部下の様子がおかしいと感じたときの原因と対処法を解説

従業員のメンタルヘルスを気にかけることは、会社にとって非常に大切なことです。私生活やビジネスで過度なストレスを感じやすい現代では、従業員一人ひとりに対するケアが会社にとっての義務だといっても過言ではないでしょう。そこで今回は、「部下の様子がおかしい」と感じた時に上司をはじめ会社としてどのように対処すべきかを解説します。

部下の様子がおかしい!メンタル不調に気づくための4つのサイン

部下のメンタル不調に気づくためのサインはさまざまですが、これまでとは明らかに様子が違うときに共通する特徴としては以下が挙げられます。

  • 部下が以前より笑わなくなった
  • 部下が以前より元気が無くなっている
  • 部下が以前より喋らなくなった
  • 業務上において部下がやる気を無くしている

普段から部下の様子を気にかけておくことで、上記のような明らかな違いを感じ取ることができるはずです。

それでは1つずつ見ていきましょう。

部下が以前より笑わなくなった

わかりやすいのは部下の表情や感情表現です。とくに「笑わなくなる」というのは、強い不安やストレスを感じている場合が多いといえるでしょう。

その原因が何かを判断することは難しいかもしれませんが、部下と接する中で明らかに笑顔が減ったと感じた場合は「面白い」と感じることや「相手に共感する」という余裕が無くなっているのかもしれません。

「笑わない」ことに違和感があるならば、それは何かしらのサインとして気にかけてみてください。

部下が以前より元気が無くなっている

「笑わなくなる」にも共通する変化ですが、明らかに元気が無くなっていると感じたならば、それは「疲れている」あるいは「心に変化があった」というサインかもしれません。

もちろんそれは体調によるものであったり、だれにでもある気分の波であったりするかもしれません。しかしながら、それが1週間などの長期間続くようであれば悩み事を抱えている可能性もあります。

何気ない会話の中でも声に元気が無いなどという変化が見えた場合は、仕事中の様子なども観察してみるとよいでしょう。

部下が以前より喋らなくなった

業務外のことはもちろん、ミーティングや業務に関する会話でも口数が減ったと感じたら、それは心に何かしらの変化があったのかもしれません。

たとえ普段から口数の少ない部下でも、質問に対して単語でしか返答しないなどという変化があれば見逃さないようにしましょう。

喋らなくなるときは、気分が落ち込んでいたり体調不良であったりと自分の考えを発言するのも面倒になるほど心が疲れている可能性があります。

業務上において部下がやる気を無くしている

部下が心に何かを抱えている場合、普段の業務にもやる気の無さが見られるかもしれません。

業務上でミスが続いたり、作業進捗が極端に遅くなったりと仕事自体に影響が出ている場合はただ注意するのではなく、部下の勤務態度も合わせて観察してみてください。

例えば遅刻や欠勤が増えたり、服装が乱れているのに気にしていなかったりするなど、勤務態度にもやる気の無さがあらわれている可能性があります。

ただやる気が無いだけならば人はそれを最低限隠そうと振る舞うものですが、メンタル的な問題を抱えている時は隠す素振りもなく、明らかに「やる気の無さ」が見える場合があります。

部下の様子がおかしい原因

部下の様子がおかしいと感じてもその原因がどこにあるのかをはっきりと確認することは難しいでしょう。

しかしその原因が職場にあるとすれば、以下のようなことが考えられます。

  • 人間関係の悪化
  • 勤務時間の長さ
  • 上司からのプレッシャー

人間関係の悪化

仕事上で心に負担を与える原因に多いのが職場の人間関係です。

気の合う仲間だけで過ごすプライベートとは違い、職場では気の合わない人と仕事をしなければならない場面は当然あるでしょう。

「それが仕事だ」と割り切って仕事を続ける人もいれば、中には人間関係がどうしても合わなくて心を病んでしまう人もいるのです。

職場の人間関係はすぐに解消できる問題ではありませんが、それが原因でストレスを溜め込んでしまう部下もいるということを上司として意識しておくことが大切です。

勤務時間の長さ

「様子がおかしい」と感じる部下の勤務時間をチェックしてみてください。長時間勤務が続いているということはないでしょうか。

業務量が多かったり、進捗状況が悪く勤務時間が長くなっていたりした場合、心と身体を休める時間をとれていない可能性もあります。

残業が続いていたり、早朝から出勤していたりする場合には勤務時間の調整を含めて業務を見直す必要があるでしょう。

上司からのプレッシャー

部下が業務に極度のプレッシャーを感じていることが心のストレスの原因になっていることもあります。

仕事に責任を持つことは大切ですが、部下の技量を大きく超える業務や明らかに納期が短い作業を抱えているならば、それがプレッシャーとなっている可能性を考えなければなりません。

また「期待している」ということを部下に伝えたときに、部下自身が「実は自信が無い」ことを言い出せずプレッシャーを感じていることもあるでしょう。

部下に任せた業務の中に、部下が大きなプレッシャーを感じるようなものがないかを上司として見直すことでその原因が見えてくるかもしれません。

部下の様子がおかしい時の対処法

ここからは「部下の様子がおかしい」と感じたときの対処方法を見ていきましょう。

上司が部下に対して「最近様子がおかしくないですか?」と直接聞いてしまうのはNGです。何の準備もなく聞いても部下は何も答えてくれないでしょう。また、部下がさらに心を閉ざしてしまうことも考えられます。最悪の場合は部下のメンタルヘルスを悪化させることにもつながりかねません。

