OKRとはどういった目標管理方法なのか?そのメリットや別の方法との違いを解説
高度成長期、日本の成長を支えた「終身雇用」は終わりを告げ、「流動的に会社を選ぶ」時代に突入しました。
個人が能力に対して適切な評価を受けやすくなったメリットがある一方で、会社組織に対する愛着は薄れ、どの企業も従業員の足並みを揃えて同じ目標を目指すことに大きな困難を抱えているのが現状でしょう。
そんな困難を解決するためにも、各業界のフラッグシップカンパニーでもある「Google」や「メルカリ」が採用しているOKR(Objectives and Key Results)という目標管理方法について解説します。
類似概念であるKPIやMBOとの違いやOKRの導入メリット、導入例も合わせてご紹介しますので、ぜひ最後までご一読の上、導入をご検討ください。
それでは、いきましょう。
目次
OKRとはどんな目標管理の方法なのか
まずはOKRという目標管理の方法について、基本的な概要を確認します。
- OKRとはロジカルに目標を決定するための考え方
- O(目標)とKR(主要成果)の設定について
- OKRは頻繁に評価を行う
OKRとはロジカルに目標を決定するための考え方
OKRとは、一言で言うなら「個人の目標と会社の目標を結びつける目標管理方法」のことです。
「Objectives and Key Results」の略称であるOKRは、日本語では「目標」と「達成に必要な主要な結果」と訳されます。
企業と個人の目標を主要結果とリンクさせて、組織全体をひとつの方向に関連付けることができる目標管理方法です。
会社全体の目標と結果がその下の部署やチームにつながり、そこからさらに個人の目標へと関係するという一連の流れを持っています。
ひとつの目標(Objective)に対して、複数の主要な結果(Key Result)がつながっていく形式になっているため、企業全体の方向性をひとつにまとめるなどの効果に期待できるのです。
具体的なイメージとしては、
「会社の目標→主要な結果→部署やチームの目標→主要な結果→個人の目標→主要な結果」
といった形でつながり、それぞれの「主要な結果」が複数作られることで下層部の目標を生み出します。
このことからOKRとは、個人と会社を同じ目標によって連帯させる目標管理方法だと言えるでしょう。
O(目標)とKR(主要成果)の設定について
OKRとは、O(目標)とKR(達成に必要な主要な成果)という2つの要素で構成されます。
それぞれの要素には特徴があり、以下のような内容を持っているとされるのです。
<O(目標)の特徴>
・定性的(数字などでは表せない部分を重視した)な目標
・社員全体のモチベーションを高めるような目標
・達成度が60〜70%程度になるようなもの
・1ヶ月〜四半期(3ヶ月)内で達成が目指せるもの
<KR(達成に必要な主要な成果)>
・定量的(数値で確認できる)な指標
・目標ひとつに対して複数(2〜5個程度)の設定を行う
・自信度を10段階の「5」に位置付ける(※10を「困難がなく簡単」、1を「不可能と感じる」が目安)
・ストレッチ目標(自身の能力よりも少し高い目標)の設定
このような特徴を持ったO(目標)とKR(達成に必要な主要な成果)を設定することが、OKRの特徴です。
OKRは頻繁に評価を行う
OKRは頻繁に事業の評価を行い、目標の再設定などを実施するという特徴があります。
基本的に1ヶ月から四半期の短期間で見直しが行われるので、間違った手法を採用してしまっても修正がしやすいです。
評価の際には達成度をスコアリングし、KR(達成に必要な主要な結果)ごとに0〜1.0の数値や%による採点を行います。
その数値の平均がO(目標)の結果として残り、次の目標設定や具体的な行動の反省点として応用されていくのです。
OKRとは、通常よりも頻繁に実際される評価システムによって運用されていくのが基本となります。
OKRはその他の目標管理方法と何が違う?
OKRは、その他の目標管理方法と比較されることもあります。
企業の目標管理として使われる「KPI」や「MBO」と比較して、OKRがどのような位置付けになるのかを確認しましょう。
- KPIとの違いとは
- MBOとの違いとは
KPIとの違いとは
KPIとは「重要業績評価指標」と訳される目標管理方法であり、最終的な目標を達成するために必要とされるプロセスを示した中間指標です。
目標達成のために必要な要素が揃っているのか、求められる成果が実行されているのかといった点をチェックするために使われます。
現状を客観的に評価するために使われる点や、基本的に100%の目標達成率を目指すという点が、OKRとは違うポイントになるでしょう。
OKRの方がKPIよりも企業全体に対してその効果を用いることができるというメリットがあり、全体の連帯感を高めることが可能だと考えられます。
その一方で現状を深く理解するという点では、KPIの方が優れた指標になるといえるでしょう。
どちらが絶対に良いというわけではないため、必要に応じて導入するものを選び取ることが基本になります。
MBOとの違いとは
MBOとは、「目標の管理制度」と呼ばれるもので、業績評価を行うためのツールとして導入されます。
基本的に上司と部下との話し合いによって個人の目標を設定し、それぞれが達成のために必要なことを主体的に実行していく方式です。
情報が共有されるのは上司と部下(もしくは人事と個人など)に限られる点や、社員の報酬を決定するために利用されるといった目的の点で、OKRとは異なることになります。
OKRの方がMBOよりもスピーディに会社全体の目標管理が行える点ではメリットがありますが、個々の状況に合わせた納得のいく目標設定を行うのなら、MBOの方が使いやすいケースが多いでしょう。
こちらもどっちが優れているという評価はなく、会社全体での目標設定が必要なのか、個人の目標設定が必要なのかで重要性が変わることになるのです。
OKRを導入するメリットとは
OKRとは、その特徴から多くのメリットを作る目標管理の方法です。
実際にどのようなメリットがあるのかを、以下から確認してみましょう。
