採用基準の作り方。リーダーシップを持った人材を採用するために

より良い人材を求めて採用活動を行っても、「求人を出しても応募がこない」、「面接日程を調整してもキャンセルされる」、「内定を辞退される」といったことが頻繁に起きている場合、採用基準の見直しが求められている可能性があります。

就職売り手市場となっている現代日本で、どのように採用活動していけばいいか、その指針をお伝えしていきます。

日本のビジネス市場で求められるリーダーシップを持つ人材をどのように見つければいいか、ご参考にして下さい。

なぜ採用基準の見直しが必要なのか?

なぜ人材を確保する必要があるか考えると、事業拡大による人員補充や退職して欠員が出た場合の補充などが考えられます。

仕事に欠員が出た場合、仕事を教えることが手間と考えてしまいがちです。その結果、人員を補充したいとなった場合、即戦力となるような人物を求める傾向があります。

同業種で同職種、さらに経験年数3年以上というように高いハードルの採用基準を設けていませんか。

それで豊富に人材が集まるのであれば、なんの問題もないですが、採用基準の幅を狭めることで、良い人材を失っている可能性があるのです。

本当に必要な要素(資格が必要、性格、価値観など)といった要素と、後々の教育で埋められる要素(経験年数など)を見分け、なるべく採用基準の玄関を広く持つことが重要です。

採用基準を決めるための4つのポイント

採用基準を決めるために必要なポイントが4つあります。

企業が求める人物像に100%当てはまる人がいれば最高ですが、好条件の人材は多くないのが現実です。

そんな中、何に重点を絞って採用するか今一度立ち返ってみる必要があります。

  • ①価値観
  • ②コンピテンシー
  • ③リーダーシップ
  • ④経験、スキル

①価値観

価値観とは、その人がそれまで生きてきた中で培ってきた思想や考え方となります。

採用において価値観のマッチングが必要不可欠な理由は、企業の社風と社員の価値観が大きくかけ離れていると、途中リタイアする原因となりやすいからです。

社員同士の結びつきに重きを置き、定期的に社内イベントや慰労会を開く企業に、個人主義で仕事を進め、社内イベント等へは一切参加したくない応募者が来た場合、これは明らかなミスマッチです。

個人の価値観は一朝一夕で変えられるものではないため、採用した後に価値観の摺り合わせを行うつもりだとたいてい失敗してしまいます。

以上の理由から価値観に関しては採用基準の根幹とも言えるため、企業の価値観と応募者の価値観が近いという要素を大事にする必要があります。

②コンピテンシー

コンピテンシーとは、業務において高い業績や成果につながる行動特性のことです。人事の評価場面では、表面化した「成果」に関して基準を設ける場合が多いですが、「成果」に繋がるコンピテンシーは見落とされる傾向にあります。

どういったやり方で成果を出したのか、その行動特性を探り、企業業績や成果を高めていくことが重要です。

例えば、ある社員が全店舗の中で売り上げがNo.1になった場合、その社員が他の社員と何か違うプロセスを経て販売していないか探ります。

探った結果、必ず販売前に販売後のアフターフォローについて事細かくお客様に説明し、納得したうえで購入してもらうという段階を踏んでいたとなれば、他の社員もその手法を取り入れることができます。

その結果、個人のものだったノウハウが企業へ波及していくのです。

コンピテンシーを重視する採用基準を設けることで、企業の求める人材像に合った人材育成を行うことができます。それがゆくゆく企業を成長させることに繋がっていくのです。

③リーダーシップ

リーダーシップとは、「自己の価値観に基づいた目標を設定し、それを達成するための体制を構築し、個人やチームの意欲を高め成長させながら、ビジョン実現の妨げとなる問題や障害を解消する」能力です。

以前は、経営者や役職者が持つスキルと言われていましたが、実際にリーダーに当たる人以外の社員にも求められる能力だと考えられるようになりました。

なぜなら、仕事を円滑に進めるうえでリーダーからの指示待ちしかできない人は、最低限の仕事しかできないからです。

反対に、自己で課題を設定し解決に向けて立ち向かえる人は、広い視野を持つことで仕事へのアプローチ方法をより良いものへと変えていけるでしょう。

また、主体的に仕事に取り組むことで、「やらされている感」がなくなり、仕事へのモチベーションが上がります。さらに、リーダー以外がそういった行動をとれば、リーダーが刺激され、会社全体にとって良い傾向となります。