そこで以下のような対処法を心がけてみましょう。

  • プライバシーが保たれた環境
  • 傾聴する
  • 解決策をこちらから言わない
  • 業務削減でゆとりをもたせる
  • 専門機関の受診をすすめる

プライバシーが保たれた環境

メンタルに関わる話しをするならば、まずは部下のプライバシーが保たれる環境を用意することからはじめましょう。

できるだけ静かな場所で、人の出入りが無い部屋を用意するのがベストです。上司は「部下だけのために時間と場所を確保する」という意識で、部下と話をする環境を整えましょう。

部下に対して親身になるということをまずはプライバシーが保たれた環境を用意することで伝えるのです。

傾聴する

実際に部下と話をする時には傾聴を心がけましょう。

傾聴とは、相手が話したいことに深く耳を傾けることです。基本的には上司の方から話しを進めることはやめましょう。

また、部下が話す内容についても上司は自分自身のことと重ねながら聞くことで、「自分事」として理解しやすくなります。

上司が「自分事」として受け止めれば、部下が今どのようにしたいか、何をわかってほしいのかを察することができるでしょう。

たとえ察することが難しくても、部下は上司が「真剣に考えてくれている」ことを感じるはずです。

これは部下を安心させることにもつながります。

解決策をこちらから言わない

基本的には上述した傾聴を守りましょう。

部下の話しに対して上司なりの答えや解決策が浮かんだとしても、それを部下に伝えることは避けた方がよいのです。

できれば、部下自身が気づき自分の口から「こうしたい」という意思が聞けるまで傾聴を続けることが大切です。

業務削減でゆとりをもたせる

部下の様子がおかしい原因が「業務量」だった場合は、業務を見直してあげましょう。

業務量を減らすことで、心の負担が削減すれば、現状よりもゆとりができるはずです。

もちろん削減した業務は他の従業員や上司自身が負担することになるかもしれませんので、あらかじめ周りの従業員にも業務の分担について事前に触れておくことが大切です。

専門機関の受診をすすめる

業務の削減や部下との話し合いでも解決が難しそうな場合には、専門機関の受診をすすめることも大切です。会社内に産業医がいれば、そこへ相談する事も良いでしょう。

会社内の環境を変えるだけでは、部下のメンタルを元に戻すことが難しいケースも多いです。

考え得る限りの改善をしてもやはり部下の様子が変わらない場合には、メンタルヘルスの専門家に診てもらうことを後押ししてあげてください。

このとき上司は「専門家に丸投げする」ような態度や口調ではなく、「不安なら自分も付き添う」旨を伝えてあげると部下の心の支えの一つになるはずです。

部下の様子がおかしい時の対処法に使えるサイト3選

上述したような対処法は代表的なものにすぎません。メンタルヘルスは人によって異なるため、その人にあった接し方やケアが必要なのです。

まずは、上司がメンタルヘルスとはどういうものなのかを理解して、どのような対処法があるのかを事前に学習しておくことがとても重要となります。

そのためにも以下のようなサイトを参考にするとよいでしょう。

  • こころ耳
  • みんなのメンタルヘルス
  • メンタルナビ

こころ耳

「こころの耳」は厚生労働省委託事業として、一般社団法人日本産業カウンセラー協会が受託開設したサイトです。

こころの耳は働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトとして「事業者の方へ」や「部下を持つ方へ」といったカテゴリもあり、相談窓口の案内やeラーニング、職場のメンタルヘルス対策Q&Aなどが用意されています。

公式サイト:こころの耳

みんなのメンタルヘルス

「みんなのメンタルヘルス」は厚生労働省がこころの健康づくりに関する情報や国の施策に関する情報を総合的に、正確に、分かりやすく提供しているサイトです。

メンタルヘルスを知ることからはじめる総合サイトで「こころの病気を知る」ことや「治療や生活へのサポート」、「国の政策と方向性」を知ることができます。

公式サイト:みんなのメンタルヘルス 総合サイト

メンタルナビ

「メンタルナビ」は「ADHD」や「統合失調症」について専門医が監修しているサイトです。

これらの病気とどう付き合っていくのか、本人はもちろん周囲の方たち向けに情報を紹介しています。

サイト内ではADHDと統合失調症の専門病院を探すこともできます。

公式サイト:メンタルナビ

まとめ:部下の様子がおかしいと感じたら早めに対策しよう!

「部下の様子がおかしい」と感じたら上司は早めに対策を講じる必要があります。なぜなら心に負担を抱えたままの部下は仕事だけではなく、プライベートをも辛い気持ちのまま過ごしている可能性があるからです。

1日の中で長い時間を過ごすのは職場であり、長く接するのは職場の人間です。部下の変化にいち早く気づき、不安や辛さを理解するのも上司の役目だといえます。

本記事で紹介した対処法を念頭に上司が部下をしっかりと見つめ、部下の心の状態も気にかけてあげることが大切です。

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