アップセル・クロスセルってどんな意味があるの?目的から成果をあげる方法を紹介

アップセルとクロスセルは、売上を大幅にアップできる可能性がある営業方法です。似たような営業方法は昔から行われていますが、ITを活用することで効果的に運用できるようになりました。
ただし、使い方を間違えると押し売りと取られてしまい、優良顧客を失うこともあります。ここでは、アップセルとクロスセルの意味や成果を上げる方法や成功事例を紹介します。
目次
アップセル・クロスセルの意味とそれぞれの違いについて
アップセル・クロスセルは、売上を伸ばす方法の1つです。
「売上=購入者数×購入回数×平均購入単価」のため、売上を伸ばすには、購入者を増やすか、一人の人にできるだけ多くの回数購入してもらうか、購入する際の平均単価を上げるかの3パターンに分けられます。
アップセル・クロスセルに関しては、この内の「平均購入単価」を上げる方法になります。
それぞれの意味と違いについて簡単に解説します。
- アップセルってどんな意味?
- クロスセルってどんな意味?
- アップセルとクロスセルの違いとは
アップセルってどんな意味?
アップセルとは現在利用・検討している商品やサービスよりも上位の商品やサービスを提案し、その顧客の売り上げ単価を上げる方法です。(例:iphone11 -> iphone12)
なお、これは英語の up cell または up celling のことで、upには「上へ」という意味があることから、そのままの意味で使われます。
当然、10,000円の商品を検討していた人にアップセルを提案し15,000円の商品を購入していただくことができれば、購入単価は5,000円アップします。
クロスセルってどんな意味?
一方、クロスセルは、現在利用・検討している商品やサービスに関連した別の商品やサービスをセットで提案する方法です。(例:iphone12とAirpodsなど)
そして、これは英語の cross cell または、cross celling のことです。なお、crossには、「交差させる,組み合わせる」という意味があることから、何かを組み合わせて販売する、という意味で使われます。
単価10,000円の商品Aを購入する人にクロスセルを提案し単価5,000円商品Bをセットで購入いただければ、購入単価は5,000円アップします。
アップセルとクロスセルの違いとは
まとめると、アップセルとクロスセルはプロセスは違えど、どちらも顧客の平均購入単価をアップするための方法です。
しかし、アップセルは顧客が既に使用または検討中の進化版商品を提案するのでニーズに合わせて説明しやすいのに対し、別の商品を提案するクロスセルは顧客のニーズに合わせるのが難しいかもしれません。
どちらも顧客との信頼が薄い状態で提案すると、営業の押し売りと受け取られることもあります。そのため安易に使うと売り上げを失いかねない、扱いが難しい手法とも言えるでしょう。
顧客がアップセルとクロスセルに同意する目的とは?
アップセルとクロスセルを成功させるためには、顧客側がアップセルとクロスセルに同意するに至る動機=目的の理解が欠かせません。
そこで次に、顧客がアップセルとクロスセルに至る目的の違いについて説明します。
- アップセルの目的
- クロスセルの目的
アップセルの目的
顧客がアップセルをする目的は、上位互換の商品・サービスを選ぶことによってメリットが得られる、満足度が高まるといった理由が思い付きますよね。
しかし実際には、「アップセルの商品の方を買わないと後で後悔するのでは?」という損失回避を目的としている場合が多いです。
これはマーケティングでよく言われる人間の習性で、人はメリットや満足度など得をすることよりも、痛みや損失を回避したいなど損をしないことを選んでしまうという法則があります。(プロスペクト理論)
私自身、Macbookを購入する際にMacbook Proを購入した経験がありますが、そのときはMacbook Proを購入した方が機能が良いからなどとは考えず、普通のMacbookを買った際に「やっぱMacbook Proにしとけばよかったなぁ」と後々後悔したくないという気持ちが強かったです。
アップセルを提案する場合には、上記のような顧客の深層心理まで考慮した上で提案ができると高い成果が期待できるかもしれません。
