となる人たちがどのような課題を抱えているのかを考えます。

課題を参考にすることで、自社のサービスが顧客のニーズにマッチするのかを検証可能です。

書き出す課題の数は上位3つ程度に抑えて、重要度に応じて順位付けをするのがコツとなります。

 

独自の価値提案

独自の価値提案とは、他の企業にはない自社だけのオリジナルの特徴のことです。

UVP(ユニーク・バリュー・プロポジション)とも呼ばれ、自社のどのような点が他社と差別化できているのかを確認します。

「なぜ顧客は自社のサービスを選ぶことになるのか?」という観点から考えることで、独自の価値提案が明確になりやすいです。

 

ソリューション

ソリューションとは、顧客の課題を解決する方法のことを意味します。

課題を想定できれば、具体的な商品・サービスの作成を計画することが可能です。

先に書き出した「課題」を参考に、具体的なアプローチを考えることになるでしょう。

一般的な解決策ではなく、「独自の価値提案」を考慮したオリジナルの解決策を考えるのがポイントになります。

 

チャネル

顧客と自社サービスの接点が、リーンキャンバスにおけるチャネルです。

どのような形で自社サービスをアピールし、紹介していくかを考えます。

たとえばWeb広告からのアクセス、実演販売によるアプローチなどが、チャネルの種類として考えられるでしょう。

ひとつに絞り込むのではなく、複数の可能性をチャネルとして考案しておくことで、自社サービスの販売ルートを確保できます。

 

収益の流れ

自社から出発したサービスが、具体的にどういった流れで収益化されるのかを検討します。

商品の単価、誰からお金をもらうのか、どのように(現金なのかネット決済なのかなど)して受け取るのかといった要素を軸に考えることになるでしょう。

1度の取引で得られる利益を書き出して、その商品の収益的な価値を明確にするのもポイントです。

 

主要指標

いわゆる「KPI」を書き出す項目で、事業の最終的な目的を達成するために必要な中間目標を考えます。

「何が必要なのか」「どのくらい必要なのか」といった要素を、なるべく具体的に想定しておきましょう。

KPIの設定は目標までの過程を考えることになるので、慎重に計画する必要があります。

 

コスト構造

コスト構造とは、自社のサービス(顧客にとっての解決策)を作るのに、どれくらいのコストが発生するのかを考える項目です。

ただ数字を出すのではなく、コストを構成している要素を細かく分類して、具体的な内訳を考案します。

基本的に構造を明確にすることが目的ですが、大まかな金額を想定しておくことも想定されるでしょう。

 

圧倒的優位性

圧倒的優位性とは、他社から見て「自社が優位に立てる部分」「自社意外では真似できない要素」といった長所のことです。

これだけは負けないというポイントを絞り込むことで、何を武器に事業展開を行っていけばいいのかを考えることができます。

特別な優位性が出ないときには、現状に加えて何があれば競合他社よりも優位に立てるのかを考案してみましょう。

リーンキャンバスを作る際の注意点

リーンキャンバスを作る際には、以下のような注意点を事前に確認しておきましょう。

  • 完璧を求めすぎない
  • 何度も改善を繰り返す

 

完璧を求めすぎない

リーンキャンバスを作るときには、完璧を求めすぎないように注意が必要です。

いきなり完璧な構成を作ろうと意気込むと、それは従業員の負担となってしまいます。

慣れていないうちにはある程度の失敗が起きることを想定し、完璧を基準にしないようにしましょう。

しかし、「完璧でなくても良い=いい加減で良い」というわけではありません。

そのときの知識と時間を全力で投じることは、必ず意識するようにしましょう。

その上で完璧を求めすぎないように調整することが、リーンキャンバス作成時のポイントです。

 

何度も改善を繰り返す

リーンキャンバスを作成するには、何度も改善を繰り返していくことも必要です。

一度だけ作成して終わりではなく、その後もさらに良いものを作れるように工夫と努力を重ねるようにしましょう。

効率的に改善を行っていくには、以前のリーンキャンバスとの比較が重要です。

前のリーンキャンバスと比較して、どの点が良くなったのか、どういった部分に改善の余地があるのかを考えます。

それらを参考に次のリーンキャンバスを作成することで、少しずつ自社のビジネスに良い影響を与える形にしていけるでしょう。

リーンキャンバスがうまく作れないときには、何度も改善を繰り返すように意識してみてください。

リーンキャンバスの実例

リーンキャンバスは海外だけでなく、日本国内の企業でも使われているフレームワークなので、いくつかの実例が見つけられます。

実際に「RIZAP」や「Tinder」などが、リーンキャンバスを使ったビジネスモデルの創造を行っているのです。

たとえば個人のトレーニングをサポートするRIZAPでは、下記のようなリーンキャンバスが設定されました。

顧客セグメント ・ビジネスパーソン
・主婦
課題 ・体がたるんでしまい過去の肉体を取り戻したい
・フィットネスクラブに通っていた時期があったが続かなかった
・ダイエットをしたいと考えているが長く続かない
独自の価値提案 ・3ヶ月で引き締まった体にする
・はじめの30日間は全額返金サービスがある
ソリューション ・顧客それぞれの個性を把握したうえで最適な食事療法やトレーニングメニューなどを組む
チャネル ・達成までの密なサポート(トレーナー、営業管理し)
・印象的なテレビ広告(口コミ、無料カウンセリング)
収益の流れ ・会費
・継続的な利用料(リピーター)
主要指標 ・エリア、店舗、客層別の達成率
コスト構造 ・広告宣伝費
・アプリなどのシステムに関する費用
・施設設備の管理費
・新規店舗をオープンするための費用
圧倒的優位性 無し

参考:https://media.bizmake.jp/example/great-3lean/

 

ここで特に注目なのが

顧客→ダイエットを志すが長続きしない人

ソリューション→個性を把握した上での食事療法やトレーニングメニューの提案

と設定している点で、これは現在のビジネスモデルの構築につながったと想定されます。

チャネルに「印象的なテレビ広告」と書かれている点にも注目で、ここからあの有名なCMが作られたと想像できます。

他にも独自の価値提案では「はじめの30日間は全額返金サービス」とあり、これが現在のサービスの売りになっていることもわかります。

このようにリーンキャンバスの実例を紐解いてみると、そのサービスを形作った考え方を分析できるでしょう。

これからリーンキャンバスを作成するのなら、まずはこういった実例を参考にしてみることがおすすめです。

まとめ

リーンキャンバスの目的や作り方、その他事例を今回の記事でご紹介しましたがいかがでしたでしょうか?

リーンキャンバスは、ビジネスモデルを考えるときに役立つフレームワークです。

こちらで作り方を参考に、リーンキャンバスの作成を事業の一部に組み込んでみてはいかがでしょうか。

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