- 会社が掲げる目標に対する意識を統一できる
- 従業員のエンゲージメントが向上する
会社が掲げる目標に対する意識を統一できる
OKRとは、会社が掲げる目標に対する意識を統一できるというメリットがあります。
個人の行動が会社の目標達成につながっていくという図式があるため、自然と意識の方向性をまとめることができるのでしょう。
OKRの目標は最終的に「会社の目標」というひとつのものに集約するので、より社員の力を集中させることができます。
社員数が多かったり、部署ごとの連携が取れていなかったりという状態では、目標のための効率的な行動が難しくなるのです。
それぞれが頑張ってはいるのだけれど、それがきちんと設定した目標に貢献していないという状況では、OKRによる改善も考えられるでしょう。
従業員のエンゲージメントが向上する
OKRとは、従業員のエンゲージメントを向上させる結果にも期待できる目標管理方法です。
個人の業務が最終的に会社の目標達成に貢献していくため、社員は社内においての自分の必要性をより実感しやすくなります。
それは「会社にもっと貢献したい」「頑張りが評価されることが面白い」といった意識につながっていき、エンゲージメントの向上を実現すると考えられるのです。
OKRの導入方法と運用方法
OKRの導入方法と運用方法には、基本的なものとして以下のような流れが考えられます。
実際にOKRを導入・運用することを意識して、各ポイントをチェックしてみましょう。
※もしこのトピックについてもっと詳しく知りたいと思われる方は「おすすめのOKRの本を3冊紹介!」という記事もご参考の上、専門書の購入もご検討ください。
- それぞれのOKRを設定する
- 設定したOKRを共有・公開する
- フィードバックを行う
- 結果を検証して評価する
それぞれのOKRを設定する
まずは企業、部署、個人のO(目標)KR(主要成果)を、それぞれ設定していきます。
基本的に企業全体のOKR→部署ごとのOKR→個人のOKRという流れで、各目標を考える必要があるでしょう。
設定後は実際の達成度などを参考にして、フィードバックを行います。
フィードバックによって判明した点は、目標の再設定や主要成果の修正などに使えます。
いきなり最適なOKRの設定は難しいと考えられるので、徐々に調整していく流れを意識するといいでしょう。
設定したOKRを共有・公開する
上記で設定したOKRは、社内インフラを通して全ての社員に共有・公開します。
誰でも好きなタイミングで確認できるようにしておくことで、OKRを意識して業務を行うきっかけが生まれます。
同時に、経営陣が社員に対してOKRに関するプレゼンテーションを行い、目標を声で伝えることもポイントです。
社員に対してOKRの重要性をより深く理解させることができるので、導入時には共有と公開を目的としたプレゼンテーションの時間を設けることも検討してみてください。
フィードバックを行う
OKRの設定後は、その結果を定期的に確認してフィードバックを行います。
目標が達成できているのか、想定外のトラブルが起きていないか。
そういったことをチームで確認しあい、お互いの状況を評価することもOKRの流れに含まれます。
最低でも月に1度くらいのペースで、フィードバックを行うことがおすすめされます。
1週間の始めに行うミーティングの「チェックイン」や、週の終わりに開かれるミーティングである「ウィンセッション」は、フィードバックを行うのに良い機会になります。
OKRの導入時にはこういった定期的に話し合う時間を作り、積極的にフィードバックが行えるようにしていきましょう。
結果を検証して評価する
OKRは最終的にその結果を検証し、評価を行います。
達成度を割り出し、会社内に公表して、なぜそういう結果になったのかを全体で考えましょう。
話し合いを通して今後もその目標を継続するか、それとも別の方向に舵を切るのかを検討します。
結果の検証と評価を材料にして、次のOKRの設定に活かしていくことがポイントになるでしょう。
各社のOKR導入例
では実際にOKRを導入している企業の事例を確認してみましょう。
冒頭でもご紹介したOKRをうまく使いこなしている代表的な企業「Google」のOKRについての導入方法や考え方をご紹介いたします。
「Google」のOKRについての考え方・導入方法
毎四半期ごとに全社ミーティングを開き、OKRの公開と評価を行っているGoogle。
具体的な導入では、定期的に上司と部下が1対1で話をする機会を設け、上司は部下のOKRを把握します。
コスト上の問題はありますが、1対1の対話を大切にする事が、結果として戦略や目標に対して全社員からの理解と納得を得られることに繋がります。
GoogleのOKRに根ざす考え方の特徴としては、OKRの目標をチームで統一するのではなく、個人の信念や価値観に根付いている点でしょう。
組織の一員として、優れたアイデア、価値のあるプロジェクト、必要とされる改善に異を唱えるのは難しいものです。しかし、最も重要な目標について全員で合意すると、それより重要度の低い案に対して異を唱えることが容易になります。政治的または感情的な理由で異を唱えるわけではなく、組織全体ですでに合意した目標に基づいて理性的に反応できるようになります。
引用元:https://rework.withgoogle.com/jp/guides/set-goals-with-okrs/steps/introduction/
意見がぶつかった際、必要とされる改善に異を唱える事は大変難しいことです。
相反する意見の中で政治的・宗教的側面から異を唱えたと思われる場合もあるでしょう。
そんな局面を打破するためにGoogleではOKRを活用して、異を唱えることを容易にする仕組みを実現しているのです。
OKRは従業員全員が同じ目標を目指すために役立つ目標管理方法
OKRは従業員全員が同じ目標を目指すために役立つ目標管理方法です。
具体的な目標に向かって全体で進んでいけるOKRの導入は、従業員の結束を高めることにもつながります。
この機会にOKRとは何なのかをこちらで把握し、導入計画を立ててみてはいかがでしょうか。