マトリクス型組織とは?組織の種類と機能される3つのポイントを解説!

マトリクス型組織とは、各人が複数の所属を持ち縦横の格子状に構成された組織のことをさしています。
従来から活用されてきたヒエラルキー型の組織と比べると複雑さが増していますが、意思決定のスピードが高まったり業務に対する視野が広がりやすかったりといったメリットを持つ組織構造です。
この記事では、マトリクス型組織とはどんなものなのかという特徴や他の組織構造との違い、マトリクス型組織をうまく機能させるための3つのポイントについて解説します。
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目次
マトリクス型組織とは?
マトリクス型組織は、アポロ計画で取り入れられたのが最初だと言われている組織構成です。
マトリクス型組織とは、各社員が2つ以上の所属を持つような形の組織です。
例えば、業務別に分けられた部門という区分に加えて地域ごとにエリアの所属を持つような場合にマトリクス型組織と言われます。
マトリクスとは各項目を行と列に配置して格子状の配列を作ったもののことをさしています。
上記の例で言えば、横軸に業務別の部門、縦軸にエリアを配置したような組織と考えるとわかりやすいのではないでしょうか。
社員は、業務別の部門とエリアのどちらにも所属することになります。
複数の所属を持つということは複数の上司が存在するということでもあり、それによるメリットやデメリットがそれぞれ発生する組織構造でもあります。
プロジェクト型組織との違い
マトリクス型組織とプロジェクト型組織の最大の違いは、その所属が一時的なものであるか長期的なものであるかという点にあります。
プロジェクト型組織の場合には各部門から専門家をピックアップしてプロジェクトを作り、プロジェクトが終われば解散します。
一方でマトリクス型組織の場合には人員の異動などが行われる場合はありますが基本的に解散はありません。
プロジェクト型の場合には知識の蓄積がそのプロジェクト限りになってしまうことが多いのに対して、マトリクス型組織の場合にはそれぞれが所属している場所に知識が蓄積されていきやすいということも組織体系の違いによるものです。
機能型組織との違い
機能型組織とマトリクス型組織の最大の違いはリーダーの権限にあります。
機能型組織の場合には、機能別に分けた部門のリーダーの権限が大きくなるのに対して、マトリクス型組織の場合には縦と横の区分け、どちらのリーダーの権限も同様のものとなっています。
また、機能型組織の場合には各部門を通して仕事がおりてくるというようなイメージであるのに対して、マトリクス型組織の場合には所属しているどちらの区分けからも仕事が発生する可能性があります。
マトリクス型組織の種類3つ
マトリクス型組織には「ウィーク型」「バランス型」「ストロング型」の3つの種類があります。
この3つは、主にどのような形でリーダーを配置するかによって分類されます。
3種類それぞれの特徴についてご紹介します。
- ウィーク型
- バランス型
- ストロング型
ウィーク型
マトリクス型組織におけるウィーク型とは、プロジェクトの責任者を配置しないようなやり方のことをさしています。
言い方を変えれば、メンバー全員がプロジェクトに対して責任と権限を持っているような組織形態でもあります。
1人1人が業務に対して自由度を高めて取り組みやすい一方で、自分が何をすべきか考えるという負担が大きくなりがちな方法でもあります。
また、各個人がそれぞれに権限を持っていることで業務が非効率化したりプロジェクト全体での進捗状況がわかりにくくなってしまったりすることもあります。
バランス型
マトリクス型組織におけるバランス型とは、プロジェクトメンバーの中からリーダーを選出するようなやり方のことをさしています。
リーダーが存在することで、プロジェクト全体の進捗状況を把握しやすくなります。
バランス型の場合、リーダーは通常業務を遂行しつつリーダーとしての業務も行うことになります。
リーダーが実際に業務に関わるので、業務遂行者の目線から意見の調整などを行いやすいというのがメリットです。
一方で、リーダーに負担がかかりがちになってしまうというのはバランス型のデメリットでもあります。
ストロング型
マトリクス型組織におけるストロング型とは、専門性の高いプロジェクトマネージャーを
配置するようなやり方のことをさしています。
バランス型ではプロジェクトメンバーを選んだ後でリーダーを決定するのに対して、ストロング型ではリーダーを選んだ後にプロジェクトマネージャーを選出します。
プロジェクトマネージャーは主に管理業務を行うというのがメインの仕事となります。
メンバーの負担が減ることがメリットとなる一方で、組織としてはプロジェクトマネージャーを育成するための部門が必要になるためその分の負担が増えてしまう可能性もあります。
マトリクス型組織のメリット
マトリクス型組織は、複雑な組織構造になっているため一見するとどんなところにメリットがあるのかわかりにくいかもしれません。
けれど、多くの企業で使われているのはメリットがあるからこそです。
マトリクス型組織のメリットはどんなところにあるのか解説します。
- 情報を幅広く共有しやすい
- トラブルや市場の変化に柔軟に対応できる
- 意思決定の際の視野が広がりやすい
情報を幅広く共有しやすい
マトリクス型組織では、各人が複数の所属を持っています。
それぞれの社員が自分の所属している複数の場所で情報を共有することによって、会社全体でも幅広い情報共有が可能になります。
例えば、営業部に所属している社員Aがもうひとつの所属であるエリアに対して営業部の情報を共有するといった形です。
それぞれ別の視点からの情報が共有されることで、業務改善に役立つ場合もあります。
情報共有の密度を高めて情報の風通しが良い状態を作りたいときに向いている形だと言えるでしょう。
トラブルや市場の変化に柔軟に対応できる
