中小企業にとってのポテンシャル採用の意味と採用戦略のポイント

少子化社会の影響で、採用市場では「新卒採用だけでは採用枠を充足できない」という状況が、はっきりしてきました。

そこで注目されるようになったのが、新卒採用でも中途採用でもないポテンシャル採用です。

この記事では中小企業にとってのポテンシャル採用の意味と、それを成功させる戦略について解説します。

ポテンシャル採用とは

ポテンシャル採用は狭い意味では既卒3年目までの第二新卒採用を指し、広い意味では新卒を含めた20代の人材採用を指します。

  • 日本の採用はもともとポテンシャル採用だった
  • 就職氷河期化が作った社員構成のゆがみ
  • 大企業も注目する第二新卒

日本の採用はもともとポテンシャル採用だった

人材の現在のスキルではなく、将来性(潜在能力)を重視するのがポテンシャル採用です。

その意味では、終身雇用制を前提にする日本の採用は、伝統的にポテンシャル採用でした。

社会人経験のないまっさらの新卒を採用し、一から教育して企業(ファミリー)の一員にするのが日本のやり方で、この流儀で日本企業は第二次大戦後に東洋の奇跡といわれる高度成長を果しました。

高度成長期にはポテンシャル採用=新卒採用でした。

それが現在のようにポテンシャル採用=第二新卒採用という意味になったのはなぜでしょうか?

就職氷河期化が作った社員構成のゆがみ

高度成長がピークを迎えて、バブル崩壊が目前に迫る頃に、終身雇用制度や年功序列制度に対する疑問や批判の声が高まりました。

欧米のような能力主義が理想とされ、ヘッドハンティングを含めてキャリアアップを求めての転職が肯定的に受け入れられるようになったのです。実態はともかく、ムードはそうでした。

しかし、バブル崩壊と同時に企業の採用バブル(採れるだけ採る)もはじけて、それまでの大量採用の反動から、企業は新卒採用の枠を極端に狭めました。

「失われた20年」といわれる長い不況の間採用を手控えた企業は、今20代、30代の人材不足と社員の年齢構成のゆがみに苦慮しています。

さらに、少子化社会が進んで若年層の人材のパイ(労働人口)が縮小し、採りたくても取れない状況が明らかになったのが現在です。

大企業も注目する第二新卒

新卒のパイが小さくなったことと、終身雇用制が現実的にも崩れてきたことによって、「第二新卒」が注目されるようになりました。

例えば、大学卒業業後3年までを対象にすれば、大卒の人材のパイは新卒と合わせて4倍になります。

リクルートキャリアの「就職白書2019」によると、2019年度の新卒だけで採用数が足りた企業は47%にすぎず、半数以上の企業が予定採用数に達していません。

また、リクルートワークス研究所の2018年度中途採用実態調査によると、中途採用実績は前年比で10.5%増加しており、その中で10代・20代が52.0%を占めています。

日産自動車やソニー、三井不動産など、大企業でも第二新卒を採用するところが増えています。

ヤフーは2016年から「新卒一括採用」を廃止し、新卒、既卒、第二新卒にかかわらず30歳以下であれば応募できる「ポテンシャル採用」にして通年採用を行っています。

ポテンシャル採用のメリット

新卒採用にもキャリア採用にもない「ポテンシャル採用のメリット」とはどのようなものなのでしょうか?

  • ポテンシャル採用のメリットとは
  • 早期転職をデメリットととらえるのは間違い
  • お互いにとっての最良のマッチングを目指すのがポテンシャル採用

新人教育が楽なことが主要なメリットではない

ポテンシャル採用(第二新卒採用)のメリットとしてよくあげられるのは、「ビジネスマナーをすでに学んでいるので新人教育が楽だ」ということです。

たしかにそうですが、これはそれほど大きなメリットではありません。どこの企業も、新人研修で名刺の受け渡しなどのいわゆるビジネスマナーの教育にそれほど時間をかけているわけではありません。

会社勤めを経験しているという意味の「社会人経験」も、その会社に馴染めなかったから転職しようとしているわけなので、第二新卒者のメリットと言えるかどうかは疑問です。

早期転職をデメリットととらえるのは間違い

ポテンシャル採用のデメリットと言われるのが「入社後2~3年で会社を辞めた人物」のいわば腰の軽さに対する懸念です。

しかし、そんなことを用心して退社動機を確かめようとするような姿勢では、ポテンシャルの高い人材を採用することはできません。

むしろ第二新卒は最初に入った会社にミスマッチを感じた人だということをプラスにとらえるのが、ポテンシャル採用の重要なポイントです。

つまり、第二新卒採用のメリットを、少しばかりビジネスマナーをわきまえているというような些末な点ではなく、ミスマッチの会社にしがみつかない人材、マッチした会社では生き生きと仕事に取り組む人材をゲットできるチャンスと考えるのです。

