カスタマージャーニーマップとは?その目的とメリット、作り方の基本を解説
つねにスマホを片手に行動する現代の顧客は、システムの開発者にとっては、気まぐれで移り気な存在です。従来のマーケティング手法である「ペルソナの設定」だけでは、その行動や思考を十分に捉えることが難しくなりました。
そこで近年注目されているのが「カスタマージャーニーマップ」というマーケティング手法です。この記事では、カスタマージャーニーマップマップの基本を、その目的やメリット、作成方法から分かりやすく解説しています。ぜひ参考にしてください。
カスタマージャーニーマップとは
カスタマージャーニーマップとは「想定される顧客の行動」を時系列で記した1枚のシート(MAP)です。
出典:Goodpatch Blog「なぜカスタマージャーニーマップを作るのか?その目的と作り方」
時系列とは具体的には、顧客が<商品やサービスを知る⇒購入を検討する⇒購入する⇒友達に奨める>という一連のプロセスを指します。
このプロセスを「顧客の旅」に見立てたのがカスタマージャーニーマップです。ただし、このMAPは、顧客がガイドとして使うのではなく、プロダクトを提供する側がマーケティングの精度を高めるために活用します。
ユーザーの「行動」と「感情」を図式化
マーケティングでは、まずペルソナを設定するのが最初の仕事になります。しかし、つねにスマホを片手に行動する顧客の「旅のようす」は、ペルソナの設定だけでは把握しきれなくなりました。
いつでもどこでもネットやSNSの情報に接することができる顧客は、上記の時系列のどのプロセスでも複数のチャネルによって進路を誘導されています。
そこで主流になりつつあるのが、カスタマージャーニーマップによる顧客の「追跡」です。ペルソナの設定によるユーザー像の具体化、映像化だけではつかみ切れない、ユーザーの「行動」と「感情」を1枚のシートに見える化(図式化)するのがカスタマージャーニーです。
この図式化によって、各プロセスのタッチポイントでの顧客の行動に合った適切なアプローチが可能になります。
カスタマージャーニーマップを作るメリット
カスタマージャーニーマップの作成は、ユーザーニーズにマッチしたプロダクトを開発、改善するうえで次のようなメリットがあります。
- ユーザーの行動や感情・不満を網羅的に俯瞰できる
- 顧客目線で施策が打てる
- 最小のコストでチームが共通認識を持てる
- 課題の優先度を明確化できる
ユーザーの行動や感情・不満を網羅的に俯瞰できる
たいへん良くできたペルソナの設定があったとしても、システムの開発者がそのペルソナを頭の中で行動させて、その感情に共感してみるのは、楽な作業ではありません。
その作業を一度徹底的にやって、1枚のシートに落とし込んでしまうのがカスタマージャーニーマップ作りです。
想像力を駆使してさまざまなシーンでペルソナの動かしてみても、現実にはそれをすぐ忘れてしまいます。毎朝その思考作業を繰り返してから仕事にかかるのは、まさに「時間のムダ」なのです。
カスタマージャーニーマップがあれば、そのような思考実験の道を何度もくり返しとぼとぼ歩く必要がなくなり、ユーザーの行動や感情を1枚のシートの上で網羅的に俯瞰できます。
顧客目線で施策が打てる
カスタマージャーニーマップでユーザーの行動や感情を網羅的に俯瞰することで、ややもすると忘れられたり、置いてけぼりにされる「顧客目線」にいつでも立ち戻ることができます。
「ユーザー目線を忘れるなんてことはない」と思うかもしれませんが、開発者にはプロダクトに対する強い思い込みがあるので、現実にはそれほどニーズのない機能にこだわったりすることがよくあります。
顧客目線で、最低限必要な機能はなにか、コストがかかる割にニーズがない機能はなにかを常に確認することは、資金や時間に余裕のないスタートアップには極めて重要です。
最小のコストでチームが共通認識を持てる
プロジェクトのメンバーが顧客のペルソナを共有しているとしても、そのペルソナがさまざまなシーンでどうアクションするかは、それぞれのメンバーで想定や認識が違ってくる可能性が大です。
カスタマージャーニーマップがあれば、そのような認識のズレによって生じる「時間の浪費」やトラブルを防ぐことができます。
課題の優先度を明確化できる
カスタマージャーニーマップを作ることで、顧客の認知・興味・比較・購買・評価の各フェーズでの課題をそれぞれ洗い出すことができます。
それらの課題を比較することで、最も優先させるべき課題が何かを明らかにすることが可能になります。
カスタマージャーニーマップの作り方
カスタマージャーニーマップは次のような手順で作ります。
