キャリア採用とは?中途採用との違いやメリット・デメリットを解説!
終身雇用という言葉はすでに遠い昔のことのように感じます。現代の雇用では、転職があたりまえになり、それはキャリアップや年収アップを目指す手段のひとつとして、大いに活用されています。
そんな中、中途採用とは別に『キャリア採用』という言葉をよく聞くようになりました。テレビCMなどでもキャリア転職など「キャリア」という言葉が頻繁に使われています。
そこで今回は、キャリア採用とはなんなのか、中途採用との違いを確認しながら、キャリア採用のメリットや導入ポイントを解説します。
目次
そもそもキャリア採用とは?
キャリア採用とは、一定の専門スキルを持つ人材を、即戦力として採用することを指します。
転職することが一般的になった社会では、5年〜10年で専門的なスキルを身につけた人材が、さらなるスキルアップを目指して転職をするケースが増えているのです。
これまで利用していた中途採用という表現には「第二新卒」や「未経験採用」なども含まれており、純粋に自身のキャリアを売りにした転職を目指す人材との区別がありませんでした。
そもそも終身雇用が成り立っていた時代には、同じ会社で長く勤めることで昇進していくことが自身のキャリアにつながる手段だったのです。
しかし現在では、自身のスキルを最大限にアピールし、同じ会社ではなく同じ業界というくくりでキャリアを積むという考え方になっています。
そこで転職を支援する企業では、一定のスキルを持ち、即戦力となる人材には『中途採用』という表現は好ましくないという判断から、「第二新卒」や「未経験」という人材を区別した表現として『キャリア採用』という言葉に言い換えました。
キャリア採用と中途採用の違いは?
『キャリア採用』と『中途採用』は、ほぼ同じ意味で使われています。ただし、『キャリア採用』という言葉を利用するようになった理由を知っておくことで、採用活動がスムーズになる場合もあります。
キャリア採用と中途採用の違いは、主に以下のように区別できます。
- 即戦力であるか否か
- 将来的なポジションが視野にあるか否か
- 成果報酬か時間報酬か
即戦力であるか否か
キャリア採用か中途採用かを大きく区別するならば「即戦力であるか否か」です。一般的な中途採用と表現した時、未経験者なども含まれれるため、即戦力とはいえな人材も含まれます。
イメージとしては「人数を集める」のが中途採用で、「厳選した人材を採用」するのがキャリア採用という意識でも間違いではないでしょう。
将来的なポジションが視野にあるか否か
キャリア採用で獲得する人材は、自身のキャリアアップができる企業として貴社を選んでいます。つまり、貴社で将来的に満足できるポジションに就くことを期待しているのです。
キャリア採用を行う際人は、獲得する人材にふさわしいポジションや環境を用意しておく、あるいは視野に入れておく必要があります。
成果報酬か時間報酬か
就業条件にもよりますが、企業によってはキャリア採用人材を成果報酬にて採用する企業もあります。
これもキャリア人材に対するひとつの待遇で、未経験者の採用と区別する手段のひとつです。
事業の中心人物としてキャリア採用を行う場合には、キャリア人材も自身のこれまでのキャリアやスキルを活かして、収入面も含めたキャリアアップを図りますし、採用する企業側も、相応の成果を期待する意味が込められます。
キャリア採用のメリットは?
キャリア採用の代表的なメリットは「即戦力を獲得できる」ことですが、それだけではありません。
キャリア採用を行った際に考えられるメリットには、次のようなものが挙げられます。
- 即戦力を採用できる
- 社外のノウハウを吸収できる
- 教育コストを抑えられる
即戦力を採用できる
キャリア採用の最大のメリットは、やはり採用してすぐ、スムーズに業務を遂行できるスキルを持っていること、つまり即戦力であるということです。
例えば、主戦力だった人材の退社が決まったり、病気などで急遽大きな戦力を失ったりした場合には、キャリア採用をすることで比較的業務のダメージを軽くすることが期待できます。
また、事業が大きくなるタイミングでも、主力となる即戦力としてキャリア採用を導入する企業もあります。
教育に時間のかかる未経験採用では実現できない即戦力が、キャリア採用です。
社外のノウハウを吸収できる
キャリア採用で応募してくる人材は、これまでのキャリアで積んだスキルやノウハウを持っています。
自身で積み重ねた業務スキルは即戦力として使えますが、そのほかにも「多数の企業で身につけたノウハウ」があります。
例えば新卒で入社した従業員は、ひとつの企業のノウハウしか身に付けることができません。しかし、複数の企業でキャリアを積んできた人材は、社外のノウハウを知っています。
キャリア人材は、もちろん貴社の業務でそのノウハウを活用しますので、貴社の文化に新たなノウハウが蓄積されることになるのです。
さまざまな企業やプロジェクトを経験してきた人材は、社内だけしか経験したことのない従業員よりも視野が広いことは間違いありません。
教育コストを抑えられる
キャリア採用は即戦力ですので、業界のルールや知識、基本的なスキルを教育する必要はありません。唯一教育が必要なのは、貴社のルールのみです。
未経験採用をした場合には、業界の基本的知識などを教育するためのコストがかかります。それは、実際の業務で戦力になるまで続きます。
しかし、キャリヤ採用の人材は、業務に必要なスキルは持っていますので、一から教育する必要がなく、大きなコスト削減につながります。
キャリア採用のデメリットは?