リーダーシップとは今までのように経営者や役職者だけでなく、誰にでも必要なスキルとなっているのには上述したような理由があるわけです。

リーダーシップとは特別何かを先導する力というわけではありません。

自分で立てた目標に対して周囲にプラスの影響を与えながら問題を解決していく能力です。

こういった個人の能力を採用活動で見抜くのは至難の業でしょう。

しかし、リーダーシップを持つ人を採用できると、他の社員に対してプラスの影響を期待できます。

リーダーシップとは目標を明確にして目的へと向かって人を先導して問題解決へ導く能力ですが、これはチーム全体に影響を与える必要があります。

ここでよく比較されますが、マネジメント能力とは別物という点において注意が必要です。

マネジメントは、目標や目的を達成するためにどういった手順を踏んでどのように進めるか管理することです。

いつどういう風に業務を進めていくかがマネジメント能力になるため、長期的なビジョンで物事をとらえるリーダーシップと、短期的に物事を管理するマネジメント、両者の違いを区別しながら採用活動に生かすとベターです。

④経験、スキル

やはり経験やスキルは業種や職種によっては必須です。

例えば看護師を採用する場で看護師免許のない方は採用できません。

スキルはTOEICやFP検定など資格を所有していることからも見極めることができます。

必須スキルであれば、採用基準に盛り込む必要がありますが、後々習得できるスキルであれば、入社後に習得してもらうことも一つの手段として有効です。

スキルのレベルを低く設けていると、他業種・他職種から質の良い人材を見つける幅が広がります。

採用基準の作り方

ここでは、採用基準を作る際に必要なポイントについて説明します。

今までの採用基準で人が集まらなかった、内定辞退者が続出したという場合、どういった点に問題があったのか参考になるかもしれません。

  • ①求める価値観は何か?を考える
  • ②コンピテンシーを作る
  • ③求める人物像(ペルソナ)を明確化する
  • ④評価項目を決める

①求める価値観は何か?を考える

企業の価値観を見つめ直し、求める人物にどういった価値観を望むのか洗い出す必要があります。

これは単に仕事をするうえでの価値観のみでなく、生きていくうえでの人生観も込みで考える必要があります。

企業が事業をしていくうえで重きを置いている点と、応募者が生きていくうえで培ってきた価値観が同じ方向を向いていないと、後々離職する確率を上げてしまいます。

まったく別方向を向いている価値観の人と組織を運営していくにはかなりのエネルギーが必要です。

その分のエネルギーを、企業が発展するために使える方がお得です。

企業が事業を続けてきた中で育ててきた価値観と摺り合わせが可能である人材を選べば、大きな圧力なく、組織を運営していくことができます。

②コンピテンシーを作る

コンピテンシーに基づいた採用基準を作成するためにまず必要なことは、まず第一に、企業におけるモデルを見つけ、その人物の業務中の行動やプライベートでの過ごし方から他社と差別化された特別な成果につながる思考傾向を分析していくことです。

次に、コンピテンシー項目を洗い出せたら、次は経営・役職層や配属予定の部署でどういった人材を求めているか細かなリサーチをします。

ここで必要なのがリーダーシップ性を重要視することです。

以下で詳しく説明します。

<h4>自社の優秀な社員をリサーチする

コンピテンシーを作るうえでまず第一に重要なのが、自社の優秀な社員をリサーチすることです。

自社の優秀な社員の行動特性をきちんと把握することで、成果に繋がる行動や思考を明確化することができます。

ここで重要なのが、何を行ったかという点のみだけでなく、どういった思惑からその行動に繋がったかという思考傾向を探る必要があります。

<h4>リーダーシップを重視する

コンピテンシーを作るうえで次に重要なのがリーダーシップです。

優秀社員のおおよそはリーダーシップを備えている可能性が非常に高いです。

リーダーシップは長期的なビジョンでもって目標を捉え、周囲に影響を与えながら問題解決を行う能力となります。

リーダーシップを備えた人材を見つけられれば、リーダーとして活躍することが期待できるでしょう。

他にも、高いモチベーションで企業の業績全体を良い方向へ引っ張る可能性も秘めています。

コンピテンシーを作る際は、優秀な社員がどういった点においてリーダーシップ性を発揮していたか洗い出し、採用基準の中に盛り込んでいく必要があります。

③求める人物像(ペルソナ)を明確化する

コンピテンシーの作成が終わったら、企業の価値観とコンピテンシー項目を、「どういった行動ができるか」というレベルに落とし込みましょう。

「どういった行動ができるか」というのを落とし込んでいく作業は、優秀社員の行動特性から炙り出せた行動や思考を求める人物像に当てはめ、具体性を持たせていく作業となります。

例えば、企業内の優秀社員は必ず部署内外の人脈を持ち、コミュニケーションを欠かさない人であるとします。

そういった人の行動特性を普段の行動レベルとして言語化すると、「多数の人と交流を持つことができる」、「初対面の人であっても仲良くなることができる」といった行動ができることとして捉えることができます。