- ペルソナを設定する
- ペルソナの行動や感情についてリサーチする
- タッチポイントとチャネルを洗い出す
- タッチポイントでの顧客の行動と感情を洗い出す
- 製品・サービスの課題を洗い出す
- 改善の方向性と可能な施策を洗い出す
ペルソナを設定する
ペルソナの設定はカスタマージャーニーマップ作りの基礎工事に当たります。ペルソナの設定が粗雑だと、カスタマージャーニーマップのあちこちにひずみできて、使い物になりません。
ペルソナの属性(年齢、職業、学歴、趣味など)を箇条書きで羅列するだけでは、いわば衣装を着けたマネキン人形にすぎません。マネキンに血が通って動き出すファンタジーの「ストーリー」を小説家になったつもりで文章化してみましょう。
チームの各人が1ストーリーずつ書いて持ち寄れば、血の通った人間としてのペルソナのイメージがかなりはっきりします。
ペルソナの行動や感情についてリサーチする
上記のペルソナ設定は「仮説」にすぎません。作ったストーリーのリアリティはまだ保証されていないのです。その「裏を取る」のがヒアリング(インタビュー)やアンケートによるリサーチです。
リサーチを行なうと、仮説とは異なるペルソナの行動や感情が必ず見つかります。実はこの「ズレ」こそが開発サイドの思い込みを訂正する貴重な材料になります。仮説にこだわってズレを無視したりすると、プロジェクトはあらぬ方向に迷走し始めることになります。
タッチポイントとチャネルを洗い出す
タッチポイントは顧客と製品やサービスとの接点、チャネルはその接点で顧客が使用する媒体です。
タッチポイントが分ればチャネルを洗い出すのは容易ですが、顧客と商品やサービスとのタッチポイントのすべてを洗い出すのは簡単ではありません。
しかし、開発サイドには見えにくいタッチポイントの改善がユーザーの満足度を高めるカギになることが少なくないので、タッチポイントの洗い出しには最大限の努力を注ぐ必要があります。
例えば、スマホでアプリを操作しているときに電話がかかってきて、いったんアプリから離脱したとします。通話が終わって再びアプリに戻ろうとするのも1つのタッチポイントです。その際にスムーズに中断した時点に戻ることができるシステムなら、ユーザーの満足度は高くなります。
タッチポイントでの顧客の行動と感情を洗い出す
時系列に沿った各フェーズ(商品やサービスを知る⇒購入を検討する⇒購入する⇒評価する)でのタッチポイントが洗い出せたら、そのタッチポイントでの顧客の「行動」と「感情」をできるだけ詳細に洗い出します。
製品・サービスの課題を洗い出す
MAPの縦軸でタッチポイント⇒行動⇒感情を埋めることができたら、いよいよ「改善課題」の洗い出しに取りかかります。
顧客の行動と感情を洗いだせたら、改善課題は見えてきているはずなので、それを再検討して、短いフレーズでまとめます。
改善の方向性と可能な施策を洗い出す
課題はすべて解決できるとは限らないし、すべてが解決すべき課題とも言えません。解決にかけられる時間とお金は限られているから出す。
課題の優先度と必要性を考慮して、実行可能な施策を洗い出します。
カスタマージャーニーマップを作るときの注意点
カスタマージャーニーマップを作る際には、とくに次の2点に注意しましょう。
- 徹底したペルソナ目線に立つために、リサーチを充実させる
- 何度も改善を繰り返す
徹底したペルソナ目線に立つために、リサーチを充実させる
「ペルソナの目線に立つ」と言うのは簡単ですが、なかなかできないことです。開発サイドのペルソナの仮説は、かならず間違っていたり、足りなかったりします。それを修正し、細くするにはリサーチしかありません。
リサーチの相手はもちろんユーザーですが、クライアント、営業部、他のチームのメンバーなどの関係者に広く意見を求めるのも役に立ちます。
何度も改善を繰り返す
ここまでお話したことから想像がつくように、カスタマージャーニーマップは「完璧なMAP」を作ることは不可能です。つねに勘違いを修正し、不足を補っていく必要があります。
本物の地図と同じように、時間が経てば街角に新しい建物(タッチポイント)が出現していることもあります。
まとめ
顧客が商品やサービスを認知してから購買・評価するまでのプロセスを「旅」に見立てて、その旅のありさまを1枚のMAPとして可視化するのが、カスタマージャーニーマップです。
カスタマージャーニーマップの精度を左右するのが設定したペルソナのリアリティです。ユーザーのリサーチを重視して、仮説ではなくファクトに基づくペルソナを追及することで、より有効なカスタマージャーニーマップを作ることができます。