ホラクラシー型組織とは?企業事例からメリット・デメリットを解説!

近年注目されている組織構造のひとつとして「ホラクラシー型組織」というものがあります。
ホラクラシー型組織は従来のヒエラルキー型組織とは異なり上下関係がないことが最大の特徴となっています。
ホラクラシー型組織には社員管理の手間を減らすことができるなどのメリットがある一方で、社員への負担が大きくなるなどのデメリットもあります。
この記事では、そんなホラクラシー型組織とは何かといったことやメリットとデメリット、導入の際の注意点、導入している具体的な企業の例などについて解説します。
おすすめ記事:【組織作り】企業戦略をスムーズに実行できる組織の作り方
目次
ホラクラシー型組織とは?
ホラクラシー型組織とは近年注目されている組織の考え方で、上下関係がなくどの立場の人も業務に対する権限や責任に差がない組織構造のことを指しています。
従来主流であった、トップダウン型の指示命令系統を持っているヒエラルキー型組織とは全く逆の考え方ですよね。
今までの組織構造がその組織自体に視点を置いているのに対して、ホラクラシー型組織は業務や役割に視点を置いた組織構造であるとも言えます。
もちろん業務の中で役割分担はありますが、はっきりと業務が分担されているというよりも必要に応じてサークルを組みながら業務を遂行していくような組織体系と考えるとわかりやすいのではないでしょうか。
ホラクラシー型組織は上司の命令によって動く組織ではなく、社員が主体的に動くことで業務を遂行していく組織となっています。
ヒエラルキー型組織との違い
ヒエラルキー型組織はピラミッド型の組織構造となっていて、その組織の上位になればなるほど業務に対する権限や責任が大きくなっていきます。
一方でホラクラシー型組織はどの社員も業務に対する責任や権限をそれぞれ同程度に持っています。
ヒエラルキー型組織では絶対不可欠な社員の管理に関する業務が激減し、その分だけ効率的に本来の業務に人的リソースを割けるというのもホラクラシー型組織の特徴となっています。
社員に自発的に考えたりアイディアを出してもらったりしながら業務を進めたいという場合にはホラクラシー型組織が向いていると言えるでしょう。
ティール型組織との違い
ホラクラシー型組織とティール型組織は非常によく似ています。
同じものだと考えている人も多いようなのですが、細かい部分は少し違っているんです。
実は、ホラクラシー型組織はティール型組織の一部です。
ホラクラシー型組織には、上下関係がないフラットな組織を維持するためのルールがあります。
そのルールを適用すれば、今までとは全く別の人たちが集まったとしてもホラクラシー型組織を運営できるという再現性も求められます。
一方でティール型組織というのは「上下関係がないフラットな組織」という概念のみを表す言葉で、その運営に関してのルールは特に定められていません。
ホラクラシー型組織のメリット
ホラクラシー型の組織運営がなぜ近年注目されているのかと言えば、それは従来の組織構造と比較してメリットがあるからに他なりません。
従来型の組織構造と比較したとき、ホラクラシー型組織にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、そのメリットについて解説します。
- 社員のモチベーションアップに繋がる
- 社員管理の手間を減らすことができる
- 意思決定のスピードが上がる
社員のモチベーションアップに繋がる
従来の組織構造では社員は言われた通りに仕事をすることを求められる場面が多かったのに対して、ホラクラシー型組織では自分の権限で業務を進められる範囲が広がります。
このことは、社員の業務に対するモチベーションをアップさせることにも繋がります。
モチベーションが高い状態で業務を進めた方が良い結果を出してくれることも多いので、仕事への意欲を持ちながら業務を進めてほしいという会社ではホラクラシー型の組織構造を採用してみるのも良いかもしれません。
社員管理の手間を減らすことができる
ホラクラシー型組織では、社員1人1人が権限と責任を持って業務を遂行することが特徴となっています。
そのため従来の組織構造で必要とされていた社員管理が不要となり、社員管理の手間を減らすことができます。