スキルや経験値という意味ではメリットだけが感じられるキャリア採用ですが、もちろん企業側にとってのデメリットもあります。
代表的なものとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 自身の「やり方」を持っている
- 長く在籍するとは限らない
- 給与報酬が高い
「自分のやり方」を持っている
キャリア採用人材は、これまでの経験やスキル、視野の広さから得た「自分のやり方」を持っています。ですので、ある程度の業務であれば簡単な指示だけで結果を出してくれるでしょう。
しかし、企業にはルールがあります。社内で業務を行なっていると当たり前のことでも、外部から来た人材にとってはやりにくい手順でもあります。
その時、キャリア人材は、効率の良い自分のやり方を持っていますので、どうしてもそちらの方法で作業を行おうとするのです。
これは、その他の従業員にとっては非常にやりにくい環境を作ってしまう可能性があります。
長く在籍するとは限らない
キャリア採用で獲得できる人材は、もちろん目的は自身のキャリアアップです。つまり、自身のキャリアアップにつながる条件の良い場所へ転職を繰り返す可能性が高いのです。
貴社へ就職したということは、キャリア人材にとって貴社が魅力的だったということですが、常に自分を高められる場所を探していることも事実です。
終身雇用という制度がおわった現代では、悪いことではなく、むしろ評価されるべき志ですが、企業にとっては優秀な人材を長く置いておきたいものです。
できるだけキャリア人材が「長く働きたい」と思える環境づくりをする一方、いついなくなってもおかしくないという可能性について、覚悟と準備をしておくことが大切です。
給与報酬が高い
キャリア採用では、未経験者採用とはことなり報酬額は高く設定します。即戦力を獲得するためには、キャリアに見合った報酬も大切な要素です。
それは、専門性の高い業務になればなるほど、あるいはこれまで高い実績を持っていることに対する評価の一つでもあります。
つまり、キャリア採用をする企業側は、未経験者採用でかかる教育コストの代わりに、キャリア採用に対する人件コストをあらかじめ計画しておかなければなりません。
キャリア採用導入のポイント
キャリア採用を行う場合に、気をつける点やコツがあります。代表的なものとしては、以下が挙げられます。
- 評価基準の明確化
- キャリア採用を行うべき職種であるか
- キャリア採用後の仕事環境を整える
採用基準の明確化
キャリア採用に向けた採用基準を明確にしておく必要があります。貴社がどのような人材を求めているのかを、細部までリスト化して、面接時に聞いておくべきチェックポイントをできるだけ鮮明にしておきましょう。
キャリア採用をするということは、即戦力が欲しいということ、そしてそれなりの報酬(コスト)を支払うということです。
採用してからミスマッチがおこると、その人材にとっても貴社にとっても無駄になってしまいます。
採用する人材にはどのようなスキルが必要で、どれくらいの経験値を望み、人柄や性格が自社にマッチするか否かを、じっくりと面接時に判断しなければなりません。
そのためにも、多少踏み込んだ採用基準を作成しておくことをおすすめします。
キャリア採用を行うべき職種であるか
どのような職種でも、即戦力は欲しいものです。しかし、キャリア採用として人材を獲得する場合、本当に「キャリア採用でなければならない理由」を再考したほうが良いかもしれません。
例えば、専門的な知識をつけるためには何年も必要な業種や、経験の長さが生む臨機応変な対応力が必要な業種、これらはキャリア採用に適した業種といえるでしょう。
しかし、いわゆる一般職とよばれる、比較的未経験者採用が多い職種へのキャリア採用は見直した方がよいかもしれません。
つまり、より沢山の企業や人との関わりを経験し、深い知識やスキルがもっとも発揮される業種にこそ、キャリア採用を導入するべきなのです。
キャリア採用後の仕事環境を整える
キャリア採用で人材を獲得した際には、採用したキャリア人材が「転職成功」と思える仕事環境を整えておくことも大切です。
