KJ法とは?プロジェクトが壁に突き当たったときに突破口を発見できる思考法
KJ法は、フィールドワークで得た材料やブレインストーミングで出されたアイディアを整理・活用する方法として、広く知られています。
しかし、KJ法はそれだけでなく、システム開発でプロジェクトチームが難所にぶつかったときに、問題点を抽出したり解決の道筋を探る方法としても使えます。
この記事では、KJ法を「課題の解決」に活用する方法を基本から分かりやすく解説しています。ぜひ参考にしてください。
KJ法とは
KJ法とは、アイディアを整理する方法で、個人でもチームでも活用できます。あるテーマに関して思いついたことをカードに書いていき、アイディアが一応出揃ったらカードを系統別に整理して、課題の解決に役立てます。
この方法を創案したのは文化人類学者の川喜田二郎氏で、KJは彼のイニシアルです。1967年に出版された川喜田氏の著書「発想法」(中公新書)がベストセラーになり、KJ法は一気に知名度を高めました。この本は発刊後半世紀を経た現在も刊行されており、新書としては異例のロングセラーになっています。
ブレインストリーミング(ブレスト)との密接な関係
KJ法はブレストで出されたアイディアの整理に用いられることが多く、しばしばワンセットで語られます。ブレストでランダムに大量生産されたアイディアを秩序立てて評価・利用するのにKJ法が適しているからです。
ブレストは、いわば「考えをまとめるつもりがまったくない会議」で、自由な発想や連想、飛躍を尊重します。したがってブレストでは脈絡のないアイディアが大量に提出され、通常の会議録のような形でノートに記録しても、なかなか有効利用できません。
ブレインストーミングの4原則
・アイディアの良し悪しの批判・評価をしない |
KJ法の効果
アイディアをカードに書き、それを一定の手法に従って整理するKJ法には、テーマや課題を解決するうえで、次のような効果があります。
- ブレストで集めたアイデアを可視化して俯瞰できる
- 構造的にまとめられることでロジカルに議論できる
- 課題の抽出に役立つ
ブレストで集めたアイデアを可視化して俯瞰できる
アイディアを1つずつカードに書き留めることで、次々に出されるアイディアを時系列の中に埋没させずに「可視化」し、全体を「俯瞰」することができます。
重要なのは、ホワイトボードに書き込むのではなく、カード(ポストイット)に書いて貼る点です。そうすることで、全体を俯瞰した後にカードを移動することができます。
カードをグルーピングし、構造化することでロジカルに議論できる
ブレストでアイディアが出つくしたらボードに貼られたカードの内容を見て、1つのカテゴリーでくくれるもの数枚をグルーピングします。(小グループの作成)
次にグループ同士をさらに大きなカテゴリーでくくり、中グループや大グループを作成します。
こうしてできたグループ同士の関係性(原因、結果、前提条件など)を見ることでアイディアを構造化することができ、それを見ながらロジカルに議論できます。
課題の抽出や解決に役立つ
自由な発想や突飛な連想を許容し尊重するブレストでは、単一のアイディア(1枚のカード)に課題の抽出や解決に役立つ「宝石」が見つかることもあります。
しかし、多くの場合単一のアイディアはまだ光を発しない「原石」です。それをKJ法でグルーピングし、ロジカルな視点で見直すことで、問題の本質や解決の道筋が見えてきます。
KJ法のやり方と手順
J法は次の4つのステップで進めます。
- 1.ブレストをして、出たアイディアをカードに書いてボードに貼っていく
- 2.ブレストで出た案をグループ分けする
- 3.グループの関連性を図解する
- 4.議論をする
1.ブレストをし、出たアイディアをカードに書きボードに貼る
まず、テーマに関わっているチームメンバー数人が集まり、司会者(ファシリテーター)を決めてブレストをします。
司会者の役目は、上記のブレストの4原則にしたがって参加者に自由な発言を促がすことで、話を一定の方向に誘導したり、まとめたりしないように注意します。
ブレストが必要になる状況といえば、問題の解決に行き詰ったときなどが多いでしょうが、重苦しい雰囲気で、疲れた頭でブレストをしても良いアイディは生まれません。司会者は場の雰囲気を盛り上げ、参加者のテンションを高めるように工夫しましょう。
隣のチームの人など少し異質な参加者を加えることで、新鮮な空気が生まれることもあります。男性ばかりのチームなら、女性に一人参加してもらうのも良いでしょう。
ブレストのアイディア出しの時間は30分くらいが適当です。短い時間に集中してアイディアを出すことが重要です。
ブレストで出たアイディアは、その都度ポストイットに書きボードに張り付けていきます。この段階では、ボード上の貼る場所を考える必要はありません。
2.ブレストで出た案をグループ分けする
アイディア出しが終わったら、ボード上に無秩序に貼られたカードをグループ分けします。グルーピングの基準は、何らかの意味で共通点のあるアイディアです。どういう意味で共通かはときによりけりで、一般論で語ることはできません。