場合によっては完全にゼロとはならないかもしれませんが、ヒエラルキー型の組織と比較すると激減することは間違いありません。
リソースは有限なものですから、できるだけ本来の業務に振り分けることが可能になれば効率的に組織を運営できるようになります。
意思決定のスピードが上がる
従来型の組織構造では、業務に関して権限を持つ人が限られています。
そのため、意思決定をしようとするときにはそれぞれの決定権者の判断を待つ必要がありました。
場合によっては決定権者が複数いる場合もあり、1つの意思決定に非常に時間がかかってしまうこともあります。
ホラクラシー型組織の場合には1人が業務に対して持っている権限が大きいので意思決定のスピードが上がりやすく、それが業務全体のスピードアップにもつながります。
ホラクラシー型組織のデメリット
ホラクラシー型組織にはたくさんのメリットがあります。
一方で、当然ですがメリットばかりというわけではなくデメリットも存在しています。
ここでは、ホラクラシー型組織のデメリットについて解説します。
- 指示待ちしてしまうタイプの人は働きにくい
- 別の社員の状況を把握しにくくリスク管理が難しい
- 社員個人への負担が大きくなることも
指示待ちしてしまうタイプの人は働きにくい
社員の中には、上司からの指示を受けて動くのが得意だという人もいます。
今まで多くの企業がそのような方針で運営してきましたし、学校教育もそれに適した人材を育てるようなものとなっているのである意味致し方ない面もあるかと思います。
しかし、ホラクラシー型組織は社員1人1人が自律して業務を行うことで運用されていく組織体系です。
こうした指示待ちをしてしまうタイプの人は、ホラクラシー型組織に属すると働きにくいと感じてしまうかもしれません。
別の社員の状況を把握しにくくリスク管理が難しい
ホラクラシー型組織では、社員1人1人がそれぞれの責任と権限を持って業務を遂行しています。
それは言い換えれば、自分以外の社員が何をしているのかということが見えにくいということでもあります。
それによって似たような業務を複数人が遂行して効率が落ちてしまう場合もあります。
またルール違反をしていたりミスを隠していたりと言ったトラブルに気がつきにくく、気が付いた時にはトラブルが大きくなってしまっているというリスクも考えられます。
社員個人への負担が大きくなることも
社員1人1人が業務に対しての権限を持っているということは、ある面から見れば業務に対する自由度が高くのびのびと仕事ができると感じられるでしょう。
しかし一方で業務に対する責任も大きくなるというのがホラクラシー型組織の特徴です。
業務への責任が大きくなると、負担に感じてしまう社員もいるかもしれません。
自由に仕事ができるというモチベーションよりも責任に対しての負担感が大きくなってしまった場合には、業務に対して萎縮してしまったり思い通りのパフォーマンスを発揮できなくなってしまう可能性もあります。
ホラクラシー型組織導入のポイント・注意点
ホラクラシー型組織は、多くの人にとってなじみの薄い組織構造です。
そのため、いきなり導入してしまうと組織内に混乱を招いてしまう可能性もあります。
ここでは、ホラクラシー型組織導入のポイントと注意点について解説します。
- 情報共有しやすい環境を整える
- 給与について透明化する仕組みを作る
- 小さく取り入れてだんだんと拡大する
情報共有しやすい環境を整える
ホラクラシー型組織の場合、どうしても各人がそれぞれどんな仕事をしているのかということが見えにくくなりがちです。
それが業務の非効率化を招いたり、思わぬトラブルの原因となったりする場合もあります。
そうしたホラクラシー型組織の欠点をカバーするためには、あらかじめ情報共有しやすい環境を整えておくと良いでしょう。
社員同士のコミュニケーションが生まれやすい状況を作っておくことで、それぞれのアイディアが組み合わさって思いがけず良い方向に業務が進むことも期待できます。
給与について透明化する仕組みを作る
ホラクラシー型組織で問題になりやすいのが給与面です。
管理者がいないということは、同時に人事評価についてもあいまいになりやすいという面ががあります。
