部下が過労で倒れた時に上司が取るべき行動とは?その原因と未然に防ぐための方法をご紹介
会社の部下が過労で倒れるようなケースをもとに、働き方改革によって現場の意識が見直されている現在も決して珍しいことではありません。
ときには過労によって部下が鬱を発症したり、最悪の場合には過労死という取り返しのつかない事態が発生したりする可能性もあるでしょう。
実際に過労が原因で自殺してしまうケースも一時期話題になりました。
そんな部下の過労を防ぐためには、いくつかのポイントを上司が理解しておく必要があります。
そこで今回の記事では、部下が過労で倒れる原因や、万が一倒れた場合にすべき行動などを紹介します。
部下の過労の兆候や未然に防ぐ対策も確認していくので、部下の心身の健康を守るために参考にしてみてください。
目次
部下が過労で倒れてしまう原因
部下が過労によって倒れてしまうことには、複数の原因が考えられます。
実際にどのような原因が過労で倒れることにつながってしまうのかを、以下で確認しま
しょう。
- 長時間労働が当たり前の風潮が社内にある
- 上司のマネジメント不足
- 基本的な人員が不足している
長時間労働が当たり前の風潮が社内にある
長時間労働に対する疑問がなく、誰もが当たり前のように休みを取らない風潮は、過労で倒れる部下が出てしまう原因になります。
「これまでもずっとそうだった」「みんなも当たり前に長時間労働はやってきた」
そういった意識が社内にあると、部下が過労によって倒れやすくなるでしょう。
一般的に「過労死ライン」と呼ばれる長時間労働の判定基準は、「健康障害が発症する2~6ヶ月で、1ヶ月あたりの平均時間外労働時間が約80時間を超えていた」「健康障害の発症前の1ヶ月間に約100時間の時間外労働があった」の2点が示されています。
これらは法律よって規定されているわけではありませんが、過労の目安として使えます。
自社の時間外労働が平均80時間以上、1ヶ月間に100時間以上となる月がある場合には、過労死ラインを超えていると考えられるでしょう。
その場合、部下が過労によって倒れる可能性がかなり高い状況にあると想定されます。
特に部下となる立場の低い社員は、会社内の風潮に対して強い意見を言えないため、過労を我慢しがちです。
同調圧力によって休めない期間が続くと、この過労死ライン以下でも倒れてしまう可能性があります。
長時間労働が当たり前になっている会社は、部下の過労に注意が必要となるでしょう。
上司のマネジメント不足
部下のマネジメントが足りず、仕事を任せすぎるようなことがあると、過労によって倒れる可能性が高くなります。
部下の仕事の進捗がわかっていないと、無意識に別の仕事を新たに振ったり、完成を急かしたりしてしまうでしょう。
それは結果として部下に長時間労働を強いることにつながり、心身ともに追い込むことになってしまうのです。
経済産業省が行った「平成28年の働き方改革に関する企業の実態調査」によると、長時間労働の原因の44.2%が「管理職(ミドルマネージャー)の意識・マネジメント不足」にあるというデータがあります。
上司の管理不足が原因となって、部下が過労で倒れるケースも珍しくありません。
基本的な人員が不足している
会社の業務に必要な人員が足りていないと、その分の皺寄せは他の社員が追うことになるため、これも過労の原因になります。
慢性的な人手不足に陥っている場合には、部下の過労が心配されるでしょう。
人員が足りないということは、補充されない限り長時間労働が改善される望みがないということでもあります。
企業が新規で人を雇うことをしない限り、長時間労働の解決の糸口が見えない状態で働き続けることになるため、部下の心身の負担は大きなものとなるでしょう。
人員が足りない状態を、現職の人たちだけで凌いでいるような会社は、過労によって倒れるリスクを考慮する必要があります。
部下が過労で倒れた際に取るべき行動
部下が過労で倒れた際には、上司として取るべき行動がいくつかあります。
万が一に備えて、以下から必要とされる行動をチェックしましょう。
- 診断書に合わせた対応を取る
- 業務内容の見直し
- 他の従業員のケアにも気を使う
診断書に合わせた対応を取る
部下が過労で倒れた場合、病院に行って診断書をもらうことになるため、上司はそれに合わせた対応を取ることが求められます。
過労が原因で病院にかかった場合、たとえば「休職が必要」「自宅で安静にするため労働時間の短縮が必要」といった診断書が出されるでしょう。
そうなったら上司は決して部下に無理をさせず、診断書の通りに休みを取らせたり、出社のタイミングを調整したりといった対応が必要です。最近ではコロナウイルスが原因でリモートワークが推奨されているため、それをうまく組み合わせることも可能でしょう。
労働契約法第5条の「安全配慮義務」によって、企業は従業員が安全に働けるように配慮をしなければなりません。
この義務を無視すれば、安全配慮義務違反という別の問題を発生させることになります。
病院の診断書が提出された場合には、迷わずその内容に従って部下を休ませるのが上司の役割です。
業務内容の見直し
部下が過労で倒れた際には、業務内容を見直してその原因となったものを特定します。
「何が長時間労働の原因となったのか」「倒れた部下だけが働きすぎるような環境になっていなかったか」
そういった点を確認し、業務内容を洗い出して再発防止に努めましょう。
落ち着いてきたら倒れた部下本人に話を聞き、過労の原因となったものを明確にすることも考えられます。また、同じ業務をこなしている別の部下から業務に関してヒアリングするのも良いでしょう。
ただし、状況によっては会社からのヒアリングが部下の負担になることもあるので、話を聞くときには慎重さを失わないように注意しましょう。
あくまで部下の負担とならない範囲で、業務内容の見直しを行うのがポイントです。
他の従業員のケアにも気を使う
部下が過労によって倒れたときには、他の従業員のケアに気を使うことも必要です。