マトリクス型組織の特徴は、会社内での情報共有が活発になることに加えて各プロジェクトにさまざまな部門の人が集まっていることで意思決定がしやすいという点もメリットとなっています。
従来からよく使われているヒエラルキー型組織では決定権者の判断を待たなければならない場合が多いのに対して、マトリクス型組織ではプロジェクト内で意思決定が可能な部分が広くなります。
意思決定のスピードの速さは、そのまま業務のスピードにも直結する部分です。
スピード感のある意思決定によって市場の変化や急なトラブルにも対応しやすい組織となります。
意思決定の際の視野が広がりやすい
各人の所属が1箇所にしかない場合、どうしても各メンバーの業務に対する視野はその所属部門から見たものに偏りがちになってしまいます。
その視野は、業務の意思決定の際にも反映されます。
一方でマトリクス型組織のように複数の所属を持っているとそれだけでも意思決定の際の視野は広がります。
さらに情報共有が活発なことによっても視野は広がりやすくなりますから、幅広い視点から見た意思決定によって業務を効率化することが可能になります。
マトリクス型組織のデメリット
どんなことでもメリットがあればデメリットもあるのが当然ですよね。
あらかじめそのデメリットを知っておくことでそのデメリットをカバーする方法を考えたり、万が一トラブルが起きた場合の対処法を考えておくことができます。
それでは、マトリクス型組織のデメリットについて解説します。
- 指揮系統が複雑化する
- 人事評価があいまいになりがち
- 特定の人に負担が偏る可能性がある
指揮系統が複雑化する
マトリクス型組織では、各人が複数の場所に所属することになります。
所属が増えるということは、そのそれぞれにリーダーが存在するということでもあります。
そのため、どうしても指揮系統が複雑化しがちな傾向にあります。
特に、それぞれの上司が全く違うことを指示した場合などには社員は混乱しがちになりますし社員が感じる負担も大きくなりがちです。
規模が大きくなればなるほど指揮系統は複雑化する傾向にあるので、マトリクス型組織は規模が小さい組織に向いている構造であるとも言えます。
人事評価があいまいになりがち
所属箇所が1つである場合には、一般的にその所属箇所の上司が人事評価を行います。
しかしマトリクス型では1人に対して複数の上司がいる場合も多いため人事評価があいまいになりがちだというのもデメリットです。
1人の人に対してそれぞれの上司の評価が真逆になるなんていうこともありえない話ではありません。
人事評価があいまいになることは会社にとって人材を有効活用できないというデメリットになるだけでなく、社員の不満が大きくなってしまうことにもつながりかねません。
特定の人に負担が偏る可能性がある
マトリクス型組織では、各人に対して複数の上司が指示を出すことも多くあります。
複数いる上司がそれぞれバラバラに指示を出してしまうと、特定の人への業務負担が大きくなったりといった偏りが生じてしまうこともあります。
負担に偏りが出ると、どうしても負担が大きくなった社員は不満を感じてしまいますよね。
負担が大きかった社員が突然辞めてしまってさらに組織内での業務負担に偏りが生じてしまったり、最悪の場合には業務が遂行できなくなってしまうというリスクもあります。
マトリクス型組織を機能させるポイント・注意点
マトリクス型組織はいきなり運用を始めてしまうと思わぬトラブルが起きたり、社員に不満が溜まってしまったりする場合があります。
マトリクス型組織を機能させるために必要な3つのポイントと注意点について解説します。
- リーダー同士の連携が取りやすい状態を作る
- 人事評価に明確な基準を作る
- 特定の人に負担が偏っていないか常に注意する
リーダー同士の連携が取りやすい状態を作る
マトリクス型組織の主なデメリットやトラブルなどは、各人に対してリーダーが複数いることから生まれていると言っても過言ではありません。
そのため、リーダー同士の連携が取りやすい状態を作っておくことでデメリットを減らしトラブルを減らすことができる可能性があります。
リーダー同士で情報を共有しておくことは、さらに業務に対する視野を広げることにもつながりますよね。
特にエリアによって業務を区分けしている場合など、物理的な距離が離れている場合には積極的に連携が取れるような機会を設けておくと良いでしょう。
人事評価に明確な基準を設ける
マトリクス型のデメリットとして挙げられるポイントの中に、人事評価があいまいになりがちだということがあります。
この点は、人事評価に明確な基準を設けることによって避けられる可能性もあります。
どのような点を評価するのかということを共有しておくのはもちろん、それぞれのリーダー同士で評価が異なった場合にはどのような評価にするのか、それを業務や給与にどう反映させるのかというところまであらかじめ決めておくと混乱が起きにくくなります。
特定の人に負担が偏っていないか常に注意する
特定の人に負担が偏ってしまうというデメリットについては、社員から不満が出るまで放置していると業務に支障を来してしまう場合もあります。
リーダー同士の連携が取りやすい環境を作ることは、業務の偏りが発生していることに気付くきっかけにもなります。
特に、それぞれの所属の中で誰が業務負担の重い仕事をしているのかということは積極的に共有しておくと良いですね。
定期的に各社員の業務負担を見直すなど特定の人に負担が偏っていないかということに常に注意しておくと社員の不満が溜まりにくい組織運営ができるでしょう。
まとめ:マトリクス型組織は複数の所属を持つ
マトリクス型組織は、部門やエリアといったように各個人が複数の所属を持つことが特徴となっている組織です。
それぞれが持つ意思決定の視野を広げられるとともに意思決定のスピードを上げやすいというメリットがある一方で、業務が複雑になったり特定の人に負担が偏ったりしやすいというデメリットもあります。
リーダー同士の連携が取りやすい環境を作ったり人事評価に明確な基準を設けたりすることで、そうしたデメリットをカバーしながら運用していくと良いでしょう。