給与面についてあいまいなまま業務を進めてしまうと社員に不満がたまりやすく、社員のモチベーションを低下させる原因となってしまいます。
給与の基準を透明化することで、社員にそうした不満が溜まってしまうのを避けることができます。
会社によっては、社員全員の給与を公開しているという場合もあるようです。
小さく取り入れてだんだんと拡大する
ホラクラシー型組織は、従来の組織構造で働くことに慣れた人にとってはなじみにくい組織構造でもあります。
すでにある組織をホラクラシー型組織に改変しようと考えているのならば、いきなり全社的に取り入れるのではなく小さな組織から取り入れて社員がホラクラシー型組織の考え方に少しずつ慣れていけるような環境を作ると良いでしょう。
まずは自社内で使っている一番小さな組織からホラクラシー型の構造を取り入れ、そこからだんだんと拡大していくような形にすると慣れていきやすいのではないかと思います。
ホラクラシー型組織を導入している企業事例
ホラクラシー型組織について知ると、どんな企業が実際に取り入れているのかということも気になります。
ホラクラシー型組織運営の具体例を知って、自社でホラクラシー型の組織構造を取り入れる際の参考にしてみるのも良いでしょう。
ここでは、ホラクラシー型組織を導入している企業事例についてご紹介します。
- ダイヤモンドメディア
- ザッポス
- パタゴニア
ダイヤモンドメディア
ダイヤモンドメディアは、不動産オーナーや不動産仲介業者、管理会社向けのITシステム開発や提供を行っている会社です。
2008年からホラクラシー型組織を取り入れていて、日本で最初にホラクラシー型の組織を取り入れた会社だとも言われています。
社内では積極的に情報を公開することに力を入れているのに加えて、どの会議も誰でも参加可能にすることによって情報の透明化をはかっています。
給与はチーム内の話し合いによって、社長や役員は選挙によって決定されます。
ザッポス
ザッポスはホラクラシー型組織を取り入れている中でも非常に有名な企業です。
靴を中心に取り扱っているアメリカのECサイト運営会社で、従来の組織構造からホラクラシー型の組織構造に変革を遂げた会社でもあります。
ザッポスでは組織の方向性や重要な指標の公表、資金の配分を行う「リードリンク」という役割が用意されています。
一見従来型組織での上司のような役割に見えますが、リードリンクは各個人への業務遂行について指示や命令を行う権利を持っていません。
ザッポスのホラクラシー型組織運営が成功している背景には会社のコアバリューを全社員が把握し、その実現に向けて全員が行動していることがあると言われています。
また採用活動もコアバリューにもとづいて行われることで、よりコアバリューが会社全体に行き渡りやすい仕組みとなっています。
パタゴニア
パタゴニアは、アウトドアグッズの製造や販売を行うアメリカの会社です。
パタゴニアでは「リーダー層」「マネージャー層」「プレイヤー」という3つの区分を設けていますが、この区分はあくまでも役割分担であって上下関係ではないということがホラクラシー型組織として重要なポイントとなります。
企業理念に合わせて戦略が決定され、その戦略に沿って組織を構成するというのがパタゴニアのやり方となっていて、従来の「仕事を各部署に分割する」というやり方とは全く逆の考え方となっています。
業務の責任範囲が明確になっていることも特徴で、自分に決定権がない仕事をするときには誰に問い合わせをすれば良いのかがはっきりわかるというのも業務をスムーズに進めるためのポイントとなっているようです。
まとめ:ホラクラシー型組織は社員の自主性を重んじる
ホラクラシー型組織は、ダイヤモンドメディア、ザッポス、パタゴニアといった企業で取り入れられている組織構造です。
従来の組織構造とは異なり上下関係がないというのが最大の特徴で、社員の自主性を重んじて業務を遂行する組織だと言えます。
社員のモチベーションアップに繋がったり社員管理のための業務を減らせるというメリットがある一方で、指示待ちしてしまうタイプの人は働きにくかったりリスク管理が難しかったりといったデメリットもあります。
ホラクラシー型組織を運営する際には情報共有しやすい環境を整えたり給与について透明性を高めることで、運営をスムーズに行える可能性が高まります。