それは報酬面やポジションを含め、社内で環境のあらゆる面を意識する必要があるでしょう。
人件費としても高いコストがかかりますし、スムーズに業務を遂行してもらうことで、企業としての利益も追求しなければなりません。
そのためには、キャリア人材が納得できる、あるいは貴社に長く貢献したいと思える仕事感きょうは大切な要素となります。
過剰に気を使うという意味ではなく、キャリア人材が「自身が成長している」ことを実感できる環境作りが大切です。
キャリア採用をしている企業事例
ここでは、実際にキャリア採用を行なっている企業について、企業名とその背景などについて紹介します。
これからキャリア採用を検討する時の参考になるのではないでしょうか。
村田製作所
村田製作所では、「新風を吹き込む」という目的のものでキャリア採用を導入しています。
村田製作所では以下の5つの要素のうち、ひとつでも突出し、これまでの経験も踏まえた新しいチャレンジを期待しています。
・高い目標にチャレンジする
・自ら考え、自ら行動する
・チームワークを大切にした仕事の仕方
・こだわりを持ってやり遂げる
・スピードを大切にする
住友商事
住友商事は、キャリア採用に期待するのは専門性だけではなく、物事の考え方や業務の進め方、自由な発想を競争力強化につなげたい考えです。
2018年度のキャリア採用では、男性30名、女性4名の計34名をキャリア採用しています。
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社では、これまで培ったキャリアを存分に活かし、「トヨタでしかできない仕事」でそれらを発揮してもらうことを、キャリア採用で期待しています。
またトヨタでは、女性積極キャリア採用も行なっています。
キャリア採用が効果的な職種
キャリア採用で獲得するか否かは、職種によってもその効果が違います。キャリア採用が主に効果的な職種としては、以下の職種が挙げられます。
- 技術
- 営業
- 人事
技術
まずは、技術です。これは自動車関係やIT関係などの全般的な技術職のことです。
技術は短期間で身につくものではありません。知識や経験を重ねることで、個人の能力として洗練されていきます。
キャリアを積むことで見えてくるノウハウは、例えばトラブル対応などで臨機応変な振る舞いや、さまざまな現場を見てきたからこそ思いつく発想などが期待できます。
営業
営業職は、人の心を相手にするプロフェッショナルです。研修や生半可な経験では生き残ることすら難しい業界でしょう。
豊富なキャリアを持つ人材は、作法や話術、そして出会った人数の全てがスキルであり知識となります。
一から育てるには非常に時間やコストがかかりますし、向き不向きという点も重要なポイントになります。
キャリアを積んだ人材なら、それら全てを持ち合わせていることが期待できる上に、仕事を生み出す現場の最前線に即戦力として活躍してもらえます。
人事
人事の業務は、やはり優秀な人材を見抜く能力が必要です。そのためにはたくさんの人と接した経験値や、あらゆる角度から人を見る技術が問われます。
これらを身につけるには非常に時間がかかり、やはり一から人材を育てることは時間とコストを費やすことになります。
そこで即戦力となるのがキャリア採用の人材です。さまざまな企業でいろいろなタイプの人と接し、人を見るコツや感覚という能力が備わっていることでしょう。
企業を成長させるための最も大切な要素である人材を、プロの角度から見極める人事のキャリア採用は、非常に効果的な採用方法となります。
まとめ:キャリア採用は即戦力を獲得できる
キャリア採用は、即戦力を獲得するためには最善の手段です。
キャリア採用と中途採用は、ほぼ同等の意味で使われていましたが、あえて区別し、意味をしっかりと意識するとで、即戦力となる非常に有益な人材を獲得することができるでしょう。
また、経験値の高いキャリア人材は、これまで社内にはなかった新しいノウハウをもたらしてくれることが期待できます。
優秀な人材を獲得したい、あるいは社内に新しい文化や見方が欲しい時、広義な中途採用よりもキャリア採用という名目で、人材獲得を目指すことは有効な手段となります。