クロスセルの目的
クロスセルの目的は、ズバリ「ついで買い」です。実は、顧客側に明確な目的は存在しないことがほとんどです。
クロスセルの例で取り上げられる、マックでの「ご一緒にポテトはいかがですか?」もお客さんとしてはマックを買うことが目的で、ポテトを欲しい!という明確な目的はないはずです。(最近では定員からも聞かないですが)
あくまで「あ、たしかに食べたいかも」「断る理由もないし」といった理由から買っているのがほとんどではないでしょうか?ですので当然、ポテトに全く魅力を感じない人は断りますよね。
ですのでクロスセルに重要なのは、このちょうど良いニーズ感を攻めた提案です。はじめは顧客自身は気づいていなかったニーズを突くことで、「たしかに必要だったかも」「まあついでに買っといて損はないか」と感じてもらうのがポイントです。
最近はITを活用することで、、得意先の過去の購入履歴や、ある商品といっしょに購入されることの多い商品の傾向が解るようになり、このちょうど良いニーズ感をデジタルに把握し提案することが可能にもなっています。
アップセル・クロスセルで成果を上げるための3つの方法
では次に、アップセル・クロスセルで成果を上げるための3つの方法について解説します。
- 1.顧客のニーズを把握する
- 2.アップセル・クロスセルの提案を仕組み化する
- 3.デジタルを活用する
1.顧客のニーズを把握する
目的の方でも述べましたが、アップセルもクロスセルも顧客のニーズを突いた提案をしなければ成果は出せません。もちろん顧客ごとにニーズはさまざまありますが、ある程度の傾向があるのも事実です。
このニーズを突くことを意識して提案するか意識せずに提案するかでは、その後の成果に大きな差がついてしまうのは明らかでしょう。
2.アップセル・クロスセルの提案を仕組み化する
アップセル・クロスセルをするかは「営業の判断次第」では、当然成果も安定しません。
ECサイトなどオンラインでの販売ではシステムが自動でアップセル・クロスセルがやっているのと同様、できるだけオフラインの営業販売においてもマニュアルを作成し仕組み化することをオススメします。
どうしても、「興味の無い顧客にアップセルの提案をしてしまうと相手が不信を抱いてしまうのでは?」など不安が出てしまうもののため、アップセル・クロスセルの提案には勇気が必要です。
人の感情を考慮すると、営業の判断に任せるという方法で成果を安定させるのは、やはり難しいかもしれません。
3.デジタルを活用する
何度か話は出ていますが、今の時代ではデジタルを活用しアップセル・クロスセルを効率的に行うことができます。
代表的なものは、やはりAmazonですよね。私もマンガを買うときには毎回のように5巻セットを提案されますし、「この商品を買っている人はこんな商品も買っています」というのはECサイトでの定石となっています。
完全なオフライン営業の場合は活用は難しいですが、デジタルを活用できる要素があればぜひ検討をしてみてください。
アップセルの成功事例
先ほど説明したように、アップセルとは、現在利用している商品やサービス、または、検討している商品やサービスよりも、より上位の商品やサービスを提案し、売上をアップする方法を意味します。
次に、アップセルの成功事例を紹介します。
- 大塚商会の例
- 某クレジットカード会社の例
- マクドナルドの例
大塚商会の例
大塚商会は、アウトソーシングを中核とするサービス「たよれーる」や、事務機器用品などを中心とするカタログ通販サービス「たのめーる」で有名な、主にオフィス向けの商品やサービスを扱う商社です。
そして、商社である以上、売上を支えているのは、ずばり営業活動です。以前は、得意先を回ったり、飛込営業をかけるなど、従来の営業方法が中心でした。
しかし、そのようなやり方には限界があり、売上が落ち込んだ時期がありました。そこで導入したのが、顧客関係管理システムです。これにより、顧客の購入履歴からロイヤリティの高い顧客を抽出し、その顧客にアップセルの提案を増やすことで、売上の拡大に成功しました。
某クレジットカード会社の例