重要なのは、あまりたくさんのカードを最初から1つのグループに押し込まないことです。最初は2~3枚のカードが入る「小グループ」をたくさん作りましょう。ボード上のカードを移動して、グループを丸で囲みます。どのグループにも入らないカードは、単独で置いておきます。
次に、丸で囲まれた小グループ群を俯瞰して、再度グルーピングをしてカードを移動し「中グループ」を作ります。中グループのカテゴリーが何になるかは、やはりときによりけりです。
さらに、中グループを俯瞰して3つから4つくらいの「大グループ」を作ります。これでグルーピングは終了で、ボードには小、中、大の3つの階層の違うグループが現れます。グループを囲む丸は階層ごとに色分けすると見やすいかもしれません。
各グループに「表札」を付けておく
グルーピングをしながら、各グループにその都度それがどんなグループか分かる「表札」をつけておきます。それによって全体を俯瞰するときの視認性が増します。
ただし、カッコいい表札をつけようして時間を取るのはムダなので、「〇〇について」など内容が分る平易な言葉でOKです。
3.グループの関連性を図解する
図解とは、各グループを論理的に関係づけて(原因、結果、前提条件など)矢印などで示すことです。矢印には、どういう関係であるかを示す文字を添えましょう。
出典:釜石「魚のまち」懇談会
4.議論をする
図解化されたアイディアを見ながら、課題解決の方法を議論します。
議論の仕方に特定のルールはありません。これまでのプロセスで参加者の中には、解決の道筋がひらめいているかもしれません。全員が「それだ!」と納得すれば、それで議論は終了です。
そううまくは行かないときは、「やってみる値打ちのある解決法」の候補をいくつか探り当てるように議論を重ねましょう。
KJ法をおこなう際の注意点
KJ法をおこなうときは、次のような点に注意しましょう。
- グルーピングできなかった孤立したアイディアを無視しない
- 想像以上に手間と時間が掛かる
グルーピングできなかった孤立したアイディアを無視しない
グルーピンでどのグループにも入らなかったカードは、クズの可能性が高いかもしれませんが、思いもよらない斬新なアイディアかもしれません。
最後の議論で行き詰った場合に、もう一度目を向けてみると新しい光を放って見える、ということもあり得ます。
想像以上に手間と時間が掛かる
KJ法はやってみると事前の想像以上に手間と時間がかかるのがふつうです。慣れないうちはとくにそうです。教科書通りの手順を踏もうとすると、そのわずらわしさにウンザリするかもしれません。
しかし、目的はテーマ(課題)の解決する糸口の発見だということを忘れなければ、プロセスは臨機応変に省略したり変更することが可能です。
KJ法に役立つツール
KJ法のプロセスをパソコン上で行なえる無料ソフトがいろいろあります。
例えばブレストはリアルで実施して、アイディアのカード化やグルーピングをツールで行なうことができます。
個人の思考整理に使えるのはもちろん、チームが共同編集者になってリアルタイムでKJ法のプロセスを進めることもできます。
- Xmind
- IdeaFragment2
- Lucidchart
Xmind
Xmindは、上記のプロセスとは逆に,内容が空の構造図のパターンをテンプレートの中から選びます。これは仮の選択で後からテンプレートの種類を変えたりカスタマイズすることができます。
次に、空の構造図(マインドマップ)のいちばん下の階層(レイヤー)の空欄にアイディアを書き込んでいきます。空欄はEnterで増やすことができます。あるいは上の2層目、3層目から書き込んでいくこともできます。
グルーピングを見直すときは、書いた欄をドラッグで移動させることもできます。当然グループによって欄の数が違いますが、Xmindが見やすいように全体の絵を自動調節してくれます。
チームで使うときは、Mind.net という無料のクラウドストレージで共有することができます。ただし、同時共同編集の機能はありません。
IdeaFragment2
IdeaFragment2は、KJ法のプロセスをそのままパソコン上で行なえるソフトです。アイディアの断片(KJ法ではカード)を画面上で作っていき、それをグルーピングしたり、関係線でつなぐことができます。
「断片」の空欄は背景をダブルクリックすると作成されます。グループに表札を付ける機能があり、画像を添えることもできます。関係線は、いろいろな線のタイプ、矢の形状、線の色などを変更できます。
Lucidchart
LucidchartもKJ法を画面上でおこなえるソフトで、リアルタイムで共同編集できるのがメリットです。無料で使用できますが、有料プランでも1ユーザー500円/月ほどで使えます。
基本操作は、すべてドラッグ&ドロップで行なえ、研修をしなくても導入したその日から活用できます。
「GoogleDrive」やSlackなど主要なクラウドサービスと連携できるので、共同編者にも保存にも便利です。
まとめ
チームが難所に突き当たったときは、従来の思考の道筋から少しそれたとろに解決策が見つかることが少なくありません。
知らず知らずのうちにはまり込んでいた思考パターンから抜け出すためにブレストとKJ法を活用してみてはいかがでしょうか。