お互いにとっての最良のマッチングが可能なのがポテンシャル採用

一度会社とのミスマッチを経験した第二新卒は、「今度は失敗しないようにしよう」と心に決めているはずです。

会社の知名度や給料だけで決めるのは止めよう、と考えているかもしれません。

中小企業にとっては優秀な人材を獲得する絶好のチャンスなのです。

そんな第二新卒にアピールするには、新卒採用よりも仕事の内容や働き方を具体的に示し「この会社は自分のようなタイプの人間を求めている」と納得してもらうことが必要です。

それによって企業は、新卒採用よりも自社にマッチした成長株を獲得できる可能性があります。

ポテンシャル採用を成功させるには

お互いにとってのミスマッチのないポテンシャル採用を成功させるには、求人広告や採用エージェントに頼る従来からの採用手法だけでは不充分です。

大企業を退職した人材も惹きつけるような、あるいはまだ人材市場に出ていない(退社をためらっている)ポテンシャル人材も惹きつけるような、吸引力の強い採用戦略を立てる必要があります。

  • 企業の素顔と求める人材像を明確に示す採用ブランディングが必須
  • ペルソナを絞り込もう
  • 厚化粧はやめて企業の素顔を見せる

求める人材像を明確に示す「採用ブランディング」が必須

どんなポテンシャル(潜在能力)を期待するかを明確にせずに、ポテンシャル採用を成功させることはできません。

そこで注目したいのが「採用ブランディング」という考え方です。

採用ブランディングとは、欲しい人材像を明確にして「この会社は自分のようなタイプの人間を求めている」と分りやすくアピールする、あるいは強く印象づける採用活動のことです。

とくに、いちどミスマッチを経験している第二新卒の採用では、「短所もあるが長所もある」と自覚している求職者に「この会社なら自分の長所を生かせる」と思わせるのが採用ブランディングです。

ペルソナを絞り込もう

中小企業は、「頭脳明晰で、やる気があって、お客様や同僚の受けが良い人材が欲しい」というようなスタンスで採用活動をしてもうまくいきません。求職者自身も自分をそんな人材だとは思っていません。

求職者に強く訴えるためには、「できればあるに越したことはない」というスペック(人材要件)をぎりぎりまで削ぎ落として、「わが社で求めるのはこれだけです」という要件を際立たせることが重要です。

厚化粧はやめて企業の素顔を見せる

採用ブランディングでは、人材像の絞り込みだけでなく、会社の素顔をありのままに見せなければいけません。

企業理念のアピールや社長の挨拶は、いくら美辞麗句を連ねても求職者の心に響かないので、会社の歴史を踏まえた本音を語ることが必要です。

先輩社員の言葉も、やりがいのある仕事、明るい職場の雰囲気を「出来合いの言葉」で語るだけではリアリティがありません。

採用にお金をかけるならここの所で、プロのライターに経営者や社員を取材してもらい、「遠慮せずに会社の素顔を書いてください」と依頼してみましょう。

経営者も参加した採用プロジェクトを立ち上げる

採用ブランディングは、人事部門だけでちまちまやっても成功はおぼつきません。

少なくとも初年度は、経営層や各部門の責任者をメンバーにしたプロジェクトチームを立ち上げる、大胆な戦略と即断即決が可能な体制にすることが必要です。

プロジェクトの初仕事は、求職者にアピールできる自社の強みを洗い出すことです。

次に、求める人材のペルソナを絞り込みます。あれもこれもと贅沢を言わずに、本当に欲しい人材に焦点を合わせましょう。

三番目は、わが社で働くことのメリット(幸せ)を社長同席のもとで、みんなで考えてみましょう。

現在の幸せと未来の幸せを自信をもって求職者に語るためです。

採用ツールを決めてコンテンツ作りをする

採用理念が固まったら、採用ツールを決めてそのコンテンツを作ります。

求人広告の見直しが必要なのはもちろん、募集広告や採用エージェントに頼る従来の採用手法の見直しも必要になるかもしれません。

現代の採用では、Twitter、Faebook、LINEなどのSNSなどのSNSの利用も必須と言ってよいでしょう。

採用ブランディングについては、こちらの記事もご覧ください

ポテンシャル採用 まとめ

ポテンシャル採用は、中小企業が自社にマッチした人材を獲得するための有力な採用手段です。

そのメリットを「社会人としてのマナーをある程度修得している」というような些末な点に見出すのではなく、自分を生かす仕事を求めている若者をキャッチするチャンスと位置付けることが重要です。