2019年に始まったキャッシュレス・ポイント還元により、クレジットカードをよく使うようになった、と感じている方が多いのではないでしょうか。このクレジットカードには、利用限度額が設定されています。
なお、クレジットカードには幾つかランクがあり、ランクが上がるごとに利用限度額も高くなります。そして、クレジットカード会社では、取引実績のある方を調べてロイヤリティの高い顧客に、より上のランクのカードを紹介しています。長くクレジットカードを使っている方なら、そのようなダイレクトメールを受け取ったことがあるでしょう。
そして、カードのランクが上げると利用限度額が上がると同時に、持つ人の満足度もアップします。これもアップセルの方法の1つです。
マクドナルドの例
マクドナルドでは、いろいろなキャンペーンをやっていますが、アップセルを活用したキャンペーンもあります。例えば、通常、セットでポテトを注文するとMサイズですが、+50円でLサイズに変更できます。
いつもMサイズでは足りないな、と感じている方は、+50円でLサイズにできれば、喜んで注文するのではないでしょうか。そして、これは、より高価な商品を提案するアップセルの販売方法の1つです。
クロスセルの成功事例
先ほど説明したように、クロスセルは、現在利用している商品やサービス、または、検討している商品やサービスに関連した別の商品やサービスをセットで提案し、売上をアップする方法を意味します。
次から、クロスセルの成功事例を紹介します。
- Amazon.comの例
- 吉野家の例
- スーパーやコンビニのレジ横の商品
Amazon.comの例
インターネットでの買い物を身近にしたのが、Amazon.comです。おそらく、日本人で一度も利用したことがない、という人の方が少ないかもしれません。中には、Amazon.comで買い物する際、「これを買った人はこんな商品も買っています」として紹介された商品も気になって、いっしょに買ってしまった方もいるでしょう。
これもクロスセルを使った方法です。Amazon.comでは、クラウド上に巨大なデータセンターを稼働させており、顧客の購買履歴はもちろん、商品の売上情報を細かく解析して、それをWebサイトの情報に反映しています。このように、クロスセルを成功させるためには、顧客情報の分析が欠かせません。
吉野家の例
吉野家と言えば、かつては「早い、安い、うまい」がモットーで急成長した外食の成功企業でした。しかし、急拡大と単価の安さが災いして、倒産を経験している企業です。そのような吉野家は、今は、顧客の好みに合わせたメニューを提案するクロスセルを活用して成果を上げている企業の一つです。
吉野家の看板メニューの牛丼を単品で頼む客はほとんどいません。多くの客が、みそ汁などをセットで頼みます。その際、何をセットで選ぶかは客によって違います。この顧客情報をWebサイトなどで収集し、そのデータを活用することで、ロイヤリティの高い顧客におすすめのセットを提案し、売上アップを実現しています。
このように利用者を特定しにくい外食産業でも、ITをうまく活用することで、クロスセルを活用し売上アップを実現できる例を吉野家が示しています。
スーパーやコンビニのレジ横の商品
最も身近なクロスセルとも言えるのが、スーパーやコンビニのレジの近くに並んでいるお菓子などです。レジに並んでいると、つい欲しくなって、ついでに購入した経験のある方が多いのではないでしょうか。
ただし、どのスーパーやコンビニでも同じ商品が並んでいる訳ではありません。レジに並ぶお客の傾向に合わせたり、季節によって変えるなど、工夫しないとレジの近くに置いたとしても、商品を手に取ってはもらえません。顧客に合わせて、欲しいと思える商品を並べる、というクロスセルの考え方で販売されています。
アップセル・クロスセル まとめ
以上、アップセルとクロスセルの意味について紹介してきました。
どちらも、昔から使われている販売方法ですが、最近はITを活用することで、より成果を上げられるようになりました。
すでに、顧客情報を収集し、それを利用するのは営業の常識です。しかし、アップセルやクロスセルを成功させるためには、それだけでは不十分で、顧客の立場で提案できるスキルも必要になります。
ぜひ今回をきっかけに、アップセルやクロスセルで売上をアップする仕組みづくりを始められる企業さんが少しでも増えれば幸いです。