求める人物像を分かりやすい言葉で表すことにより、自社の応募者に対して的確な質問をすることができるようにな流でしょう。

こういったプロセスを経てコンピテンシーを作成することで、求める人物像に具体性が増します。

④評価項目を決める

コンピテンシーの作成から人物像への落とし込みが終了した後必要な作業が、評価項目の決定です。

コンピテンシーによる採用段階は、面接やグループワークなどより応募者に近い採用選考が必要となります。

そこに至るまでの評価項目を含め、紹介していきます。

<h4>採用項目を決める際の注意点

採用項目を決める際は、企業が求める人物像を明確化し、それに対して細かな採用項目を設定します。

また、その採用項目に対して優先順位をつけましょう。

そうすることで、採用担当者の間で評価基準にばらつきが出ることを防具ことができます。

また、求める人物像に具体性が増すことで、企業の価値観や方向性をしっかり伝えることができるため、採用におけるミスマッチを防ぐこともできるでしょう。

<h4>新卒と中途ごとに評価項目を落とし込む

新卒は社会人経験がないため、人間性における価値観や生きてきたうえでの基礎力を評価項目に取り入れる必要があります。

例えば、コミュニケーション能力、主体性、リーダーシップ性、計画性、チャレンジ精神などです。

学生のうちに携われる活動から上記評価項目を探ることができます。

例えば、部活動ではどの役職に就いて、どういったポジションで、どういった試行錯誤をした結果どういった結果となったか聞くことができます。このエピソードトークから、企業の求める価値観・コンピテンシーと合致するかどうかを見極めましょう。

中途採用では、新卒の場合に定めた評価項目に追加して、即戦力としてのニーズを満たす能力の有無に重点を置いて採用項目を設定すると良いです。

例えば、求める経験やスキル、仕事に対する熱意、良好なコミュニケーションができるかといった評価項目を作ります。

今まで他企業にいた人材が自社でどういったポジション・役職で力を発揮することができるのか探っていきましょう。

採用基準に合った人材を見極めるための質問例

採用基準の作り方について説明してきましたが、では実際にはどういった質問で面接を進めていけば求める人物像を探っていけるのか、具体的な質問例を交えながら説明していきます。

  • リーダシップにおける質問例
  • コミュニケーション能力における質問例
  • 仕事に対する熱意における質問例

リーダシップにおける質問例

応募者のリーダーシップ性を的確に把握したい場合、面接だけでなく、グループワークを設けると、具体的な目標へ向かってチームでどのように協力し合えるか見ることができます。

面接での質問例では、「過去にチームで頑張った出来事を教えて下さい」→「そのチームにおけるあなたの役割は何でしたか」→「自分の行動が他人にどのような影響を与えたか具体的に教えて下さい」→「チームの目標と結果(部活を例に出すと、目標は全国大会出場だったが結果は県2位だった等)に差があった場合、結果を目標に近づけるためにもっと何をすれば良かったと思いますか」といったような質問が有効です。

応募者が目標を定め、それに向かって周囲に影響を与えながら問題を解決していけたのかどうか探っていくことができます。

コミュニケーション能力における質問例

こちらは面接の受け答えでもある程度把握することができます。

さらに的確な質問をすることで、応募者のコミュニケーション能力が取り繕っているものなのか、性格として持ち合わせているものなのか分かります。

質問例を挙げていきましょう。

・「簡単に自己紹介をして下さい」

この質問では、面接という短い時間でいかに自分をプレゼンできるか見ることができます。

また、その時面接官と目を合わせて話ができているか、初めて聞く人にとって分かりやすい内容かどうか確認できます。

・「前職でのミスとそのリカバリー法を教えて下さい」

この質問では、自分が犯したミスを一人でリカバリーしたのか先輩や上司に相談してリカバリーしたのかどうかで、周囲との連携力を見ることができます。

リカバリー後の対応等も併せて聞いて、周囲へのフォローはあったのか、ミスをなくすための周囲との調整(ダブルチェック体制からトリプルチェック体制へ変更されたなど)があったのかといった点を知ることができます。

仕事に対する熱意における質問例

仕事に対する熱意を知るには自社に関する質問が有効です。

どれだけ自社のことを調べ、どういった目的で応募してきたのか知ることができます。

・「弊社が求める人物像と重なる部分を教えて下さい」

自社が求める人物像は採用パンフレットやHPなどに記載されていることがほとんどです。

それをきちんと把握しているか、また企業の求める人物像と応募者の強みや価値観が重なっているか知ることができます。

まとめ:採用基準は曖昧ではなくしっかり練ることが重要

採用基準をしっかり設定することで、企業の求める人物像が明確化し、本当に求めている人材はどういった能力やスキル、価値観を持った人なのか判明します。

この作業を経ることで、企業と求職者がマッチし、採用後の内定辞退や採用のミスマッチを防ぐことができるはずです。

採用基準をしっかりと設定するまでは大変な作業ですが、企業の指針が決まれば、後はそれに沿う人材を見つける作業を進めればいいため、後々のことを考えるとかなり効率的な方法ではないでしょうか。

採用基準の見直しを検討している企業の人事担当の方は是非ご参考下さい。

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