会社で過労によって倒れた人が出るということは、他の従業員にとってもかなりショッキングな出来事となります。
人によっては不安を感じたり、同じような過労に悩んでいる人がいたりする可能性があるでしょう。
場合によっては他の従業員も、過労を防ぐための対応が必要になるかもしれません。
倒れた本人だけでなく、それ以外の部下たちのケアも含めて考えるのが、上司に求められる対応です。
他の従業員のケアを行う際には、倒れた部下の個人情報を漏らしたり、憶測で話したりしないように注意しましょう。
部下が過労で倒れてしまう前の兆候サイン
部下が過労によって倒れる際には、兆候となるサインが見られます。
大きな問題になる前に気づけるように、特に以下のようなサインには注意が必要です。
- 食欲不振や睡眠障害など生活に支障が出ている
- 疲れが継続している
- 自立神経のバランスが崩れる
食欲不振や睡眠障害など生活に支障が出ている
食欲不振や睡眠障害といった、生きるために欠かせない要素に支障が出ている場合には、過労のサインとして受け取れます。
「最近一緒に食事をしなくなった」「業務中に居眠りやぼんやりしていることが増えた」
そういった変化が部下に起きている場合、過労が限界にきているのかもしれません。
長時間労働によって食事の時間が削られたり、安眠できるような精神状態が確保できなくなったりすると、体はどんどん衰弱していきます。
それは倒れる原因になることはもちろん、突然の退職などにもつながるでしょう。
部下が健康的な生活を送れているかを基準に、過労のサインが出ていないか確認することも考えられます。
疲れが継続している
体の疲れがいつまでも取れずに継続している場合も、過労のサインかもしれません。
本来なら睡眠や休日の気晴らしで疲労は解消すべきですが、過労によってそれらの時間がなくなってしまうと、疲れは体に居座り続けます。
「最近疲れが取れない」「倦怠感が強くて何もやる気にならない」
そういった兆候が見られる部下は、過労のサインを出している可能性があります。
>自立神経のバランスが崩れる
自律神経のバランスが崩れてしまうことも、過労が引き起こす症状のひとつです。
過労によって自律神経が乱れると、血圧や血糖値の上昇、血行不良、免疫力の低下などを引き起こします。
それは過呼吸症候群や過敏性腸症候群などの症状につながったり、最悪の場合には急性心不全や脳梗塞などの重篤な症状を招く可能性も考えられるかもしれません。
自律神経によって心身に異常が出ると、頭痛、吐き気、手足の震え、過剰な汗などの症状が出ることもあります。
部下がそういった症状に悩んでいるような場合には、ただの風邪といって片付けず、過労で倒れる前兆として注意をすることも必要になるでしょう。
症状の参考:https://www.cocokarafine.co.jp/oyakudachi/mentalhealth/201609155.html
https://media.chance.com/karousyoujou5623/
部下が過労で倒れてしまう事を未然に防ぐためにはどうするべきか
部下が過労で倒れるという事態を防ぐためには、事前に対策を講じる必要があります。
上司としてどのような対策ができるのかを、以下を参考に考えてみてください。
- DXによる業務の効率化で長時間労働をなくす
- 上司自らがお手本となって働く
- 過労の兆候が見えたら休ませる判断を
DXによる業務の効率化で長時間労働をなくす
近年話題となっているDX(デジタルトランスフォーメーション)を導入して業務の効率化を行うことは、過労で倒れる部下を出さないための対策になります。
DXとは、デジタル技術を用いて職場環境や業務の方法を変革することです。
デジタルで賄える部分を見つけ出して移行していくことで、部下の負担を軽減して過労の習慣を見直すことができます。
たとえばRPA(Robotic Process Automation)による単純作業の自動化や、資料の電子化などによる業務フローの短縮が、無駄な労働時間を削減することにつながります。
デジタルに任せられる部分を変革していくDXの推奨は、結果的に部下の過労を防ぐというメリットにもなるでしょう。
上司自らがお手本となって働く
上司である自分が過労にならないお手本となって働くことも、部下が倒れることを未然に防ぐことにつながります。
部下の立場では、「上司がずっと働いているのに、自分だけが休むことは難しい」と感じるシーンも多いです。
そのため上司が率先して休暇を取ったり、定時で退社したりすることが部下の長時間労働を解決することがあります。
部下に長時間労働を強制しない環境づくりのためにも、まずは上司自身が働き方を変えて過労を防ぐことを意識してみましょう。
過労の兆候が見えたら休ませる判断を
部下に過労の兆候が見出せたときには、すぐに休ませる判断を下しましょう。
過労の兆候が出ていたのに、倒れるまで具体的な対策をしないで放置してしまうと、上司としての責任問題にもなりかねません。
少しでも部下が過労に苦しんでいることが見て取れたときには、早めに休暇や早退などを促すのがポイントです。
いきなり休暇を取らせるのが難しい場合には、部下と話し合う機会を作ったり、カウンセリングの場を用意したりといった対策が考えられます。
少なくとも上司として部下にアプローチを行い、現在の働き方について話をする必要があるでしょう。
部下が過労によって倒れることを防ぐには、過労がわかった段階での速やかな対応が需要です。
まとめ:部下が過労で倒れたときのシミュレーションをしておくこと
部下が過労によって倒れるという事態は、どんな企業にも起こり得ます。
だからこそ事前に倒れたときのシミュレーションを行って、上司としてできることを模索しておくことが重要です。
部下を過労から守ることも、上司の仕事のひとつになります。
最悪の事態を防げるように、普段から部下の過労について考えておきましょう。